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zoom RSS CXの民間転用計画・・・B737と同規模の4発機が売れるワケなかろう・・・

<<   作成日時 : 2010/03/22 22:20   >>

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 Google Newsでたまたま目に付いた日経新聞の記事、「自衛隊機を民間転用 次期哨戒機を旅客用に輸出、政府方針」とある。

 オイオイ・・・と見出しを見た瞬間、目を疑ってしまった。誰だ、こんな記事を書いたのは。と言うよりも、政府はそんなことを本気で考えているワケ? だとしたら、なんという世間知らずだろう。「政府」と言うのがどこを指すのか、防衛省か、経済産業省なのか、国交省なのかはっきりしないが、航空機メーカーは大笑いしているんじゃなかろうか。


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画像 記事にある「次期哨戒機」というのは、川崎重工が製造した「XP-1」のことで、海上自衛隊が保有するP-3C(ロッキード社のライセンス生産)の後継機だ。試作機が一昨年防衛省に納品され、海上自衛隊が飛行試験を行っている。P-3Cとの最大の違いは、P-3Cがターボプロップエンジン4発のプロペラ機であるのに対し、ターボファンエンジンを4発装備するジェット機であるという点だ。写真を見ればわかるが、胴体に窓が極端に少ない以外は、一般的なジェット旅客機とほとんど変わらない外観をしている。サイズはP-3Cより少し大きく、ボーイング737とほぼ同じ。

画像 哨戒機の主要な任務は日本近海で活動する潜水艦の監視で、そのためには洋上を低空・低速で長時間飛行する必要があることから、2発より安定性・信頼性で優る4発が選ばれたとされる。だったら最初から、低空・低速飛行に向いたプロペラ機にすれば良かったじゃないか、とも思うが、高速性と長大な航続距離を生かして保有機数を減らす(1機が受け持つエリアを広げる)狙いや、将来高々度偵察などの任務を付加したいという思惑など、二兎も三兎も追おうという開発意図のため、あのような機体になった。防衛省による試験は来年度(2011年度)まで行われ、その後試験機を意味する「X」(Experimental)の文字がはずされて「P-1」として制式採用され、量産機が部隊配備される予定らしい。

 記事にある「民間機に転用」というのは、この「P-1」の旅客型を製造し、世界のエアラインに売り込みを図ろうということだ。確かに、外観は旅客機そっくりなのだから、窓を付けて座席を並べれば、旅客機転用は簡単にできそうに見える。だが、旅客機を造ることと、それを売ることはまったく別の話だ。

 最大の問題点は、P-1が4発だということ。防衛上の要求から4発になったと上に書いたが、燃料高騰やメンテナンス費削減の必要性から、エンジン4発・3発のいわゆる「多発機」は、世界のエアラインからすこぶる評判が悪い。(言うまでもなく、航空機で最も高価かつ維持管理にコストのかかる部品はエンジンである) JALもANAも4発のジャンボ機(ボーイング747)を退役させ、双発機(ボーイング777・787)へのバトンタッチを急いでいる。世界を見渡しても、多発機で製造が続いている旅客機はエアバスA380(最大850席)、ボーイング747-8I(最大約600席)などの超大型機だけで、400席級以下の大型・中型機は双発機の独壇場となってしまった。そんな中で、ボーイング737(150〜180席)と変わらない図体の4発旅客機を日本が世に出したところで、売れる売れない以前に、相手にされるはずがないのだ。

 それならば・・・と、片側2発のエンジンを1発ずつにし、双発機にすることくらいは、考えているかも知れない。けれども、元々4発機として設計されたP-1を双発機に転用することが果たしてできるのか。エアバスA340(4発)/A330(双発)のように、エンジン数以外のすべてを共通設計して成功した航空機もあるにはあるが、1960年代からの旅客機開発ノウハウの積み重ねがあってできたことである。しかも、A340/A330は開発計画そのものが、4発機と双発機の2機を同時開発するというコンセプトのもとで始まったものだ。日本のP-1のように、出自が軍用機、それも4発機として開発された機体を旅客機に転用することは、ジェット旅客機の開発経験などまったくない日本のメーカーには、極めてハードルが高いと言わざるを得ない。世界的に見ても、軍用機から旅客機への転用は、空中給油機KC-135を転用したボーイング707が成功例としてあるくらいで、それ以外はほとんどうまくいっていない。それくらい、軍用機と旅客機は要求される中身が違うのだ。

 たとえ、P-1をベースにした双発旅客機の開発が技術的にできたとしても、その機体を世界のエアラインが採用するとは、とても考えにくい。上に書いたようにP-1はボーイング737とほぼ同サイズ。と言うことは、その民間型もB737とほぼ同じ150席級の機体となるだろう。大手から格安航空会社まで非常に需要の強いクラスの機体ではあるが、現時点でこのカテゴリーはボーイング737とエアバスA320がほぼ独占している。そのマーケットに割って入り、受注を得るというのは、ジェット旅客機開発では何の実績もない日本のメーカーには、あまりに無謀な挑戦である。第一、ボーイングを抱えるアメリカが、B737とガチンコのライバルになるような機体の開発を、許すはずがない。P-1ベースの旅客機を日本が開発するとなれば、アメリカがあの手この手で妨害してくるのは間違いなく、それをはねのける政治力・交渉力は、到底期待できないだろう。

 民間のジェット旅客機は、いま三菱が2012年の初飛行を目指し、MRJを開発中だ。これは川崎のP-1よりはかなり小さく、70〜80席級の機体だ。このクラスには、エンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)という強力なライバルがいるにはいるが、幸いと言うべきか、ボーイング・エアバスという米欧の二大メーカーとは直接競合しない。ジェット旅客機の開発・販売でまったく経験・実績のない日本が勝負を挑むためには、まずはこのクラスの機体で成功を収める以外にないのだ。XP-1の民間転用など余計なことを言っても、笑いのネタになるだけだ。




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