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zoom RSS 沖縄密約事件と毎日新聞

<<   作成日時 : 2012/03/10 10:46   >>

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画像 TBS系列で放送されているドラマ「運命の人」がおもしろい。沖縄返還にかかわる日米密約文書をめぐる記者逮捕事件(沖縄密約事件)を題材にしたドラマで、主人公の新聞記者をはじめ当時実在した政治家や官僚、検事などがすべて架空のキャラクターに置き換えられて登場している。毎朝新聞社=毎日新聞社、弓成記者=西山太吉記者、佐橋慶作総理=佐藤栄作、山部一雄=渡辺恒雄、十時正春警察庁長官=後藤田正晴、などと置き換えて見ると、脚色やドラマならではのフィクション挿入も多いにせよ、当時の時代の雰囲気、新聞社や政治の現場の雰囲気はこうだったんだろうな、というのがよくわかる。何よりも、40年前の沖縄返還をめぐる日米の密約の存在という事実がドラマというわかりやすいカタチで視聴者に提示される意義は大きいと思う。

 ところで、5〜6年前のことだが、入社したばかりの毎日新聞の記者2〜3人と話す機会があり、こんな質問をしたことがある。

「入社研修で、沖縄密約事件と報道の自由の関係は講義のようなカタチで教わりましたか?」(どこの会社でもそうだが、現場に配属されてOJTに入る前に1〜2週間から数ヶ月の座学研修がある。新聞社も同じ)

 すると、返って来た答えは、こんな感じ。

「なんですか、沖縄密約事件って?」
「え・・・!? 沖縄返還の裏で日米密約があったことをスクープして、オタクの現役記者が逮捕された西山事件のことですよ。30何年も前の話ですけどね」
「知らないです。何だったんですか? 教えてくれますか?」

 沖縄密約事件(西山事件)は、現役記者の逮捕・有罪判決にまで至ったという点で、政治と報道をめぐる戦後最大の事件だったと言ってもいい。その事実を、新聞記者を志し、高い倍率をくぐり抜けて入社した若者がまったく知らないことに、私は驚いた。この事件は、取材における記者の報道倫理や権力との距離の取り方を考える上でも大変重要な題材であると同時に、一つの報道が大新聞社を経営危機にまで陥れたという点でも大変重要なのだが、そこから得られる教訓どころか、事件そのものを新入社員にまったく教えていないことに、私はびっくり仰天したのだ。

 ただ、毎日新聞社を少しだけ弁護するとすれば、日本はジャーナリズム研究がひどく遅れていて、メディアの報道活動が研究の対象という意識がないのだ。過去の事例から教訓を学び取ってこれからの報道活動に生かそうという認識や雰囲気そのものが、新聞社やテレビ局にはひどく希薄なのが現実だ。誤報や、やらせ事件が起きるたびにどうにかしようとする機運は生まれるけれども、現実(人手不足・予算不足・知識不足)にかまけてしまって、長続きしない。毎日だけに限ったことではなく、たとえば、朝日新聞がリクルート事件やサンゴ損傷虚報事件を新人に懇切丁寧に教えているかと言われればそんなことはないだろうし、北海道新聞が道警裏金事件を知識や教訓として伝承しているかと言えば、それもないだろう。TBSがオウムビデオ事件の正確な事実関係や原因と対策、教訓を社内で今も共有しているかと言えば、それもたぶん、ない。去年夏に大騒ぎになった東海テレビの不適切テロップ問題も、一社の問題にとどまっていて、あれを機会に全テレビ局がCGやテロップ作成のワークフローを見直したという話は聞かない。つまり、同じ事例が他局でいつ起きても、おかしくはない。

 先輩からの「語り草」として伝わることはあっても、事例を知識や教訓として体系化はされないのだ。大学でそういうことを教える学科も非常に少ない。何よりも、記者、あるいは記者を志す者はそういう知識を持っているべきだ、という認識そのものがない。だいいち、大学の新聞学科やメディア系学科を出ていたり、ジャーナリズムに関心があって自分で勉強する学生は、日本の組織ジャーナリズムがいかにダメかを知っているから、新聞社などそもそも受験しないだろう。いま新聞社に入ってくる若者の多くは、勉強ができて要領がよく、ミーハー精神と体育会系の根性とを兼ね備えた、その程度の普通の兄ちゃん・姉ちゃんだ。そういう人が、沖縄密約事件をまったく知らなくても(たぶんリクルート事件も知らないだろう)、よく考えればちっとも不思議じゃないし、毎日新聞社がそういうことを教育していないというのも、それほど驚くべきことではないのかも知れない。

 こういう現実と、日本の報道やメディアが持つ弱さや問題点というのは無関係ではないと、私は思う。【つづく】

■沖縄密約事件と毎日新聞社については、こちらのブログに非常に詳しい
フィクションと史実と - 澤地久枝『密約 - 外務省機密漏洩事件』を読む・第1回「リアルのナベツネはいかに動き、いかに書いたか」

フィクションと史実と - 澤地久枝『密約 - 外務省機密漏洩事件』を読む・第2回「38年後、フィクションに『裁かれる』蓮見喜久子元事務官」

フィクションと史実と - 澤地久枝『密約 - 外務省機密漏洩事件』を読む・第3回「天声人語と市川房枝」

フィクションと史実と - 澤地久枝『密約 - 外務省機密漏洩事件』を読む・第4回「澤地久枝さんとナベツネに会った男の告白」

フィクションと史実と - 澤地久枝『密約 - 外務省機密漏洩事件』を読む・第5回「我部政明教授と西山太吉元記者と澤地久枝さんと」






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 毎日新聞の新人記者が沖縄密約事件のことをまったく知らなかったことに驚いた・・・ということを前項で書いた。このやりとりからしばらくして、毎日新聞の記者OBと酒の席でご一緒することがあったので、私は率直に聞いてみた。 ...続きを見る
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2012/03/10 15:25

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