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zoom RSS 青函連絡船「羊蹄丸」解体が決定〜歴史的遺産の保存展示に価値が見出されない社会

<<   作成日時 : 2011/11/10 21:50   >>

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画像 船の科学館で展示公開されていた青函連絡船羊蹄丸の解体が決まった。愛媛県新居浜市の「えひめ東予シップリサイクル研究会」に無償譲渡され、何ヶ月間か一般公開されたのちに、リサイクルシステムの研究のために解体されるのだそうだ。

 科学館としては、この先長く展示公開できる引受先を探したのだろうが、名乗り出るところがないために、解体を前提とした譲渡になったのだろう。 報道によれば、保存展示の計画を提出したところもあるにはあったが、実現性に疑わしいため採用されなかったそうだ。船を譲渡しても、活用されずに放置されて朽ち果てるのであれば忍びないし、周囲への迷惑にもなる。

 残念だな、とまずは思う。だが、年間数千万円と見積もられる費用を負担し、保存できる引受先がないのだから、どうしようもない。

 つくづく、歴史的に価値のある遺産を保存することに価値が見出されない社会だな、と思う。アメリカやヨーロッパを見てみるといい。歴史的な建物や船、列車、飛行機、機械製品、こういうものがどれだけ多く保存され、展示され、公開され、その管理と維持にどれだけ多くの費用が払われているか。たとえば、アメリカ。第二次大戦で使われた戦艦や空母や駆逐艦、潜水艦がありとあらゆる場所で保存されている。戦争推進国家のプロパガンダ、という側面はとりあえず置いておくにして、あれだけの退役艦船を、保存展示しておける国力はたいしたものだと思う。入場料でペイしている施設はわずか。ほとんどが、寄付とボランティアで成り立っている。そういう負担を引き受けることで、歴史的価値のある建造物を後世に残そう、伝えようという価値観があの国にはある。戦争の道具だけではなく、民間機や宇宙ロケットから小さな郷土資料館まで、博物館や実物展示の充実ぶりは日本など足元にも及ばない。それは、そういうことに価値を見出す社会的合意があるからだ。

 よくある「日本人による日本人論」に、「日本人はモノを大事にする」というのがあるが、冗談じゃない。歴史的に価値のあるものを、これほどあっさりと、こだわりなく捨て、壊し、なかったことにしてしまう国民が世界中ほかにいるだろうか。中国を見よ、インドを見よ。

 船の科学館と言えば、同館に展示されている初代南極観測船「宗谷」が、TBSドラマの影響で大人気らしい。が、維持費捻出の困難さから、解体の危機に常にさらされているのだという。そうだろうな、と思う。この国は、こういうものを未来永劫残し、後世に伝えようという意志が希薄な国なのだ。

「羊蹄丸」譲渡先 解体で研究貢献、花道
 「船の科学館」(品川区)が探していた旧国鉄の青函連絡船「羊蹄丸」(八、三一一トン)の無償譲渡先は、解体を前提とした愛媛県の団体だった。これまで三百六十万人が見学に訪れた歴史的な船を、「何とか残したい」と願っていた同館。解体を容認したのは、花道を飾れ、研究に役立つという理由からだった。 (滝沢学)
 同館は、具体的な事業計画を伴った企業、団体からの正式申請十一件を審査した。船を解体せず保存、活用する提案も存在した。ただし、中には関連子会社を通じ、中国やベトナム、バングラデシュで保存する案も含まれていた。
 老朽船のえい航、維持・管理には相当の費用が見込まれる。同館は保存、活用を訴えた各計画は、資金面から実現可能性が低いと判断したという。
 一方で、譲渡先に選んだ、愛媛県内の三十九団体が連携する「えひめ東予シップリサイクル研究会」は、羊蹄丸の花道として、新居浜東港での一般公開をまず準備していた。来年度にそれぞれ市制七十五周年、学校創立五十周年を迎える新居浜市、新居浜工業高専の記念事業との位置付けだ。事務局も「できるだけ早く公開したい」としている。
 同会は、現在発効に向けて国際的な運用のルール作りが進む「シップリサイクル条約」に基づき、先進的な船舶解体の事業化を見据えた団体。条約が発効すると、労働災害が多い開発途上国での船舶解体が規制され、環境に配慮した先進的リサイクル事業のニーズが国内でも高まるとみられている。国土交通省海事局船舶産業課によると、日本では現在、大型船の解体は行われていない。
 船の科学館は、「解体過程も実証研究として生かすとした点を、歴史的役割を果たした羊蹄丸にふさわしいと評価した」としている。
 羊蹄丸は一九六五年に青函連絡船として就航し、八八年に青函トンネルの開通で引退。九六年から同館で一般公開されていた。(東京新聞 2011年11月10日)



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▲初代南極観測船「宗谷」との2ショットも、まもなく見納めになる。
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▲鉄道車両を搭載するための船尾ゲート。鉄道連絡船という役割上無くてはならない装備だった。
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▲当初は、ここで「永久保存」される計画だったのだが・・・。
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▲羊蹄丸のブリッジ(操舵室)。船内は往時の様子とはまったく違う「パビリオン」に作り替えられているが、操舵室はほぼそのまま保存されていた。可変ピッチプロペラ推進方式(エンジン出力ではなくプロペラのピッチ角で制御する)など、当時としては最新式の装備を持っていた。

アメリカの艦船展示保存
アメリカに出かけると、楽しみの一つが退役艦船や航空機の展示施設に足を運ぶことだ。「戦争国家のプロパガンダ」的な側面はとりあえず置いておくにして、こういうものを維持保存し、後生に伝えて行こうとする姿勢は尊敬に値すると思う。ここに紹介するのは、私が実際に見に行ったごく一部。
空母ホーネット<USS Hornet>(カリフォルニア州アラミダ/2008年撮影)
1943年11月就役。太平洋戦争の後期、日本軍に大被害を与えた殊勲艦として有名だが、戦後もジェット機対応やアングルドデッキの取り付けなど数度にわたる大改装を受けて朝鮮戦争、ベトナム戦争、アポロ宇宙船の洋上回収作戦などに投入された。1970年退役、1989年除籍。1998年より、サンフランシスコ郊外のアラミダで公開されている。
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▼戦艦マサチューセッツ<USS Massachusetts>(マサチューセッツ州フォールリバー/1995年撮影)
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▼戦艦ミズーリ<USS Missouri>(ハワイ州ホノルル/2004年撮影)
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▼客船クイーンメリーと原子力潜水艦スコーピオン(カリフォルニア州ロングビーチ/2001年撮影)
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過去にこだわりがない人は、なんでも捨てられる
 「南京事件はなかったのではないか」と発言した河村たかし名古屋市長に関連して、「国際的に認知され、外務省も認めている歴史的事実を国民の間で共有できないことはこの国の不幸だ」と書いた。その夜コンビニに立ち寄ったら、たまたまこんな本が目に付いた。「8割捨てればうまくいく」。要は、自分の身の回りの本やら雑誌やら雑貨類やら一切合切8割を捨てれば物事はうまく行くようになる、と説く本である。 ...続きを見る
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2012/02/28 08:07
青函連絡船「羊蹄丸」いよいよ解体へ
 お台場で係留展示されていた青函連絡船「羊蹄丸」が、解体に向けてきのう旅立ったことを、けさの新聞で知った。船は愛媛県新居浜市に回航され、数ヶ月の一般公開の後、解体される。 ...続きを見る
旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記
2012/03/26 10:05
あれから2年・・・気仙沼にて
 東日本大震災から2年が経つのを前に、震災現場を駆け足で見てきた。現地に足を運ぶのは今回が初めて。実際に見て感じたことは、テレビなどメディアが伝えるのは震災のごく一部、表層的なものでしかないということ。「復興」「絆」「がんばろう」「元気を出そう」・・・メディアを通して語られる、あらゆるスローガンがむなしく思えてしまった。 ...続きを見る
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2013/03/11 12:45

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
まったくもって残念です。
鉄道マニア主観で物申すのはどうかと思いましたが羊蹄丸の解体・・今もって残念です。
寄付金を募っても集まらないのでしょうか?。

アグネスが広告塔の日本ユニセフ・・。
本家にまったく関係無いのに堂々と募金活動に勤しんでおります。
職員とその施設の維持費、そして創設者達の金集めであり実際に困窮者へ届く金は何割なのか?。
赤い羽根募金にまわる金の数パーセントでも分けて貰えば文化遺産をどれだけ壊さずに済むのか何時も考えてしまいます。
アメリカなど戦艦、戦闘機に限らずほとんどが動態保存であり静態保存でもモスボールされいつで復帰出来るように処置されてる物が多いです・・羨ましい。

数十年前に飛ぶことが出来る四式戦闘機「疾風」がアメリカのマニアから好意で日本に返還された事がありましたが現在では2度とエンジンが動く事が無い状態まで無整備で今では展示すらされておりません。

科学博物館の零戦も募金箱がありますが維持費は大変なのでしょうね。
このような施設を覗いた時は回数に関わらず毎回千円ほどです募金させていただいております。
個人として出来ることなどその程度ですが・・。

阿寒
2017/03/03 00:31
偉そうな長文並べるがお前は募金や寄付したんか?
金も出さずもったいない言ってる安楽者
アッホ
2017/03/20 20:27

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