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zoom RSS 沖縄密約と毎日新聞・・・その2

<<   作成日時 : 2012/03/10 14:29   >>

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画像 毎日新聞の新人記者が沖縄密約事件のことをまったく知らなかったことに驚いた・・・ということを前項で書いた。このやりとりからしばらくして、毎日新聞の記者OBと酒の席でご一緒することがあったので、私は率直に聞いてみた。

「オタクの新人記者は、沖縄密約事件のことも西山記者のこともまったく知らないと言っていた。そんなものなんですか?」

「キミ(30代)くらいの年齢でも、そんなことを知るヤツはまずいないよ」

「なぜ? あれは毎日新聞社だけじゃなく、戦後の報道ではリクルート事件と並ぶ大事件じゃないですか。当事者だった新聞社の中で、そういうことを研修で教えたり、語り継いだりすることはないんですか?」

 すると彼は、次のように言った。

「あれは、毎日新聞にとって触れられたくない、できるなら葬り去ってしまいたい、過去のキズだ。そんなことを新入社員に教えるはずがないだろ」

 なるほど・・・そうだろうな、と思った。けれども、だからと言って納得できるものでもない。それに、この事件についてはわからないところもある。せっかくなので、当時の様子を聞けるだけ聞いておこうと思った。以下は、そのやりとりだ。

「沖縄密約事件のこと、だいたいのことは本で読みましたし、西山太吉さが出した本も読みました。それでも、一番わからないのは、西山さんがあの密約文書をストレートに紙面に出さず、社会党の横路議員に渡して国会で追求させたか、ということなんですよ。あれじゃ、報道で得た結果を政局に利用しようとした、というふうに見えてしまいます」

「いや、彼はあの文書のことを紙面に書こうとかなり頑張ったんだよ。けれども、ネタ元がバレないように慎重だったから、解説記事止まりだった。文書の存在そのものをはっきり書くことは、できなかったんだ。当然、政治家はのらりくらりと交わすし、世間にインパクトも与えられなかった。そのうち、沖縄返還に向けた動きはどんどん進んでしまうから、政府を追求するのに役立つなら、と考えて横路(*)に渡した」
*社会党・横路孝弘衆院議員。後に北海道知事を経て民主党衆院議員(北海道1区)。現衆議院議長)

「密約文書の一部だけを見せて、どこから出たかわからないようにする方法もあったのでは? 今ならテレビも新聞もそうやってますよ」

「今なら、ね。ただ当時は、テレビの調査報道なんて全然なかったし、そういう方法は思いつかなかったんだろう。それに西山さんは、横路は文書の内容を見るだけだと考えていた。それを横路は、国会で文書そのものを示して”ここに密約文書がある”とやっちまった。文書には通し番号が打たれているから、そこからネタ元が一発でばれたのさ」

「通し番号の部分を塗りつぶしておくとか、ネタ元を隠す方法はあったのに」

「そこは西山さんも、脇が甘かったと思う。横路を信頼して、裏切られたということなんだな」

「しかし、それで現役の新聞記者を逮捕とは、大騒ぎだったんじゃないですか?」

「そりゃ、そうだよ。毎日新聞はもちろん、読売も朝日も一緒になって、”言論弾圧だ”と大キャンペーンをやった。ところが、事件が起訴される段階になって、東京地検の佐藤道夫が”ひそかに情を通じ、これを利用して”という一文を起訴状に差し挟んだんだ。これで一瞬にして流れが変わった。政府による密約隠しから、男女のスキャンダル事件に変質してしまった」

「佐藤道夫って、民主党参議院議員の佐藤さん?」

「そうだよ。当時は東京地検特捜部だったし、その後札幌高検の検事長もやった(*)、アイツさ」
*佐藤道夫氏は2009年7月に死去

「テレビにもよく出るし、検察に厳しいこともかなり言う人なのに、昔はそんなことやってたんですね」

「まぁ、頭が良くて優秀だったということさ。とにかく、事件はそれで流れがすっかり変わってしまって、そこから先マスコミは、新聞もテレビも週刊誌も、下半身スキャンダルの追求一色さ」

「毎日新聞は、あれで相当な部数を落としたと聞いてますが」

「落としたなんてもんじゃないよ。あの何年かの間で、半分くらいになってしまった。だって、ひどいんだ。読売や朝日の拡張員が団地を回って奥さん方に、”不倫は許せないですよねぇ” ”お宅はあんな不倫記者が書いてる新聞を取ってるわけですか?”なんて吹いて歩くわけだよ。たまんないよ。支局の記者のところにも”お前らは女を騙してネタをとるのか”とか電話がかかって来たりしてね。それで、500万分を超えてた部数が300万くらいにまで落ちて、ほとんど半減さ」

「スキャンダル一つで、それだけ部数が落ちたんですか?」

「いやいや、もちろん、石油ショックとか値上げとか、それ以外の要素もあった。それに、朝日や読売が700万を超えている時代にウチはやっと500万だから、3大紙とは言え元々差はついてたんだ。けれども、部数がだーっと減るきっかけになったのは、間違いなく西山さんのあの事件さ。それで、こっちは経営危機。1977年にはとうとう会社を分割して、新聞発行機能は新会社が引き継いで、旧毎日新聞は倒産させるしかなかった。そのときに、TBSとの資本関係も解消して、株を全部手放してしまったんだ」

「TBSだけが新聞社を親会社に持たないのは、そういうわけだったんですね」

「そう。新毎日新聞を作るときにはTBSが出資しているから、むしろ助けてもらった。その後、(創価)学会の印刷を受託したりしてなんとか持ち直そうとはしてきたけど、今もこういう状態だよ。全国紙どころか、ブロック紙と比較しても、経営基盤はずっと弱い。その発端が西山事件なんだから、それをどうやって後輩に伝える、と言うより、今さらそんなことに触れてくれるな、という雰囲気が社内では強いんだ」

「けれども、アメリカで当時の文書が出てきたし、それにかかわった当時のアメリカ局長も”密約はあった”と認めたわけですから、西山事件への見方もだいぶ変わったのでは?」

「”密約はあった”なんてのは、当時からみんなわかっていたことさ。政府が認めないし、我々も決定的な証拠がつかめなかった、それだけ。でも、そんなはっきりしない話よりも男女関係の方が俗受けするから、そっちに流れて行っちゃった。男女関係でネタを取ることの善し悪し、みたいなね。手法なんか関係ないのにね」

「俗受けするネタに流れるのは、新聞もテレビも、ずっと変わってませんね」

「変わらないね、本当に・・・・」

 そのときの会話は、こんな感じだった。

 沖縄密約事件(西山事件)は、その後の毎日新聞凋落の発端となった。少なくとも、当の毎日新聞社ではそういう見方をしている。そしてこの事件は、国家の犯罪を男女のスキャンダルに矮小化させてしまった点で、報道する側の完敗だったと思う。大きな社会正義よりも目先の話題性、小さな正義感(夫婦の貞操義務とか)を満足させればそれで良しという日本のメディアの姿勢はこの頃からずっと変わらず、さらに強まっていると思う。権力へのすりよりと流されやすさは、この国がずっと抱え込む病理のようなものだと思う。

 その病理を、ドラマというカタチではあれ、ああいうふうにテレビで再現し、世の中に示すことの意義は、やはり大きいと私は思うのである。

【参考ブログ】
「西山事件」を拡大させ「原発推進派」の過去に頬かむりする横路孝弘





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沖縄密約事件と毎日新聞
 TBS系列で放送されているドラマ「運命の人」がおもしろい。沖縄返還にかかわる日米密約文書をめぐる記者逮捕事件(沖縄密約事件)を題材にしたドラマで、主人公の新聞記者をはじめ当時実在した政治家や官僚、検事などがすべて架空のキャラクターに置き換えられて登場している。毎朝新聞社=毎日新聞社、弓成記者=西山太吉記者、佐橋総理=佐藤栄作総理、などと置き換えて見ると(肩書きはいずれも当時)、脚色も多いが、当時の時代の雰囲気、新聞社や政治の現場の雰囲気はこうだったんだろうな、というのがよくわかる。何より... ...続きを見る
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2012/03/10 15:20
[西山事件]今の若い毎日新聞記者は「西山事件」を知らないのか。これは驚いた
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kojitakenの日記
2012/03/10 15:46

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