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zoom RSS ボーイング787は「失敗作」である

<<   作成日時 : 2013/10/16 23:00   >>

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 いささか大胆だが、ボーイング社の中型旅客機B787は「失敗作」である、そう断言しておきたい。少なくとも、20〜30年後の航空ウォッチャーたちは、そういう判断をするだろう。

画像 誤解のないよう最初に書くが、B787自体は素晴らしい飛行機である。複合材や電動制御を多用した徹底的な重量軽減で燃費を向上させ、省エネと航続距離の延伸、中型機による長距離国際線の運航を可能にした。この功績は大きい。さらに、キャビンの気圧や湿度の上昇、窓の大型化、エンジンの静穏化で乗客乗員の快適性を大幅に向上させた。画像ジェット旅客機の登場以来変わり映えしなかったキャビンそのものの環境(座席やエンタテイメントシステムは除く、気圧・湿度・騒音など)を劇的に向上させた機体としても、記憶にとどめられる飛行機だろう。就航後にバッテリーからの発火事案が相次ぎ、3ヶ月半に渡って飛行停止となったが、それによる大量の発注キャンセルは起きておらず、現時点で979機の受注を得ている。この先大きなトラブルがなければ、1500〜2000機は生産され、ベストセラー機と呼べる、堂々たる販売成績を残すだろう。

画像 だがこれは、B787をあくまで単一の製品として見た場合の話である。ボーイング社の製品群として見た場合、総合航空機メーカーとしてのボーイング社の中でのB787のポジショニングを見た場合、まったく別な見方が成り立ちうると私は考えている。

■開発遅延の影響は延々と尾を引く
 たびたび報じられているとおり、B787は開発・引渡しが当初の予定から3年4ヶ月も遅れた。機体に盛り込まれた数々の新技術の安定化に、予想をはるかに超える時間がかかったからである。新型機の開発がスケジュールどおりに行かないのは通例とは言え、これほど遅れた例はかつてない。その結果、何が起きたか。航空機メーカーとしての信用の失墜と、経営資源浪費による体力の低下である。

画像 メーカーは、機体を契約どおりの期限に納入できない場合は、顧客エアラインに対して補償義務を負う。3年4ヶ月、数百機に及ぶ発注に対する補償債務は正確には発表されていないが膨大であることは間違いない。その一部はB767-300ERなどの「現物支給」で補われたが、メーカーとしてのボーイングの体力を確実に奪うことになった。さらに、初期の生産ロットは重量超過などからカタログスペック(確定仕様)の航続距離に届かず、もろもろの対策(パフォーマンスインプルーブメントパッケージ=PIM)を実施して確定仕様どおりの機体に仕上がるのは量産90号機(LN90)以降だ(B787は9月末までに89機が引き渡されている)。確定仕様どおりの性能を発揮できない場合は、これまたメーカーが補償義務を負う。

■後継新型機を開発できないB737/B777
画像 こうしてB787の開発と補償に経営資源を集中しなくてはならなくなった結果、ボーイングはB787に続く新型機を開発する余裕がなくなったのだ。2000年代半ば、ボーイングは小型機B737の後継機としてまったく新しい旅客機を開発する計画を持っていたが、B787に開発資源を集中させるために後回しにせざるを得なかった。画像その後、ライバルのエアバスがA320の改良型であるA320neoを発表したため、対抗上急きょ練り上げられたのが、B737NGに改良を加えたB737MAXだ。しかし、今年9月時点での受注数はA320neoの2392機に対し1563機にとどまっており、1.5倍の差を付けられて完敗の様相を呈している。そもそも、B737とA320は1960年代と1980年代、ベースの設計に20年の差がある。B737の改良型でA320に立ち向かおうというのが無理筋の話であって、ボーイングは一刻も早く新しい小型機の開発に着手すべきだった。しかし、B787に足を引っ張られ、それができなかったのである。

画像 同じことは、B777の後継機をめぐっても起きている。1995年に引渡しが始まったB777は2010年代後半には機齢が20年に達し、買い替え需要が発生する。これに備えて、遅くとも2000年代後半にはB777改良型の開発を発表し、2015年ごろの引渡しを目指すべきだった。しかし、B787の開発遅延からこの計画も遅れに遅れ、ようやく777Xの開発と概要が正式発表されたのは、つい最近である。777Xはいまだにプログラムローンチ(開発の正式着手)できるほどの受注を集めていない。代わりに、2006年に発表、プログラムローンチされたエアバスのA350XWBが好調な受注を集めている(10月現在で764機)。A350は3種類の胴体バリエーションでB787・B777両方に対抗できるよう開発されていて、B777の後継機を求めるエアラインの受注を一手に引き受ける構図となっている。

 ボーイングとしては地団駄を踏む思いであろう。が、B787の開発遅延による補償債務、初期ロットの性能不足による補償債務、さらにバッテリートラブルに起因する運航停止措置に対する補償債務という3重苦を背負うボーイングには、エアバスに対抗して新型機を開発して行くだけの余力がなかったのである。もしもB787が予定通り2008年に開発完了、引渡しを開始していればまったく別な展開があっただろうが、現実はそうはならなかった。

 ヨーロッパ各国が総力を挙げて支えるエアバスと、あくまでアメリカ一国の企業に過ぎないボーイング、という構図で見ればボーイングに同情すべき部分もあるにはある(そこをとらえてボーイングはしばしば「エアバスは国家の支援を過剰に受けており、競走上不公平だ」という主張を繰り返している)のだが、旅客機の開発競争は、国家と国家の威信をかけた、それほどシビアな「スポーティゲーム」なのである。

■生き残りのカギは新型機開発
 この先10〜20年を予想すると、エアバスはA320neo、A350、A380が順調に売れ、蓄えた利益でA320の後継となる新型機開発や、A350・A380のリファインに取り組むことになるだろう。一方のボーイングは、B787の売れ行きは好調を維持するものの、B737MAX、B777Xはエアバスの後塵を拝し続け、売れ行きの悪いB747-8iは早々に生産終了となるだろう。気付いたら世界の空は、超大型機はA380が独占、大型機・小型機もエアバスが比較優勢となり、ボーイングが存在感を示せるのは中型機のB787だけ、となっていることが十分に考えられる。ボーイングがフルラインアップのメーカーとして覇権を取り戻すには、B727が767、787へと進化したように、B737やB777の後継となる「新型」を一刻も早く開発するしかないはずだが、その体力を回復するのはいつになることだろう。

 この予測が当たるならば、B787は、かつてのCV-880(コンベア)やトライスター(ロッキード)、DC-10・MD-11(ダグラス・マクドネルダグラス)と同じく、民間機メーカーとしての転落のきっかけを作った機体として、記憶にとどめられることになるだろう。

 B787が将来的に「失敗作」と呼ばれるだろうと考えるのは、こんな理由からである。





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