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zoom RSS 大学が多すぎることの何が問題なのか

<<   作成日時 : 2012/11/09 09:00   >>

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 ある私大で教員をしている友人が、こんな話をしてくれたことがある。「ボクのゼミの学生で、だいたい3人に1人は卒業までに英検準1級に受かるんです。入ったときは3級も怪しいような学生が、ですよ」。1990年代に短大から四年制大学に移行した彼の勤務先は、いわば偏差値底辺大学で、定員確保のためには出願者全員を合格させざるを得ない状況だそうだ。それでも、一部の学生は英検準1級合格の実力を付けて卒業する、と。旧帝大で助教の経験もある彼は言う。「4年間での学生のノビシロで見れば、ウチの学生は有名国立大の学生よりも伸びてるんです。スタート地点が低いですから。そういう意味でちゃんと教育に貢献してます。無試験で入れるような大学は意味がないとか、そういう話じゃないです。中学・高校でまったく勉強しなかった学生が大学でちょっとでも勉強するなら、意味はあるじゃないですか」。

 大学設置・学校法人審議会が「認可すべき」とした決定をひっくり返す「自爆テロ」を敢行した田中真紀子文部科学大臣は、大学の数が多すぎて教育の質が低下していると口にした。理解に苦しむ理屈である。大学の数が増え、総体(大学全ての平均)としての教育レベルが低下しているのが事実だとしても、それが高卒・中卒者も含めた若者全体の教育水準が低下していることを意味しない。「どれほど学力が低いとはいえ、中卒、高卒で学業を終えるより、大学まで出た方がまだましである。四年長く学校に通っているうちに、思いがけないきっかけで爆発的に知性的活動が活発化するということは少なくない」(内田樹氏)。

 国民全体の教育程度の度合いは、大卒者の割合が一つの指標とされている。国際的にはそう考えられている。だから、どんな国でも教育の質を上げようとするときには、小中高校とともに大学も充実させようとする。充実とは当然、数を増やし大卒者を増やすことが含まれる。韓国は、大卒者の割合がこの40年で4.8倍に増えた。サムスンやヒュンダイの製品が世界のマーケットを席巻するほどの力を付けたことと大卒者の爆発的増加が無関係であるとは、誰も言わないだろう。

 大学を減らせ、大卒者を減らせというのは、国民全体の平均的教育水準を下げよと言っているのに等しいのだ。だから、教育・文化・科学技術行政全般を預かる大臣が「大学が多過ぎる。減らせ」と旗を振ろうとするのが、理解し難い現象なのである。大学の教育の質が低いと言うなら、ちゃんとやれ、と言えばいいことで、数を減らすこととは関係ない。

 確かに、子どもの数は減り続け、入学志望者も減る一方だから、学校経営が大変なことはよくわかる。入学のハードルが低くなったせいで、学ぶ意欲の低い学生相手に教えなければならない教授たちも大変だろう。けれどもそれは、経営者や教授たちが努力すべき話で、政府や国民が「大学を減らせ」と叫ぶのは筋の違う話である。それに、学生の基礎学力の低さは大学以前の教育の問題だし、その元をたどれば家庭環境だとか長時間労働とか低所得とか、社会全体のありようにかかわる話になり、大学数との関わりは薄い。

 大学を出ても職がない? 大卒者は使えない? ならば、高卒や専門学校卒なら大卒より職があるのか? 大卒者よりも使えるのか? そこに説得力のある答えが示されない限り、大学の数を減らせという議論には私は同調しない。

 さきほど大学の「教育の質」なんて言葉をみな当然のように使うのだが、そもそも教育の質なんて客観的に測定可能なのか? どうやって測定するのか?

 自治体や学校法人それぞれが建学の理念に沿って多様な教育機会を提供し、多様な人材を社会に供給するのが大学の役割だとするなら、教育の質なんてことを一律に論じることに、意味なんかないではないか。それとも、大卒予定者に一律に共通テストをやって、基準に満たないヤツには学士号を出しません、という制度でも入れたいのだろうか。

 そりゃぁ、オマエそんなんで大学出てんのか?と言いたいヤツはいっぱいいる。けれども、それは本人の人間性や向学心の問題であって、大学教育の質とは関係ない。そういうヤツは、難関大学にもそうでない大学の出身者にも、必ずいる。

 けっきょく、大学教育の質なんて、本人がそこに行って良かったと思えるか否か。後輩に自分と同門となることを薦められるか否か。そういうことしか指標になりようがないのではないだろうか。それも、自分の人生が終わりかけのときに、出身大学をどう評価するか。教育って、それくらい長いスパンで論じて初めて意味をなすもので、単純に数が多いとか少ないとか、学生の教育の質が低いとか高いとか、そういう議論はほとんどナンセンスだと思うのである。大学が増えすぎと言うが、大学に行きたい、行ける若者がみな行けるようになって何が悪い!と私は思う。

 世の大卒の人間を片っ端からつかまえて「大学に行かなければよかった」と本気で思うことがあるかどうか、問うてみるといい。おそらく、そう答えるのはごく少数であろう。圧倒的多数が、大学教育を受けれてよかったと考えているはずである。それだけでも、教育の質の最低限は満たしていると思う。


【追記】
内田樹氏は、「大学が増えすぎて質が下がった、減らせ」と言うのは経済界の意向だと述べている。ビジネスマンの思考では、「大学生といえぬほどの低学力のものたちを4年間遊ばせておくのは資源の無駄だ」となるのだ、と。そして、大学進学のハードルを上げ、低学力の高卒者を大量に社会に出し、低賃金で働かせることこそが経済界の狙いである、と解説している。なるほどな、と思う。だが、内田氏も繰り返し述べていることだが、教育とビジネスは別モノである。ビジネスの流儀を持ち込んだ教育は、確実に失敗する。






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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
教育とビジネスを異なるなんて考えで大学を増やしたから、就職できない学生が多く出てしまうのです。

現実には、大学生はすぐに社会人にならないといけないのです。

大学進学率が高いと、それだけ若者は時間を無駄にして、同時に家計や政府の負担になります。政府の負担も結局は税負担ですから、国民の負担になります。

行き過ぎた進学率は、若者たちと、勤労者、両方にとって、時間とお金の無駄使いになるのです。

大学に金をつぎ込むからには、それなりの効果がないといけません。ところが、現実には良い仕事があるのは難関大学出身者だけで、レベルの低い大学だと就職は高卒とあまり変わりません。そうであれば、税金をつぎ込む必要はないし、本人が判断するというなら、助成金を廃止して全額自己負担にすればいい。でも、そうすると経営が悪化して、結果的に数は減りますよ。

http://agora-web.jp/archives/1241727.html
>。「教育に外部効果がある」というのは古い話で、前にも紹介したハーバード大学のPritchettなどの行なった世界銀行の調査では、教育にはマイナスの外部効果があるという結果が出ています。図のように各国を比較すると、教育投資(縦軸)と成長率(横軸)にはまったく相関がありません。教育(特に大学教育)は生産人口を浪費して、成長率を下げている可能性があるのです
さわ
2012/11/16 19:40
追記すると、大学を増やしすぎて、就職できない学生が増え、奨学金を返せない元学生も増えた。経済の需要を無視して増やした結果、「すでに失敗している」のです。
さわ
2012/11/16 19:41
>さわ 様

コメントありがとうございます。
低偏差値大学に行くくらいなら高卒で社会に出た方が良いという論旨のようですが、低偏差値大の卒業者よりも高卒者の方が良い職を得られるというのが理由でしたら、実例をお示しください。また、私大学生一人あたりの政府助成金額は年間16.7万円です。ハローワークの休職者支援よりも安いです。それでも税金のムダと言いますか?
海ラジ(ブログ筆者)
2012/11/17 14:00
Lant Pritchettの論文の件は知っていますが、「高等教育が労働生産性や成長率に貢献しないという」のが事実だとしても、「社会的には浪費である」という筋立てには同意しません。教育効果を経済学の視点においてのみ検証しようとするのが、そもそも無意味です。個人は国家の経済成長のために生きているわけではありません。
海ラジ(ブログ筆者)
2012/11/17 14:11

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