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zoom RSS JR北海道の「病巣」と、これから起きそうなことへの考察

<<   作成日時 : 2013/09/25 02:00   >>

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画像 JR北海道が、基準を超えるレール幅の狂いを97か所(後に約270か所に訂正)も放置していた問題が、連日報道されている。レールの幅は定期的に検査を行い、規定を超える狂いが見つかった場合は15日以内に補修しなくてはならないが、それが行われずに放置されていた。本社に未補修だという報告も、上がっていなかった。会見でJRは、「ただちに列車を止めなければならない数値ではなく、必要ないと判断した」と言ったらしい(9月22日・読売)が、そういう問題じゃないだろう。現に、函館本線では貨物列車が脱線した。「危険なレベルではない」のなら規定の数値そのものの意味がなくなるし、その理屈で行けば運転士が「危険ではない」と判断したら信号無視も速度超過もオーケー、ということになる。そういう話じゃ、ないだろう。

 それにしても、誰もが首をかしげるのが、「どうしてこんなことに?」という疑問だ。数ある職業の中でも鉄道マンは、「規定順守」が最も重視される職種の一つである。鉄道会社に入社した新人は、「規定に従った基本動作」を徹底的に叩き込まれる。時間厳守に始まり、指差確認に称呼確認、運行規定や運賃規則の丸暗記などなど、会社によって気風の違いはあれども共通しているのは「自分で判断せずに、信号指示や規定類、司令の指示に従うこと」という基本原則だ。そうであるからこそ、巨大な鉄の箱に何百人もの人を乗せ、細いレールの上を100キロを超えるスピードで疾走することが許されるのである。そういう鉄道会社にあって、「規定を超えたレールの狂いが補修されずに放置されていた」などというアホなことが、なぜ起きていたのか。

 この問いに対し、JR北海道の経営陣はひたすら「わからない」「調査中」と繰り返しているようだ。それはそうだろう。いま安易に口を開けば、自分たちのクビが飛ぶ話になりかねない。けれども、北海道に仕事と生活の場を持ち、この会社に少なからぬ関心を持ってきた私には、だいたいの見当はつく。それは、本業である鉄道事業で未来永劫黒字を出せない特殊な収益体質の中で、経営資源が適切に配分されてこなかった、ツケである。

 「人手が減らされ、補修にまで手が回らない」「経費が削られ、枕木一本の交換費用も出ない」。こんな「現場の声」が新聞に出ていた。記者が現役の保線担当社員を見つけて聞き出したものだろうが、おそらく本当のことなのだろう。定期検査で要補修個所が見つかっても、補修する人手がない。費用も足りない。しょうがないので、報告せずに放置しておく。レールの狂いは、なかったことにする。経営陣ですら「(この程度の狂いは)「ただちに列車を止めなければならない数値ではな」い、などと口走るくらいだから、現場が勝手にそういう判断をしていたであろうことは、容易に想像がつく。

 しかし、より問題なのは、人手不足、経費不足という現場の窮状が、上に伝わっていなかったことだ(上層部も知っていて放っておいたという可能性も考えられるが、それはないと私は思う)。「満足に補修ができません。このままじゃ危ないですよ」という声が、現場から上がらない。保線担当ばかりでなく、毎日のように同じ個所を走る運転士や車掌だって、「あそこはいつも変に揺れる。規定を超えてレールが狂っているんじゃないですか」という声を、上に届けない。そこに、この会社の病巣が見えるように、私は思う。

どんなに頑張っても赤字・・・働く者の士気はどうなる?
 JR北海道という企業は、事業会社として極めて特殊だ。本業の鉄道事業は慢性的に赤字。それどころか、長大なローカル線を維持しているために、未来永劫黒字化の見通しはない。その赤字を、国鉄の分割民営化の際に国から手切れ金として渡された経営安定基金の運用益で、なんとか財務上は黒字にしている。鉄道会社の看板を掲げているが、その収益の源泉は金融業なのである。鉄道は、やればやるだけ赤字。それは、赤字ローカル線の維持を国から命じられたJR北海道の宿命ではあるのだが、現場で働く者の士気を考えると、あまりに過酷な話だ。どんなに頑張っても、未来永劫鉄道業は赤字。それでも、金融業の収益のおかげで絶対に会社は潰れず、賃金も保証されている。

 そういう経営環境にあって、例外的に志の高い一部の鉄道マンはべつにして、平均的な社員の士気を高く保て、と言う方が無理なのではないかと、私は思う。民営企業においては、営業利益が出ているか否かは決定的に重要であるからだ。鉄道本業よりも、不動産だの金融だのといったサイドビジネスで利益を上げられる人物が優秀、とされる風潮が、この会社にはあった。過去2代の社長(小池明夫氏、中島尚俊氏)が揃って企画・営業系の出身であったことは、偶然ではない。こういう雰囲気は、自然と現場に伝わる。慢性的な赤字部門、将来的な黒字化が見通せないまま惰性で維持するような部門では、働き手のモラルが弛緩し、減点主義、事なかれ主義が蔓延するのは至極当然で、かつての国営企業や社会主義国の企業にいくらでも例がある。「現場から声を上げない」「上層部は数字しか判断材料にしない」という雰囲気が、そういう中から生まれてきたのではないかと思う。

 モラルが弛緩した中で無理なコストカットを強要すれば、安全性に影響するのは当たり前だ。それこそが私の考える、この会社の「病巣」であり、一連の事態の元凶ではないか。

DMVと新幹線
 これから先、JR北海道に起こりうること。二つのことが、思い浮かんだ。

画像 一つ目は、デュアル・モード・ビークル(DMV)の実用化・営業運転は当分の間、無いだろう、もしかしたら永久にないかも知れない、ということ。DMVは、マイクロバスに鉄道の車輪を取り付けて線路も道路も両方走れるようにした車両で、技術的にはほぼ完成の域に達していると言われる。マイクロバスベースの車両なら、通常のディーゼルカーより運用コストを大幅に下げることができるから、ローカル線の赤字幅を縮小し、会社の収益構造を改善する切り札になる・・・そんな考えから開発された。しかし、バスベースのDMVは従来の鉄道の保安基準には適合しないから、営業線に投入するには基準を大幅に緩和することが前提になる。JR北海道は、DMVを鉄道運転士の資格(動力操縦者甲種内燃車運転免許)ではなく、バス運転手の免許で運転可能にすることで、自社で抱える運転士の数を減らすことも考えていた(鉄道とバスでは免許取得の難易度がまったく違う)。だが、既存の規準すら満足に守れない、これだけ事故や不祥事を連発させているJR北海道が、基準を緩和してくれなどといま言えるはずがない。国も認めないだろう。DMV実用化は、JR北海道がまともな運行を回復し、信頼を取り戻すまで、少なくとも5〜10年は先になるだろう。それまで、今のままのローカル線経営でJR北が持ちこたえられるか。厳しい選択も十分にありうるだろう。

画像 二つ目は、こんな体たらくの会社に新幹線をやらせていいのか、良いはずがない、といったことが公然と議論されるようになるだろう、ということ。JR北海道は、新幹線の函館延伸(青函トンネルを含め、青森以北はJR北海道が経営する予定)を、収益改善の切り札として期待している。だが、在来線をまともに運行できない会社が、その2倍以上の速度を出す新幹線はちゃんとやれる、と言い張るのは、筋目の通らぬ話と受け止められるだろう。新幹線の函館開業(2016年3月予定)まで、あと二年半しかない。その間にJR北海道が安全管理体制を再構築して信頼を回復できる、というのはやや楽観的に過ぎるのではないだろうか。だったら、新幹線は予定通り建設・開業させるものの、函館までの経営は十分なノウハウを持つJR東日本がやればいい、という話が出て来てもちっともおかしくない。

 DMVと新幹線、JR北海道が経営改善ならびにローカル線存続の切り札と期待を寄せるこの二つに、両方とも黄色信号がともる。この一連の事態は、そういう可能性を十分に持っていると私は思う。

「痛み」を先送りしてきたツケ
 そこで、やや大胆だが、この先起こり得る一つの可能性を考えてみたい。

画像 札幌まで新幹線を伸ばす代わりに、JR北海道とJR東日本の合併、あるいはJR北海道をJR東日本の完全子会社とする、そういう条件を国が出して来るのではないか。もちろん、今の収益体質のJR北海道をJR東日本がそのまま引き受けるはずがないから、JR北の路線は黒字が見込める半分以下に整理する。地元がどうしても存続を希望する路線は地元が出資する別会社に移行させ、JR北が持つ経営安定基金も新会社に移す・・・。

 上にも書いたように私は、この一連のJR北海道の体たらくの根元は、全線の1/3が赤字、1/3が超赤字、黒字を生み出す路線は1/3しかなく、鉄道事業単独では未来永劫収益を上げられない体質にあると考えている。けれども、それはJR北海道だけの責任とは言えず、「地域の足としての鉄道をできる限り残そう」(それでも最盛期の6割にまで路線は減ったが)という国が作り上げたスキームであり、選挙を意識した当時の中曽根政権による政治的思惑の産物でもあったのだ。JR北海道が、東日本や東海と異なり、国の管理下にある特殊会社であることが、この会社の性格をよく表している。

画像 「地域の足を守る」・・・その理念までが間違っていたとは言わない。事実、JR北海道は発足以来、国鉄時代に廃止が決まっていた路線と、来年5月に廃止される江差線や支線の一部を除いては路線の廃止を行わずに、ひたすら赤字に耐えてきた。赤字ローカル線が地域に貢献してきた部分も少なくないが、一方で、JRの発足以来20数年、沿線自治体は鉄道運営をJRに任せっきりにし、自分たちの町づくり、地域づくりと鉄道との関係をまったく考えて来なかった。本来ならば、道や自治体がもっと主体的に地域と鉄道の役割を考え、それを維持して行くための方策を考えるべきだったのだ。そして国は、本業の赤字を金融業で補うような歪んだ収益構造を是正させ、鉄道本業で経営が成り立つ会社を目指すべきだった。20数年も何をやっていたのか。

画像 JR北海道を鉄道会社として自立させようという意志があれば、その方法は、札幌圏と幹線輸送による黒字で維持できる範囲に赤字路線を抑えるしかなく、そのためには地方の超赤字路線は切り離すしかなかっただろう。廃止か、それとも地元出資で存続させる(第3セクター)か、どっちにしても痛みをともなう。JR発足以来の20数年間、国も道も地元も、痛みを伴う荒療治はひたすら先送りにし、鉄道業では自立できないJR北海道の特殊な収益構造を温存させてきた。その結果が、これである。鉄道会社としての信頼とプライドは地に堕ち、いまや、虎の子の振り子特急でさえ満足に運行できない(保線・車両メンテのため最高速度を130km/hから120km/hに引き下げることを発表済み)。だがそれは、会社のオーナーである国と受益者の地方、そしてオペレーターであるJR北海道の3者による共犯関係の結果起きたことだ。JR一社だけの責任とは言えない。

 北海道の鉄道はどうあるべきか。地域の足はどうあるべきか。誰のための鉄道なのか。その鉄道の維持は誰が負担すべきなのか。置き去りにして来た宿題に、そろそろ決着を付けるべき時なのではないだろうか。


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JR北海道の病巣の原因ははっきり言ってJR総連系の組合であるのは明白である。かつて国鉄時代は国労が悪行三昧を行って鉄道利用者に迷惑をかけておいて反省の態度がない組合であるのはかつてあった。今ではJR総連系の組合が国労のやった行動を真似しだして、ある意味国労より始末が悪すぎる安全運動の活動を手抜きするのは日常茶飯で飲酒運転検査を平気でしない、それだけではなく挙句の果てには覚せい剤使用者が平然と勤務してたちが悪い利用客に注意されると暴言を言い放ち悪質な場合は暴力を平気で振るうやからがいるのには呆れてしまうのである。ある意味暴力団よりひどすぎる労働組合であるのは言うまでもない。経営努力の姿勢が足らないのか
国の管理下である特殊会社だからといって努力の手抜きは許されるものではないはずだと個人的には考える。
あのNTTでさえ特殊会社であるのに経営努力を十分すぎるほどやっているのは事実であるし、鉄道業界の関係者の考えは柔軟な考え方の発想力が頭の固い人間が多いのかそれともできの悪い人間が多いのどれかに分類されてしまうのだろう。
都姫27144
2016/09/08 12:04

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