旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 長大トンネルで「走行不能」「火災」が重なれば、乗客は蒸し焼きになるしかない

<<   作成日時 : 2011/06/03 23:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 0

 福岡に来ている。夕方、テレビで地元のニュース(RKB)を見ていたら、JR九州が関門海峡トンネル内で列車が停止したことを想定した避難訓練を実施した、というリポートを放送していた。JR北海道・石勝線トンネルでの脱線火災事故(スーパーおおぞら事故)を受けての緊急訓練なのかと思ったら、毎年実施している定期訓練なのだという。しかも、火災の想定は無し。脱線も無し。故障で停車した列車を救援のディーゼル機関車で引き出せばOK、その手順を確認する、というものだった。この程度のシミュレーションでは、JR北海道のような事故が起きたときにはまったく歯が立たないな、と思った。

 今週、何人かの鉄道関係者と話す機会があったのだが、共通して指摘していたのは、トンネル内で「走行不能」と「火災」が重なる想定を、鉄道会社はまったくしていない、ということだった。想定していないのだから、対策もしていないし訓練もしていない。それどころかJR北海道の場合は、トンネル外での走行中の火災すら満足に想定すらしていない。運転士は定期的にシミュレーターで訓練を受けるが、その科目の中に火災への対処は入っていない。運転台には火災の警報装置があるのに、である。もちろん、マニュアルに火災の記載はある。しかし、いくらマニュアルがあっても日ごろから訓練しておかなければ、いざというときにその通りに行動はできない。北陸トンネル火災事故(1972年)の教訓は、半ば風化しているのだ。

 先月27日に起きたJR北海道・石勝線トンネル内での特急「スーパーおおぞら」脱線火災事故は、トンネル内で「脱線」「火災」という二つの事故が同時に起きたことが、北陸トンネル惨事の再来寸前というキワドイ事態を招いてしまった。しかも現場の第1ニニウトンネル付近は、山岳地形のため無線が通じにくいことも、輸送指令所の状況把握が遅れる要因になった。

 走行中に列車が脱線すれば、ただちに停止するのが鉄則である。脱線した車輪を引きずって走ろうとすれば、脱線車輪に引っ張られるようにして他の車輪も脱線するし、転覆する恐れもある。一方で、トンネル内で火災が発生した場合は、トンネルを走り抜けてから止まるのが、これまた鉄則である。ただしこのルールには「走行可能な場合は」という条件が付く。列車は脱線した時点で走行不能なのだから、たとえ火災が発生しても、トンネル内であろうとどこであろうと、止まってしまう。トンネル内で脱線・火災が重なってしまえば、短いトンネルならば今回のように徒歩での脱出が可能だが、長大トンネルなら、乗客乗員は車両もろとも蒸し焼きになるしかない。車外に出ても、トンネル内には煙が充満するから、一酸化炭素中毒でバタバタと倒れることになる。これは、厳重な防災対策を施しているという青函トンネルでも、本質的に同じことだ。

 厄介なことに、この二つが同時発生した場合に有効な対策を、鉄道会社が打ち出すことは、非常に難しい。やれることは、@長大トンネルすべてに強力な排煙換気装置を付け、乗客が徒歩で避難できるようにすること、Aトンネルを走行するすべての車両に自動消火装置を取り付けること、B消防士並の耐火服と酸素マスクを搭載し、火災発生時は自力で消化できるよう運転士・車掌を訓練すること、の3つくらいだと思うが、どれも莫大なコストがかかり、JR北海道のように収益の厳しい企業には難しい。@はコストの問題以前に、全長何キロもあるトンネル全体に充満する煙を排煙するようなことが技術的に可能か、というハードルがある。AやBは、今回のように燃料タンクが発火してしまった場合に車載可能な程度の消火装置や消火器で火を消せるか、ということがある。たぶん、無理だろう。今回の火災は、地元消防隊を大量動員したものの鎮火まで9時間半もかかっているのだ。要するに、トンネル内で走行不能と火災が同時に起きた場合には、根本的な対策は存在せず、発生してしまったら、乗員乗客は死ぬしかないのである。

 考えてみれば、可能性としてあり得ても、対策の取りようがないから死ぬしかないケース、というのは現実にはそれなりにある。代表例が、航空機だ。たとえば、飛行中に全エンジンが停止する事態は想定していないし、訓練もしていない。パイロットの神業的操縦で生還した例はいくつかある(「ハドソン川の奇跡」など)が、不時着に失敗して搭乗者の多くが死亡した例も多い。日航123便事故のように、全油圧系統が使用不能になる例も想定していないし、想定したとしても対処は極めて難しい。着陸時に車輪がまったく出なくなることも世界中で何年かに1回はあるが、あれも想定も訓練もしていない。こういうことが起こりうるから、乗客は飛行機を、完全に安全な乗り物とは思っていない。バスだって、走行中に運転士が意識不明になればたちまち事故で、場合によっては乗客が死ぬが、これも対策のとりようがない。

 鉄道は安全な乗り物である、という思い込みが、私も含め社会全体にあったのではないかと思う。福知山線の脱線事故だって、新型ATSが備わっていれば防げた事故であって、鉄道全体の安全性に影響はない・・・と多くの人が考えた。今回のスーパーおおぞら火災脱線事故は、対策の取りようがない、起きてしまえば死ぬしかないような事故が鉄道でも起こり得ることを、世に示した事例と言えるのではないだろうか。生命保険には、きちんと入ろう。



関門トンネルで防災訓練
 JR北海道のトンネルで事故が起きたばかりですが、JR九州はきょう、関門トンネルで列車が故障したと想定した防災訓練を行いました。
●JR列車内の訓練
「おケガをされたお客さまはいらっしゃいませんか?」
 九州と本州を結ぶ関門トンネルで実施された、JR九州の防災訓練。走行中の列車がトンネル内で故障し、停止したという想定で実施され、およそ130人の関係者が参加しました。
 先月27日、JR北海道の石勝線で、特急列車が脱線し、トンネル内で炎上。乗客ら39人がけがをしました。事故の原因は、エンジンの動力を車軸に伝える「推進軸」が破損したこととみられていますが、避難誘導の遅れについて、マニュアルの問題も指摘されています。この事故を受けて、JR九州の唐池社長は、事故の際のマニュアルの見直しに言及しています。
●JR九州・唐池恒二社長
「マニュアル自体はかなり完成度が高いんですけどね。私ども、これからの調査の経過をみて見直すべきところがあれば見直していきたいと思ってます」
 JR九州では今、保有する317両のディーゼルカーを緊急点検しています。
●津曲記者
「トンネルの中で、電車が動けなくなってしまいました。これから救援車両と連結します」
 きょうの訓練は、JR北海道の事故と同じく、トンネル内で起きたという想定で行われました。まもなく救援車両が到着し、故障した車両をトンネルの外に出します。また、梅雨入りを目前に控えたきょうの訓練では、大雨によって雨水がトンネル内に流れ込むことを防ぐために、防災扉を閉める手順も確認しました。
●JR九州安全推進部・城戸雅人副部長
「ああいった大きな事故を受けて、関係の現場も含めて、トンネルの中の訓練ということで、お客さま優先で、避難誘導を最優先にするという考え方で業務を進めてまいりたいと」
 防災意識を向上させるため、毎年この時期に実施されている、この総合防災訓練。JR北海道でトンネルでの事故が起きたばかりとあって、参加者は一つ一つの作業を念入りに確認していました。





Ocean Radio@2011

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ここは酷い教養ある紀行文ですね
329話 教養がないと困るのか  1/3 - アジア雑語林 http://d.hatena.ne.jp/maekawa_kenichi/20110527/1306475357 330話 教養がないと困るのか  2/3 - アジア雑語林 http://d.hatena.ne.jp/maekawa_kenichi/20110601/1306893363 331話 教養がないと困るのか 3/3 - アジア雑語林 http://d.hatena.ne.jp/maekawa_kenichi... ...続きを見る
障害報告@webry
2011/06/15 02:16

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
長大トンネルで「走行不能」「火災」が重なれば、乗客は蒸し焼きになるしかない 旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる