旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記

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zoom RSS JR北海道「展望席」廃止・・・何という"日本的"発想だろう

<<   作成日時 : 2010/04/20 23:00   >>

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画像 「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」など、道内を走る特急車両の先頭に設けられている展望スペースを廃止する方針・・・とJR北海道が発表した。踏み切り事故で先頭部が大破した場合を想定しての危険防止措置なのだそうだ。が、なんだか変だなぁ、と思う。もともと、運転席を2階に配置したあの独特のデザインは、踏み切り事故時の安全性を最優先にした結果だ。設計時から安全性が十分に考慮されており、導入から10数年間、「展望スペースは安全」と判断して車両を運用して来たのに、なぜ今さら「危険です」ということになっちゃうわけ? 誰が指示したのか、国交省スジから「お咎め」があったのか、真相はわからないが、事なかれ主義の匂いがプンプンする「日本的」な対応だなぁ、と思ってしまう。
 利用者へのサービスと安全性の追及は相反する部分があって難しい問題であることは重々承知しているのだが・・・。


■先頭車両の貫通扉は「特等席」なのだ
画像 JR北海道の特急車両の先頭は、JR他社では見られない独特の「カオ」をしている。直線的な前頭部の上に、スポーツカーを思わせる流線型の運転室が乗っかったあのデザインが世に出たのは、「スーパー北斗」用の振り子式ディーゼル車両キハ281が最初だ。その後、「スーパーおおぞら」用として開発されたキハ283にも、まったく同じ先頭形状が採用されている。

  「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」に使用されるキハ281・キハ283は、航空機や高速道路に対抗するために道内特急のスピードアップを図ろうと開発された、JR北海道の看板車両だ。制御式振り子装置によってカーブで車体を、キハ281は5度、キハ286は6度内側に傾けることができ、スピードを落とさずにカーブを走りぬけることができる。振り子を使った車体傾斜のシステムは、車体と台車の隙間から雪が入って凍結してしまうために雪国では不可能と考えられていたが、JR北海道技術陣の執念と3年の歳月をかけ、雪国でも運用可能な密閉式振り子システムが開発された。キハ281を使用した「スーパー北斗」(札幌〜函館)の運転開始は1994年で、約30分のスピードアップ。キハ283による「スーパーおおぞら」(札幌〜釧路)は1997年3月に運転を開始し、約45分のスピードアップを成し遂げた。これにより、千歳〜函館空港の航空便は休止、千歳〜釧路空港もジェット便が廃止されて小型プロペラ機のみの運航になるなど、大きな波及効果を生んでいる。

 このキハ281/283は需要に応じて増結できるよう、先頭車両に貫通扉と通路が設けられた。通路部分の立ち入りは自由。貫通扉には顔の高さくらいの小窓があり、先頭車両として走行している時は、通路に立つと前面展望が存分に楽しめるようになっていた。特急車両で、運転士目線の前面展望を楽しめる車両は全国的にも少ない。このスペースは鉄道ファンや子連れに大人気で、旅行シーズンになると、ここに人が立っていないことのほうが珍しいくらいだ。キハ281/283に続いて開発されたキハ261(「スーパー宗谷」「スーパーとかち」)、789系電車(「スーパー白鳥」)も同じ構造で、展望スペースがある。

 今思えば、先頭部分にこういうスペースを設けたのは、苦労して開発した車両だから乗って少しでも楽しんでもらいたいという、開発陣の粋な計らいだったのかも知れない。その人気の「特等席」を、JR北海道が自ら廃止(出入り禁止)にしてしまうのだという。

■あの運転台形状は「踏切事故対策」で決められた
画像 キハ281/283のように、運転室(運転台)を客席床面よりも1メートルほど高い2階部分に置く方式は、「高運転台」方式と呼ばれる。見通しが良いことから、国鉄時代の特急車両にはこの方式が多かった(183系/485系/583系電車など)。ところが、列車のスピードアップや省エネへの関心の高まりとともに、高運転台方式はすたれてしまった。運転席部分が上に飛び出ていると空気抵抗になるばかりか、重心も高くなるためスピードアップ上不利と考えられたからだ。JR移行後、各社が「国鉄イメージ」の払拭に努めたこともあり、1980年代後半以後、特急車両も低運転台が常識となりつつあった。

 1990年、スピードを大幅にアップするための新型ディーゼル特急車両(後のキハ281=スーパー北斗)の開発にJR北海道が着手した当初、運転台は当時の常識に沿って、低運転台で計画されていた。ところが、常識に反して高運転台が採用されることになった裏には、関係者の間では有名な、あるエピソードがある。1991年1月、日高本線で起きた衝突事故である。踏切内に立ち往生したタンクローリーに普通列車が突っ込み、先頭部分が大破し、運転士が大破した車両にはさまれたのだ。一命はとりとめたものの、運転士は両足切断となった。

画像 事故の教訓から、乗員保護のために新型車両は高運転台に、急きょ変更されることになった。スピードアップのために少しでも重心を低くしたいのに、敢えて高運転台を採用するという決断に車両メーカーは呆れ果てたという。このとき、メーカーを説得し、機器配置の見直しで運転台の重心上昇分をクリアしようと動いたのが、後にDMVの開発で有名になる柿沼博彦氏(当時・運輸部次長)だった。運転台が屋根の上に飛び出ることによる空気抵抗は、流線型の独特なフォルムにすることで解決した。このデザインは、開発陣きっての車好きと言われる佐藤巌氏(現苗穂工場長)が、レーシングカーのフォルムをヒントに考え出したものだという。

 こうして作られたキハ281の先頭デザインはJR北海道の特急のスタンダードとなり、後に作られた車両もすべて同じスタイルだ。踏み切り事故対策として採用された形状は、乗客からも乗員からも好評(実は運転室内が非常に広い)で、前方の展望スペースも、特別危険を指摘されることもなかった。


■改めて見せ付けられた踏切事故の恐怖
画像 流れが変わったのは、今年1月29日に函館本線の深川〜妹背牛で起きた踏切事故だ。事故形態は、20年前の日高本線とまったく同じ。踏切内で立ち往生していたダンプカーに特急スーパーカムイ24号が突っ込んだ。吹雪による視界不良が災いしてダンプカーの発見が遅れ、列車は100km/hを超える速度でダンプに衝突したものと見られる。ダンプは原型を留めないほど大破し、列車も先頭部分が大きくつぶれ、最前部が台車ごと約1m脱線した。

 ニュースで見た現場の映像は衝撃的だった。列車の高速衝突の衝撃はこれほどのものか、と思った。事故に遭ったのは、キハ281/283と同じデザインの運転台を持つ、789系1000番代だ。運転士は頭に切り傷程度のケガだったが、これがもし高運転台ではなく低運転台だったら、車両にはさまれるなどして重傷、あるいは命を失っていた可能性が高い。踏切事故の危険性を考慮して高運転台構造を採用した設計陣の予測は、見事に的中したことになる。

 「スーパーカムイ」に使用される789系1000番代は、他の「スーパー」系車両とは違い、先頭に貫通扉がない。したがって通路も窓もなく、展望スペースは設けられていない。だが、この種の事故がもし、展望スペースのある車両で、乗客が通路に立っている時に起きたら・・・ということをJR北海道は考えたのだろう。1月の函館本線のように、衝撃で先頭部が大きく変形するような事故が起きた場合、2階席にいる運転士は無事でも、階下の乗客が重傷または死亡、という事態は十分に想定できるというわけだ。
 

■「安全性は自分で判断してください」という考え方もアリではないか?
 今回JR北海道が打ち出した「展望席」廃止は、鉄道ファンの間でも、「安全のためならしょうがない」という受け止め方が大勢のようだ。それでも、一律に立入禁止、展望スペース廃止という対応は、なんとも日本的だなぁ、という印象を私は持ってしまう。

 海外ではこういう場合、危険性や想定されるリスクを説明した上で、あとは利用者の判断に任せるというのが普通だ。たとえば、欧米のビーチや湖などでよく見かける「SWIM AT YOUR OWN RISK」(我の責任にて泳げ)という看板。ライフガードも救命具もないから溺れても救助できないが、泳ぎたければ勝手にしろ、という意味だ。日本のように「遊泳禁止」などという無粋な看板は、めったに見ない。管理された公園やホテルのハウスビーチでも「SWIM AT YOUR〜」という表示は見かけるから、事故があっても責任は泳いだ側にあるのであり、施設管理者の責任は問わない、という意識が定着しているのだろう。アメリカの場合、列車でも、デッキのドアが手動式という車両はけっこう多い。長距離の優等列車や、わりと新しい車両でも、走行中に自由にドアを開けたりできる。乗客が転落したらどうする、などとは誰も考えないのだろう。「走行中はドアを開けるな」と一応は表示されているから、それでも転落したら悪いのは乗客であって、鉄道会社の管理責任など言い出す雰囲気にはないということだ。(鉄道会社にも手動にしておく理由はあるのだろうが・・・ホームの長さが駅ごとに違うとか)

 JR北海道の展望スペースにしても、「衝突事故時にはこの場所は大変危険です」とか「衝突の恐れがある場合はすぐに待避してください」とか、そういう注意喚起を十分に行った上で、あとは利用者の判断に任せるというのが「大人の対応」ではないかと私なら思う。そうできないところに、日本的だなぁ、と感じてしまうのである。利用者の責任と施設管理者の責任の線引きが、ものすごく曖昧。何かあると、何でも管理責任を問われるような風潮がある。利用者側が「想定すべきリスク」など考えもせず、なんでもクレームを付けたがるような人が、多い。

 確かに、いくら「危険です」と注意喚起したところで乗客が大けがしたり命が失われてしまえばどうしようもないわけだし、ほとんどの乗客は「列車が事故を起こす」などと思って乗っていないから、「衝突の恐れを感じたら待避しろ」というのは無理な話、という意見もあるかも知れない。実際に衝突の危機に直面したとき、展望スペースに陣取っている乗客は、衝突する瞬間まで「ぶつかる」とは夢にも思わずに前方を見ているのかも知れない。乗客の利便性(前面展望)と安全性(衝突事故時の乗客保護)には相反する面もあるから、どっちを立てるのか、それはそれで非常に難しいことでもあるのだ。

 ただ、今回の件で気になるのは、利便性と安全性の二律背反で悩み抜いた形跡がJR北海道には無く、単純に「一律廃止」と決定してしまった点だ。このタイプの車両は10数年走り続けていて、その間に踏切事故は何度もあったのに、展望スペースの危険性が表立って言われたことは一度もなかった。それが、ちょっと破損程度の大きい深川の事故たった1回で、「なぜ?」と正直思う。

■せっかく作った「展望席」・・・もったいないですよ
 踏切事故が発生しやすいのは、冬期間と決まっている。凍結路面のため踏切手前で停止できず、線路に突っ込むクルマがいるからだ。トラックが過積載のためにブレーキが効かず線路に突っ込む・・・ような事故は夏場でも起きるが、割合としては、冬季の踏切事故が圧倒的に多い。

 であるならば、展望スペースの立入禁止は、冬期間に限定してはどうかと思う。あるいは、冬期間プラス視界不良時とか。衝突事故というのが可能性としてはあり得ても、限りなく小さい時期というのはあるわけで、そういう期間にまで禁止してしまうのは、サービス業としてどうかと、私は思う。

 鉄道復権の願いがこめられていたのかどうかまでは知らないが、開発者のなにがしかの思いが、あの展望スペースには詰まっているはずだ。それを一律に禁止してしまうのは、何とももったいない話ではないだろうか。「不可能ということは、とても難しい」・・・これは振り子車両を開発した柿沼博彦氏の口癖で、新幹線の生みの親・島秀雄氏の名言でもある。この言に倣えば、「展望スペースの存続は不可能」と断じることだって、とても難しいことのはずだ。

 JR北海道が「閉鎖する」としている5月中旬まで、まだ時間はある。ぜひとも知恵をしぼってもらいたい。






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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
いや、3月21日の、津軽海峡線の、ラストラン電車
スーパー白鳥には、行きたいですねーーー
いくらなんでも
2016/03/07 18:38
うp主が相当頭がイカれてるのは確かww
1234
2016/06/06 20:54
789系1000番台の踏切事故はあの天候の状況では減速運転が常識なのが当たり前です。JR北海道はある意味非常識な列車運転速度をしたのではないかと疑いたくなります。踏切事故の火種を作ったダンプカーも悪いですが
常識的な運転を怠ったJR北海道も悪いです。もちろん
踏切事故を発生させたダンプ屋の人を擁護する魂胆はありません。結果論から言うとあの吹雪の中を無謀な運転をしたダンプ屋さんが全部悪いのは明白であり、最低限
非常用発炎筒を使わなかったのは運送業のプロドライバーの基本がなっていない証拠です。仮に非常用発炎筒が使えていて何らかのアクシデントで危険なときは
その時点で踏み切りの非常ボタンをすぐにでも押すべきです。
キサラヅEF200
2016/09/05 07:19
そうですね〜キサラヅEF200さんのいうとおりですね、
北海道のドライバーの運転マナーのひどさははっきり言って異常です。冬でも70〜80qは当たり前ですし、ひどいときは80〜100qの速度を出すのはしょっちゅうですしね〜 私も旅行で6月頃フェリーで自分の車で
北海道旅行を一週間ほど有給を取っていきました。
あれほど危険で無謀運転だらけの巣でもある北海道の
走行速度の速さは私は80qで走行すると後ろからあおってくる札幌ナンバーの車がいましたのには驚きです。
すぐに路肩に寄せて先に先行させたのは言うまでもありません。全国でも死亡事故上位に何度もランクインするも納得です。大阪の無謀運転といい勝負です。
チバKS419
2016/09/05 07:54
ほんとにとんでもない鉄道列車事故です私も任意保険を加入するとき保険屋さんが対物保険は無制限がよいですと進められた経験があります。対物保険を無制限に加入しておいてあとから考えると個人的にはよかったと考えさせられます。はっきり言ってこのような踏切事故を
おこすと対物保険の選択を誤ると人生を棒に振ってしまうのが目に見えます。数十億円単位の請求金額が自分自身に来てしまう可能性があり絶対に踏切事故だけは起こしてはいけないと考えさせられます。あの踏切事故を起こしたダンプ屋さんは人生を棒に振ったのではないでしょうか。当たり前ですが任意保険は加入するのは当たり前です。どんな億万長者の人でも任意保険は絶対に加入していないと人生転落の火種の可能性になりかねないです。
タダスケベ〜
2016/09/06 09:08
私も普通自動二輪免許を取得していますが任意保険の対物保険加入は無制限にしています。過去に交通事故で卵運搬のトラックに追突事故を起こしてトラックの修理と荷物の卵の弁償と荷台の掃除代を請求されました。あの時は9500万円近く請求されましたのを覚えています。
幸いにも私個人は過去三年間無事故無違反だったのに加えて任意保険請求権数ゼロだったので保険屋さんと揉めることなく相手の方の賠償見積もりのトラブルが皆無だったに近かったので(最初に請求された金額は一億近くだったのを覚えています。トラックの代車費用・トラックの修理代・品物の卵弁償手配費用・荷台清掃業者費用・燃料代・高速代)事故現場から逃げてしまうと下手をすると運送業者さんから民事裁判沙汰になるのは明白だし、高校での処分は停学処分が待ち構えているのは
明らかで、鬼のような生徒指導の小山に地獄の停学の生徒指導が待ち構えているので事故現場から逃げませんでしたのはいうまでもありません
都姫27144
2016/09/11 16:09
引用記事の画像のキャプションの中で、785系が低運転台とありましたが、よく画像を見ると785系の運転台の高さって、むしろかなり高い位置にあると思うのですが…。
リニモ1号
2017/02/03 22:04
先頭部分の窓が「苦労して開発した車両だから乗って少しでも楽しんでもらいたいという、開発陣の粋な計らい」である可能性は極めて低いと思います。
本来、保線要員がそこに立って軌道状態を目視で確認するために設けられた窓です。実際、キハ281系試作車は貫通扉上方に小さな窓が設けられただけで、背の低い子どもは背伸び程度でやっと見えるほどです。したがって客の求めるような眺望は元々考慮していたとは思いませんし、そもそも展望「席」はないです。
クリスタルエクスプレスはかなり勿体ないですが…
電気釜
2017/08/28 18:49

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