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zoom RSS 政府専用機が退役・・・その先をどうする?

<<   作成日時 : 2011/01/31 23:00   >>

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画像 前項に続いて、政府専用機の将来のことを考えてみる。現用のB747-400は近い将来退役させざるを得ないとして、その先をどうするか。

 取り得る選択肢は3つある。一つは、B747-400の後継機を購入し、現在と同じように航空自衛隊に管理・運用させること。二つ目は、同じく専用機は購入するが、管理・運用は民間の航空会社に委託すること。そして三つ目は、総理の外遊などのたびに民間機をチャーターするという、専用機導入以前の方式に戻すことだ。


自衛隊による運航は非効率でゼイタク
 一つ目の自衛隊方式は、危機管理上のメリットなどがよく言われるが、何度も書いているように、非常に非効率でゼイタクな方法である。政府専用機の実運航は、年に12〜13回。平均して月に1回あるかないか、なのだ。運航が無いときは訓練か待機しかすることがない。民間機のクルーが長距離国際線の乗務を月に3〜4回こなすのと比べれば、非常に効率が悪いのだ。パイロットは技量維持のために定期的に一定時間を飛ばなくてはならないから、実運航が少ないと訓練時間が増えるという、妙な逆転現象も起きる。これだけ稼働効率の低い政府専用機のために、運用に当たる航空自衛隊の特別輸送航空隊(千歳基地所属)は約150人の隊員をかかえている。パイロット、空中輸送員(民間機の客室乗務員に相当)はもちろん、民間機には不要な航法士、通信士などの搭乗員、さらに地上勤務の整備員や運航管理官(ディスパッチャー)、気象観測員、事務員に至るまで、すべて政府専用機の専属だ。人件費だけで年間十数億円。これに訓練費などの部隊維持費が、少なく見積もっても人件費と同程度はかかるだろう。さらに機体代が2機で360億円。30年使うにしても年間12億円。年に12〜13回しか実運航がないのだから、直接費(燃料費など)と間接費(人件費+部隊維持費)を合わせれば、1フライトあたりウン億円の費用がかかっている計算になる。総理とその随行員20〜30人を運ぶのに(同行記者団からは運賃を取っていうらしい)、これだけの費用が本当に必要なのかどうか。真剣に議論されてしかるべきだと思う。

安上がりなのはエアラインに委託すること
 二つ目の民間委託の方式は、自衛隊に比べればはるかに「安上がり」であることは、間違いない。委託先は、国際線の運航経験が豊富なJALかANAしかないだろうが、この2社が保有する機材と同型機を購入すれば、パイロットや整備員を新たに訓練する必要が無い。スタッフを専用機の専属にする必要も無く、専用機の運航が無いときにはエアラインの定期便に乗務すればよいので、人員もはるかに効率よく稼働できる。パイロットは、自社の定期便や訓練機で十分な飛行経験を積むわけだから、訓練のためだけに専用機を飛ばすようなムダもなくなる。政府は機体を購入し、羽田空港の隅にでも保管場所(格納庫)を提供するだけでいい。

 民間委託だと緊急な対応が難しいと思われるかも知れないが、そんなことはない。天候不良や機材トラブル、乗客の増減などによる急なシップチェンジ・スケジュールチェンジはエアラインでは日常茶飯事と言ってよく、そのためのスタンバイ態勢もちゃんとしている。政府から「あす専用機を飛ばせ」と言われればすぐに対応することくらい、JAL・ANAクラスのエアラインであればまったく不安はないだろう。現に、無政府状態のエジプトから日本人を救出するためのチャーター機運航では、要請から1日もせずにチャーター機が出発した。今回は、カイロ〜ローマの飛行なので地理的に近いドバイ(UAE)のエミレーツ航空に発注されたが、ある程度の規模のエアラインであれば、こういう事態に対処する能力は持っているのだ。それに、緊急性の高い邦人救出などの事案は何も政府専用機でなくとも、自衛隊の輸送機でも対処可能であることを、前にも書いた。

 政府の専用機として、大型で航続距離の長いジェット旅客機が絶対に必要だということであれば、機体は政府で買い、運航は民間に委託する方式が最も現実的、かつ費用対効果が高いと思う。国の威信、ステイタスという点で、政府直轄組織(自衛隊)による運航の方が良いのはそのとおりではあろうが、そんなゼイタクを言える状況ではないと思うのだ。装備や任務が増加・高度化する一方の防衛省にしても、政府専用機要員を他任務に回すことができるのは、むしろプラスではないだろうか。

B767と軍用型767の一体運用はできない
 政府専用機は自衛隊の管理・運航でなければならない・・・という点にどうしてもこだわるのなら、諸外国がそうしているように、汎用性の高い小型機を購入することである。B737NGの長距離タイプ。その代わり、総理・閣僚・皇族の外遊専用ではなく、国内移動にも使い、稼働率を上げる。自衛隊内の連絡機としても使う。小型機だと、総理外遊時などに記者団は同乗できないが、それこそ、民間チャーター機を帯同させれば良い話だ。アメリカなどもそうしている。

 航空自衛隊にはB767ベースのE-767(早期警戒管制機)やKC-767(空中給油輸送機)があるのだから、政府専用機としてB767を導入すれば整備員やパイロットを共用できるじゃないか、という意見もあるだろうが、旅客機をそのまま使う政府専用機と、旅客機ベースの軍用機では、運用方式も整備方式もかなり違う。整備にとって機体仕様はかなり重要で、政府専用機のB747-400も、整備をJALに委託するためにコクピットを含め機体の細かな仕様はすべてJALと同じにしてある。ANAが政府専用機の整備を引き受けないのも、機体が「JAL仕様」であるためだ。同じ旅客機同士でさえこうなのだから、B767とE/KC-767を一体運用するというのは、無理な相談だろう。(政府専用機の自衛隊での正式名称が、軍用機の流儀に従った「C-747」や「VC-747」などではなく「B747」であるのも、機体仕様が純然たる民間機だからだろう)

総理外遊にはやはり「専用機」が必要だ
 最後に、第三の方式、純粋な民間チャーターについて、考えておきたい。私は、この方式は実現性は低いと思う。確かに、政府専用機の運用が始まる1991年より前は、総理や皇族が外遊に出るたびに、民間機をチャーターしていた。チャーター先はもっぱらJAL。機材は長距離飛行が可能なB747やDC-10が使用され、パイロットはダブルキャプテン、政府チャーター機の乗員に選任されることはパイロット・客室乗務員の間でも大変な栄誉だったと聞く。

 費用的にも、専用機を持つよりは安いのはわかるが、総理クラスの要人に関しては、こういうチャーター機での外遊は、もう無理だろう。専用機の利便性に慣れてしまったから・・・というのもあるが、1980年代までと現代では、外遊の回数や中身がまったく違うからだ。昔の総理の外遊なんて、今思えば、のんびりしたものだった。外国訪問がめったにない代わりに、一度出かけたら1週間とか10日もかけ、あちこち視察したり、会談したり、というのが普通に行われていた。通信手段もそれほど発達していないから、一度空に上がってしまえば何時間も連絡が取れなくても、不都合はあったにせよ許容範囲だったのだろう。そういう時代なら、民間機チャーターでも問題はなかったと思う。(一例として、1970年の佐藤栄作首相の訪米は、10月18日に羽田を出発し、ニューヨーク到着後現地時間21日に国連演説、22日にワシントンに移動し、24日に日米首脳会談、27日にサンフランシスコを出発し、アンカレッジ経由で帰国するという、全日程10日を超える外遊だった)

 ところが今は、外遊の回数自体が増えたこともあり、総理自身が昔とは比べ物にならないほど過密な日程をこなさなくてはならなくなった。欧米など遠方でもせいぜい4〜5日。国連演説のために0泊2日でニューヨーク訪問、帰国したらすぐに国会、なんてことも普通に行われている。現地滞在よりも、往復の機内にいる時間の方がはるかに長いこともある。こうなると、移動中の機内でいかに効率よく仕事をこなし、休息を取るか、ということが決定的に重要になる。地上との各種通信や情報収集のための装備、スタッフとの会議・打合の設備、プライバシーを確保して質の高い休息を取るための設備、いわゆる「空飛ぶ官邸」としての機能が、どうしても必要になる。すると、チャーター機では難しく、専用の装備を持った機体は絶対に必要、となる。そうでなければ、外国政府はともかく日本は、政府としての機能を果たすことができない時代になったのだ。

 現用のB747-400に替わる政府専用機を選ぶなら、民間委託の大型機か、自衛隊運航の小型機か。このどちらかしかないと、思う。





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政府専用機〜「退役」「廃止」も含め検討するそうだが・・・
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ひとつコメントさせてください。E-767もKC-767も、その航空機としての基本的な部分の整備は、国内航空会社(航空機会社ではありません)に委託していることをご存知でしょうか。
ss
2011/02/05 12:09
>ssさん
情報ありがとうございます。その件ついては、初めて知りました。機密性の高いE-767の整備をエアラインに出しているとは、ちょっと驚きです。パイロットのシミュレーター訓練はエアライン委託、というのは聞いたことがありましたが。
海ラジ
2011/02/05 22:12

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