旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記

アクセスカウンタ

zoom RSS ボーイング787で起きていること、これから起きること

<<   作成日時 : 2013/01/18 23:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 2 / コメント 0

画像  今週水曜日の朝、いつものようにオフィスに出勤してテレビ画面が視界に入り、目を疑った。脱出シュートを展開したB787が誘導路上に静止ししている様子が、繰り返し流れている。画面には「機体から煙」「緊急着陸」の文字。機体のほぼすべての非常口が開かれていた。緊急脱出をやると、最低でも乗客に軽傷者が数人は必ず出る。そうしてでも脱出しなければならない、切迫した事態だったということだろう。

 ヤバイわ。こりゃ、当分の間、運航停止だ・・・直感的にそう思った。

 緊急脱出に至る経緯は、すでに報じられている通りだ。電気室の異常を示す警告灯が点灯し、機体前部で異臭を感じ、高松空港に緊急着陸を実施。さらに、接地後に管制官が機体前部から煙が出ているのを認めたため、機長が緊急脱出を決断した。煙が出ているということは、発火・機体炎上という事態が十分に想定されるから、結果として火災にはならなかったにせよ、適切な判断だったと思う。緊急脱出の判断が遅れたために大勢の犠牲者を出した事故例が、過去にはある。

※1985年8月に起きたブリティッシュエアツアーズKT28M便火災事故が典型例。パイロットが火災に気づくのが遅れ、速やかな脱出措置を行わなかったため、逃げ遅れで55名が死亡した。2007年8月に那覇空港で起きたチャイナエアライン120便炎上事故も、もっと早く緊急脱出を決断・指示するべきだったケース。死者が出なかったのが奇跡。

画像 それにしても、期待の新鋭機「ドリームライナー」が、なんというザマだろう。今月8日にボストンでJAL機がバッテリー火災を起こしたあたりから「何だか変だぞ」と思っていたが、その後の1週間の間にも燃料漏れや警告灯の誤作動など小トラブルが続き、ついに緊急着陸だ。新型機のトラブルがここまで相次いだことも、記憶にない。FAA(米連邦航空局)は自国登録のB787の飛行停止を命じ、日本を含むB787を運航する各国の当局もこれに従った。商業運航中の旅客機が全世界で飛行停止を命じられる事態も、一斉点検のための一時的な飛行停止を除いては極めて異例で、2000年のコンコルドと1979年のDC-10の例くらいしか、私は知らない。どちらも墜落・全員死亡という超重大事故を起こした後の飛行停止措置だったから、今回のB787のように事故を起こす前の予防的な飛行停止は、過去の教訓から学んだ対応とは言えるだろう。16日のANAのトラブルは、緊急着陸できる空港がすぐそばにある国内線だったのが不幸中の幸いで、これが長距離国際線の洋上飛行で、出火したバッテリーが延焼したり、他の航法や操縦装置を損傷したりすれば、本当にシャレにならんことになっていた。

画像 こうなると思うのは、FAAによるB787の耐空証明審査や、そもそも開発段階の飛行試験が適切だったのか、という点だ。いろいろなメディアが報じているが、B787は燃費軽減のため機体設計やシステムに様々な新機軸を採用したものの開発が思うように行かず、引き渡しが3年以上も遅れた。しかも、テスト飛行中の2010年11月9日には機内の配電盤(今回のANAや8日のJALの出火場所とは別)が火災を起こし、緊急着陸をしていた。B787は、機体の空調や操縦制御のほとんどを、従来のブリードエア(エンジンから抽出した高圧の空気)や油圧の代わりに電動コンプレッサーや電動モーターで行う。その方が機体重量を軽減でき省エネにつながるという理屈だが、機内を行き交う電力容量は非常に大きくなり、発電器の容量はB767の3倍という「電気の化け物」だ。このため、電気系統の信頼性への不安は以前から指摘されていたことだった。今月相次いだバッテリー火災の原因は調査中ではあるが、電源の制御系統に何らかの設計ミスがある可能性はあると思う。そうだとすれば、ボーイングの開発力やFAAの審査体制の信頼性を大きく揺るがすことになるだろう。

B787の後始末でボーイングは新型機を出せなくなるだろう
画像 運航停止の期間がどれくらいになるかは何とも言えないが、新機軸を謳った機体システムの根幹で起きている不具合だけに、そう簡単に解決できるようには思えない。早くても数週間、もしかしたら数ヶ月単位で運航が停止される可能性もあるのではないだろうか。B787を戦略的機種と位置づけて新たな路線開設を行ったANAやJALは大打撃で、膨大な損害となるだろうし、それは当然、メーカーのボーイングに損害賠償というカタチで請求することになるだろう。

画像 一連の不具合が設計に起因するものであるという仮定ではあるが(たぶんそうだろう)、ボーイングは、JAL・ANAだけではなくB787を納入した世界中のエアラインからの損害賠償を請求される。また、現在製造ラインに並んでいる引き渡し予定のB787も大幅な改良が必要になるだろうから、それによる引き渡し遅れに対しても、賠償義務を負ことになる。この二つの補償債務はとんでもない金額になるはずで、同規模のメーカーが健在だった20年前であれば確実に倒産するほどの規模になるのではないか(実際、コンベアやマクドネルダグラスはCV880やDC-10の不具合が原因で市場から撤退した)。中・大型旅客機のメーカーがボーイングとエアバスしか無くなった現在では、それで倒産ということにはならないだろうが、ボーイングが負う補償債務の影響は、受注が伸びていないB747-8の製造中止とか、B737MAXの引き渡し遅延、B777次世代型やB737後継機の開発延期、といったカタチで現れるのではないだろうか。

 この先、A380で大きな問題が発生せずA350WXBやA320NEOがスケジュール通りに市場に投入されれば、次世代機を求めるエアラインがボーイングに見切りをつけ、受注がエアバスに集中するということも、可能性として大いに考えられるのではないだろうか。B737は、たとえMAXでエンジンやシステム系のリファインを行ったとしても基本設計が古すぎるし、B777とて2020年ごろには時代遅れとなり、B747がB747-400に進化したような大幅なバージョンアップが求められるからだ。また、B737クラスの機体に関しては、ボーイングがB737の本格的な後継機をなかなか出さないとなると、リージョナルジェットで実績のあるボンバルディアやエンブラエル、MRJが成功すれば三菱航空機までもが、この市場に進出して行く可能性がある。

 1年3か月前私は、エアバスがB787プログラムを批判的に分析し、重量超過や製造遅延だけではなく、組み立てに当たる工員の技術レベルにまで問題点を指摘していることを紹介する記事を書いた(「B787の燃費はどれくらい良いのか?」)。ちょうどANAが世界で初めてB787を就航させるタイミングで、世のメディアは「夢の旅客機」とおおいにもりあがっていう時期だった。いまこうしてトラブルが相次いで飛行停止と言う事態になったのを見ると、あのときのエアバスの分析は当たっている部分も多かったのだな、と思う。

 B787をめぐっていま起きていることは、将来的に世界の旅客機市場の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めている。それくらい、重大な出来事であると私は思う。







Ocean Radio@2013

@oceanicradioをフォロー


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
レイバン
ボーイング787で起きていること、これから起きること 旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記/ウェブリブログ ...続きを見る
レイバン
2013/07/03 19:10
吹雪の大脱出・・・新千歳空港JAL機トラブルについて
 今週水曜日(2月23日)、新千歳空港で起きた、3人の軽傷者を出したJAL3711便(ボーイング737-800 JA322J号機)の重大インシデントについて。 ...続きを見る
旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記
2016/03/09 12:29

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ボーイング787で起きていること、これから起きること 旅するデジカメ〜札幌発東京定住日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる