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zoom RSS 「沈まぬ太陽」・・・JALの最も不都合な真実

<<   作成日時 : 2009/11/07 02:24   >>

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 「沈まぬ太陽」を見てきた。評判どおりの、素晴らしい映画だ。3時間半という長さを微塵も感じさせない。中でも海外ロケ、特にアフリカの映像が見事。映画は「画」で見ることにしているから、「きれいな画」「格好良い画」が連続していれば、それだけで半分以上は満足なのだ。マニア的に見れば突っ込みどころもあるけれど、全編を通じ映像が見事。特に、予告編でも使われているエンド字幕の2カット手前、ケニア大地の超ロングカットは涙モノだ・・・。

 とまぁ、ここまでは普通の映画の感想。と言うよりもこの映画、どこまで見ても、「よくできた普通の映画」に、私には見えてしまったというのが、率直な感想なのだ。

 実は私、この映画に「普通じゃないもの」「ヤバイもの」をかなり期待していた。前評判もさることながら、原作の小説は「映像化は不可能と言われた最高傑作」であり、映画化の計画が過去に何度も頓挫していて、本作の制作・公開に当たってもJALが社内報を使ってネチネチとイチャモンを付けている・・・と来れば、そういう期待は自然と膨らむ。JALがそこまで青筋を立てる映画とはどんなもんじゃい! くらいの気持ちで映画館に出かけたのだ。

 が、そういう期待からすれば、やや拍子抜けというのが率直な感想。はっきり言って、JALがこの映画になぜここまで怒り狂うのか、ぱっと見ただけでは理解に苦しむ内容だった。確かに、航空会社のヤバさは微に細に、リアルに描かれている。それは、墜落事故遺族への不誠実な対応だったり、運輸族議員との癒着だったり、役人への賄賂だったり、自社チケットを換金して裏金にしたり、色々ある。けれども、何と言うか、それが「ゲーッ、何やってんだ、コイツら!」みたいに驚くほどヤバイことには、まったく見えなかったのだ。想定の範囲というか、「これくらいのことは、どこでもやってるだろうな」と思って見れてしまうのだ。映画やドラマに、そういうシーンは掃いて捨てるほど出て来るし、大企業や役所・警察に賄賂や裏金ツキモノだったことも知っているから。

 この映画は、JALがモデルだ。「フィクション」と断っているが、「御巣鷹山」「123便」と実在したモノを出しているのだから、この点だけは言い逃れできまい。その意味で、JALが「事実と架空のストーリーをゴチャ混ぜにするな」という思いを抱くことは、わからなくはない。だが、「一般の方には不正経理や贈賄等の全てが事実に見えてしまうでしょう」(JAL社内報というJALの言い分には、そりゃ違うぞ、と思う。観客をバカにしている。実在の事件や人物を題材にした小説や映画はいくらでもあるが、「作品」で提示されるのはあくまで「作者の世界」であり、ありのままの事実とは異なることを、たいていの人が理解していると思うからだ。「沈まぬ太陽」に出てくる一つ一つの場面は、事実だったかも知れないし、そうではないかも知れない・・・くらいが常識的な受け止め方ではないだろうか。映画の世界がすべて「JALで実際に起きたこと」と真に受ける観客は、めったにいないだろう。中には、家の中で猟銃をぶっぱなしたりとか、いるはずのない航空機がいたりとか、明らかにフィクションとわかる(わからせる?)画作りもあった。

 この映画は、そういう航空会社や航空行政に対する批判というよりは、ドロ臭さの中で不条理に翻弄される群像劇、人間ドラマとして見た方が面白いし、作品の主題もそこにあるのでは、と思う。(同じ感想を持った人はいるようで、 「決してJALバッシングの映画ではない」などと書いているブログも見つけた)

 だからJALは、「映画と当社は無関係です」と沈黙していれば良かったのだ。そうすれば、裏金作りも役人への賄賂も、たとえ実在した事実であったとしても(恐らくそうだろうが)「これは映画だからねー」「アレは作り話かもねー」くらいに、多くの観客は思ってくれたはずだ。ところがJALは、「企業として信頼を損なうばかりか、お客様離れを誘発しかねない」などと社内報で声明を出し、メディアに餌をまいてしまった。そうすることによって、「虚構の世界」のはずの映画にJAL自らが真実味を与えてしまったのだ。映画に対して反応すればするほど逆効果、そのことに、悲しいかな、JALは気づかない。

JALが熱くなる理由
 たかが映画に、なぜそこまで熱くなる・・・と思う。JALは「名誉毀損だ」「法的手段を取る」と息巻いているが、それこそ、わかっていない。実在の企業や官庁の腐敗を描いたり茶化したりする映画やドラマは山ほどあるが、標的とされた側が「名誉毀損だ」「信頼を損なう」などと反応する例はほとんどないし、訴訟を起こしたところで勝ち目はないのだ。

 JALがそこまで熱くなる理由・・・それは、現在の深刻な危機にまで至る「乱脈経営による巨額の損失」「経営陣の無責任体質」という、いわば最も触れられたくない事実を、映画がストレートに突いているからだと思う。ディティールに脚色はあるにせよ、映画はここのところをさりげなく、かつわかりやすく、実にうまく描いている。現実のJALは来月にも倒産かというような惨状だが、「企業年金」や「燃油高騰」のせいにして公的支援(税金)を引き出し、乗り切ろうという魂胆が見えている。そういう現状で、経営危機の本当の理由が映画で提示され、国民の知るところとなるのが、JALにとって何よりも不都合なのだ。

(池田信夫氏はブログで、現実は映画と違い、組合も乱脈経営の共犯者だったと述べているが、そこは「フィクション」の限界。物語性を出すために事実と異なっても、本質はブレていないと思う)

 だが、上にも述べた通り、JALが反応すればするほど映画の真実味が増し、逆効果である。ネット用語で言えば「燃料投入」だ。(飛行機の燃料代すらケチる会社が、映画に燃料入れてどうする?)

 本作は、公開から9日で100万人を動員するなど、好調な興行成績だ。会社が再生するのかどうか、映画では示されていない。現実のJALはどうなるのだろう。

マニアの視点で見れば突っ込みどころ満載
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 この映画、航空会社と航空機を扱っているだけに、マニアックな視点で見れば、突っ込みどころがいろいろあって、それはそれで楽しめる。私が気になったところをいくつか挙げておこう。

1.自衛隊ヘリがJAレジ
 御巣鷹山の墜落現場で遺体収容に当たる「陸上自衛隊」とペイントされたヘリに、なぜか「JA****」(数字は記憶できず)というレジナンバーが付いている。JA****は民間機が付ける登録番号で、自衛隊機は違う識別番号を用いる。(自衛隊車両に通常のナンバープレートがないのと同じ) 見る人が見ればすぐにわかるのだから、こんな初歩的な間違いは勘弁してほしい。

2.国民航空(NAL)にトライスター
 JALがモデルとされる国民航空(NAL)の会長と社員(渡辺謙)が、機体の脇で話すシーンがある。その機体は、なんとロッキードL1011トライスター。トライスターは当時のANAが運航していた機体でJALでは導入されていない。もしかしたら、「NAL=JAL」ではないですよ、というエクスキューズのために、敢えて出したのか。これに気づいた人は結構いるようで、いくつかのブログ言及されている

3.DC−8のエンジン音
 映画の3分の1は1960年代が舞台。当時の主力機はDC−8。映画でもCG合成されたDC−8が頭上を通過するような場面が何度か出てくるのだが、その際に聞こえるエンジン音は、本物なのだろうか。現代のジェットとはだいぶ違う、甲高い金属音を含む音を鳴らしていたが、DC−8の生音など聞いたことがない世代だからなおさら、「本物」を聞きたい。
 映画「ALWAYS 3丁目の夕日」では、昭和30年代の空港の描写のため、アラスカまで行って本物のDC-6の音を収録したそうだが、そうしたこだわりが、この映画でも実行されているのかどうか。(DC−8のフライアブル機は世界のどこかにまだあるはずだが、エンジンは換装されているはず。そういう意味で、1960年代のDC−8の音を完全に再現するのは難しいのかも知れないが・・・)




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2009/11/07 08:42
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2013/07/04 01:51

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
トラックバック張らせていただきました。
陸自ヘリのレジには驚きましたね。ドテッ腹にデカデカと。消すわけにはいかないんでしょうが、もう少し細工して欲しかったですね。
サットン
2009/11/09 15:19

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