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zoom RSS 「航空機関士」が日本の空から消える日・・・その2

<<   作成日時 : 2009/06/07 23:00   >>

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画像 2人乗務の大型機(いわゆる「ハイテク機」)の導入によって不要となる航空機関士をパイロットに転向させようとして、JALもANAも良い成果は出せなかった、という話を前項で書いた。

 こうしたハイテク機の導入に当たっては、「3人で乗務していた操縦席が2人になって、安全性を担保できるのか」と言った観点から、乗員組合を中心に異論の声が上がった。JALでは、B747-400の導入に当たって組合が断固反対の方針を取ったために、副操縦士を-400の移行課程に入れることができず、導入当初は非組合員である機長だけでクルーを編成して運航していた(機長2人のうち1人が副操縦士業務を担当する)くらいだ。こうした論争は、JAL・ANAだけではなく、-400を導入しようとする世界中の航空会社とパイロットたちの間で繰り広げられていた。

 人数が多ければそれだけ監視の目が行き届きやすく、非常事態にも対処しやすい・・・というのはどんな仕事にも言えることだから、3人が2人になって安全性に不安、という議論も精神論としてはわからなくはない。が、こういう乗員組合の姿勢は、技術論よりもむしろ、航空機関士の雇用確保、という側面も強かったのだろうな、と今では思う。もちろん、組合の役割や責務を考えれば、雇用確保のために2人乗務に反対するというのは、当然と言えば当然なのだが。

 かつてJALには、副操縦士の資格(事業用操縦士)を取得した訓練生を航空機関士の養成課程に入れ、国家資格を取らせた上で数年間航空機関士として乗務させるという、セカンドオフィサー制度があった。2年を超える訓練を経て副操縦士の資格を取ったのに、そこから1年半も航空機関士養成課程に入れ、副操縦士として乗務ができるのはさらに数年先とは、費用対効果から考えれば何とも羽振りの良いことをしていたものだと思うが、パイロット候補生に多様な経験をさせるという意味もさることながら、大型機が2人乗務主体になるのに備え、純粋な航空機関士(パイロット資格を持たない機関士)の数を抑制する狙いもあったのだという。

 セカンドオフィサーを経験したことのある機長から話を聞いたことがある。航空機関士になるための訓練を受けながら、パイロットと機関士は、同じ操縦席で仕事をしていても、まったく違う、相容れない職業であると感じたという。たとえば、運航中のエンジン計器の監視。パイロットは、それぞれの計器が示す数値が適正な範囲にあるか否か、それしか見ていない。その分、機体の速度や高度、舵の操作、外部の監視などに神経を集中させる。ところが航空機関士は、すべての計器の数値を一桁単位まで読み取らなくてはならない。そして4発あるエンジンの個体差を把握し、推力を微調整し、ベストな燃料消費で飛べるようにする。電気系統や機内の空調に注意を払うのも、機関士の仕事だ。この機長は、機関士訓練の初期に教官から、「今の離陸で、最も高かったEGT(エンジン排気温度)の数値を言え」と質問され、驚いたのだそうだ。パイロットからすれば、機関士は重箱の隅をつつくようなシステムの専門家。細かなところに目が行き届くが、パイロットとは頭の使い方がまったく違う。「だから、長年機関士をやってきた人に、いきなりパイロットになれ、と言うのはそもそも無理だったんですよ」と、その機長は話していた。

 しかし、B747-400の導入が決まった1990年あたりでこの制度は無くなり、副操縦士資格を取得した訓練生は航空機関士を経験することなく、副操縦士昇格課程に入るようになった。将来的に無くなる航空機関士を経験する必要はもうないと判断したのか、それとも、バブル景気による増便・路線拡張でパイロットが不足してきたからなのか、その理由はわからない。が、これまで数年間機関士を務めていた副操縦士予備軍たちがいなくなれば機関士が不足するということで、1990年ごろ、JALは急きょ、航空機関士の訓練生を募集した。JALに最後まで残っていたのは、この時期に採用された機関士である。

 ネットを検索すると、3人乗務機の退役後の航空機関士の処遇をめぐる会社との交渉記録を記した、乗員組合のニュースレターが出てくる。JALにとっても当の乗員にとっても、「航空機関士」問題がいかに大きなことだったか。その一端が垣間見れる。

日本航空乗員組合・航空機関士の将来に関する会社提案(2005.2.19)
日本航空乗員組合・航空機関士の将来問題の対応について(2006.2.8)
日本航空乗員組合・2007年夏闘争要求案


JAL4乗組公式HP
▼3名分の運航乗員席がある、B747-200Bのコクピットと航空機関士用の操作パネル<2014年1月・航空科学博物館(千葉県成田市)にて撮影>。
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航空機関士問題・・・40年にわたる労使紛争の火種に決着
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ここは酷いセカンドオフィサー制度ですね
ひどかった「ガイアの夜明け」JAL特集 http://www.labornetjp.org/news/2011/0201gaia まあ日経スペシャルだからなw おっさんコパイについても当人の責任に帰することはできないんだよな この人の入社と2人乗務の767の登場はほぼ同時期であった 将来的に航空機関士の消滅が分かっていたんだけれども その辺でパイロット志望者を航空機関士にする変なキャリアパスを作ったようだ そういう意味では買った機材に振り回されるJALの犠牲者でもあるな A... ...続きを見る
障害報告@webry
2011/02/04 22:42

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