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zoom RSS 政府専用機の後継はB777-9Xに決定・・・と思う、これだけの理由

<<   作成日時 : 2014/04/05 23:00   >>

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画像 ANAからボーイング747が退役したことで、「日本最後の旅客型ジャンボ」として政府専用機がにわかに注目を浴びているようだ。31日の「ANAからジャンボ引退」のニュースではNHKが「ジャンボ機として最後に残るのが、政府専用機です」などと紹介していた。しかし、前々から言われているとおり、政府専用機にも退役の期限がある。先月25日の朝日新聞によれば、現在の政府専用機B747-400の運用は4年後の2018年度で終了。後継機にバトンタッチさせるために、機種選定をこの夏にも行うのだとか。さらに同記事によると、後継機としてはボーイング777-300ERか、エアバスA350が有力なのだそうだ。

 難しい選択だろうな、とまず思う。政府専用機の後継機は2011年度中にも決定、などと報じられていた時期もあったのだが、それがここまでズルズルと伸びている背景には、それだけ難しい選択で、そう簡単には決められない、ということなのだろう。専用機を最もよく使用するのは総理大臣だろうから(日本の政府専用機はアメリカのエアフォースワンのように政府責任者の「専用機」とは意味が違うが)、機種選定においても総理の意向が強くはたらき、民主党政権のように政権基盤が不安定で総理がクルクルと変わるような時期には決められなかった、という事情もあるのかも知れない。

画像 再び同記事からだが、政府専用機として導入するための条件は3つ。「アメリカ東海岸まで飛行可能な航続距離を持つこと」「随行員等の十分なスペースを確保できること」「国内航空会社で整備可能なこと」だそうだ。この3つを満たす機体として現状では、B777-300ERとA350しかなく、自動的にこの2機種が有力候補となるのだという。B787も一時期は候補とされたが、機体が小さくスペース不足という理由でハズされたそうだ。総理+随行員(秘書官・省庁幹部)が移動するだけならB787でも十分だし、B737やA320クラスの機体でも足りるし、VIP用に小型ジェットの長距離仕様も開発されている(諸外国の要人輸送機にはこういう例がむしろ多い)のだが、中型機のB787でもキャパが足りず、さらに大きな機体がほしいとは、政府は相変わらず大人数の記者団を従えての大名行列外遊をやりたいということらしい。移動中の機内で総理が記者会見するような、アレね。(あの様子を、JALパックになぞらえて「パックジャーナリズム」と呼んだ人がいる) 

■最大の関門は「エアラインによる受託整備」
 「航続距離」「機体サイズ」は、B777-300ER、A350、いずれも満たすとしても、最大のネックは「国内航空会社にて整備可能なこと」という条件だろう。前にも書いたが、専用機を運用する航空自衛隊の特別輸送隊は、いわゆる「日常整備」しか行う能力・設備を持たず、機体やエンジンを分解して行うような重整備は外部に発注しなくてはならない。重整備能力を新たに持つためには数百億円の投資が必要になるため、後継機でもこの方針に変わりは無い。このため、国内航空会社、具体的にはJALかANAどちらかが重整備を引き受けてくれる機体でなくては、専用機として導入することが出来ない。

画像 現用のB747-400は、JALが整備や乗員訓練を引き受ける前提で導入され、機体の細部はJAL仕様に合わせてある。JALからB747が全機退役した今も、政府専用機の重整備はJALが行っている(操縦訓練はNCAに移った)が、自社では運航していないB747に合わせた要員(整備士は担当する機種ごとに資格が必要)や設備をいつまでも維持するわけにはいかないので、専用機の整備受託の期限が2018年度。後継機へのバトンタッチは、この「期限」が主な理由なのである。あまり知られていないことだが、防衛省は政府専用機の整備を受託する航空会社を毎年入札で決めている。旅客型B747の整備能力を持つJAL、ANAが対象になるが、入札に応じるのはJAL1社のため、JALによる整備が続いている。

 そのJALが、B777の後継機としてA350を入れることを決定している今、政府専用機の後継がB777ということになれば、整備はANAに委託するしかない。十数年先とは言え、JALからB777が全機退役してしまえば、現用機と同様、整備の委託先が宙に浮いてしまうからだ。ただ、現用機の整備受託の入札に参加しないANAが、後継機の整備に手を挙げるだろうか。

 4〜5年に1度行われる航空機の重整備は、内装はもちろん外装の塗料まですべて取り去って機体構造や操縦系統などを徹底的に検査する詳細なものだ。期間も、20日から2ヵ月程度かかるので、自社の営業に使う以外の機材で整備格納庫や整備人員を専有されるのは、受託エアラインにとっては大きな負担だ。現在の政府専用機の導入が決定されたのは1987年。当時のJALには、まだ国営企業の名残があった(完全民営化は同じ1987年11月)ので整備受託を受け入れたのだろうが、現在のANA、そしてJALにも、そこまでの余力があるのかどうかは、疑問だ。

■B777-300ERは2020年代には旧式化
 もう一つ気になるのは、候補機種とされているB777-300ERのモデルサイクルである。B777-300ERは現在も生産されている人気機種ではあるものの、ベースととなるB777-200の初飛行からは19年が経過していて、ボーイングは後継機となるB777-Xの開発を発表し、2020年代初頭に就航させるとしている。つまり、政府が後継機にバトンタッチさせるとしている2019年度の時点で、B777-300ERは後継機が登場する目前の旧世代機となってしまっているのだ。先月27日に発表されたとおり、ANAは現在運用中のB777-200(ER)/300(ER)をB787-9やB777-9Xで入れ替える計画だから、政府がANAによる整備をアテにして旧式のB777-300ERを買ったところで、機体の面倒をいつまで見てもらえるかは、先を見通すことができない。旧式化した機材をこの先20年以上整備を引き受けなくてはならないのは、ANAにとっては大きな負担だろう。であるならば、ANAに合わせて新型のB777-9Xを導入したいところだろうが、今から発注しても機体を受け取れるのは2020年代の前半になるだろうから、2018年度という現用機の運用期限には間に合わない。

■スケジュール優先なら「A350」だが
 現用のB747-400を2018年度で運用終了、後継機の運用開始を2019年度とする・・・こういうスケジュールありきで考えた場合には、JALが導入するA350を選択するしかないのではないか、と私は思う。A350は2019年からJALでの運用が始まる予定なので、同時に政府専用機としてA350を入れ、B747-400を入れたときと同じく、整備も乗員養成もJALに委託する。このやり方が、最も現実的と言えるのではないか。2014年に初号機が引き渡され、エアラインでの運航が始まるA350は、2019年には初期不良も出尽くして完成した飛行機になっているだろうし、その時点でも十分に最新鋭だ。B777-300ERに比べればもちろん、燃費もいい。

 重整備をエアラインに委託する以上、パートナーとなるエアラインとの調整は不可欠だ。機材を発注する段階で整備を担当するエアラインを決め、細部の仕様は委託先のエアライン機材に合わせたものにしておかなければならない。単純に政府の都合だけで導入機材を決められるものではない。また、航空機は発注から納入までに数年かかるものなので、数年先の航空業界の動向はもちろん、運用に当たる航空自衛隊の部隊編成、パイロットや整備員の要請スケジュールまで見通しておかなくてはならない。政府専用機の選定には、こういう難しさが常にある。

■総理が「エアバスで訪米」は「あり得ない」
画像 とは言うものの、独立国でありながらアメリカの意向が最優先の国柄である。沖縄をはじめ各地の米軍基地問題に見られるように、そこに住む国民の意思よりもアメリカの都合を優先する日本政府である。その専用機にヨーロッパ制のエアバスが本当に選ばれるかと言えば、実際の可能性はほぼゼロだと私は見ている。有力候補とされるB777-300ERは、後継機にバトンタッチする時期には旧式化してしまうという懸念は確かにあるだろう。であるならば、その懸念を払拭するために、新型でANAと同じB777-9Xを導入するために、万策を尽くすのではないだろうか。

 考えられるのは、JALとの交渉で現用機B747-400の整備受託契約をあと数年伸ばし、2022年ごろまで面倒を見させること。それがどうしてもムリならば、JALとの契約終了後は海外の整備専門会社に重整備を委託し、B777-9Xが日本政府に引き渡されるまでは現用機を使い続けること。それも国防機密上まずい(ベースが民間機であるB747-400に国防上の機密が詰まっているなどとは思えないが)というのであれば、予定どおりB747-400の運用は2018年度で終了して機体を退役させ、B777-9Xが納入されるまでの数年間は民間機のチャーターでしのぐ。そんな方法だろう。どれもこれもかなり無理筋で、しかも、ボーイングの開発計画の遅れによってはB777-9Xの引き渡しが2020年代半ばくらいにまでずれこむリスクも抱える(新型機の開発が大幅に遅れる例はB787でさんざん見せられた)が、そこまでしてでも、政府はアメリカ製の旅客機を買うことにこだわるだろう。3年前の次期主力戦闘機(FX)選定でも、機体の完成度や日本での生産分担からしてユーロファイターを推す声は強くあったが、アメリカ製のF-35(ロッキード・マーチン社)に決まった。政府専用機は、戦闘機に輪をかけてアメリカ指向が強いことは間違いない。何しろ、新しい政府専用機が引き渡され、訓練を経て運用が始まり、実任務としての最初の用途は、恐らく、総理の訪米だ。そんな飛行機に、ヨーロッパ製のエアバスが選ばれることなど、100%無いと断言してもいい。「2019年度に導入」というスケジュールから逆算した場合に、A350の選択がどんなに合理性があったとしても、である。

 さてさて、どうなることだろうか。冒頭の新聞記事は、後継機の選定は夏には結論が出ると述べている。2019年度という導入スケジュールからすれば、そろそろ決めて発注しなければ、というタイミングではあるが、果たして、結論は出るのだろうか。

※ネットを検索したら、誰が作ったのか政府専用機として導入した場合のB747-400、B777-300ER、A350-1000を比較する図面が出てきた。出所不明ながら、おもしろいので使わせていただく。どうでもいいけと、白地に赤帯が窓部分を取り巻くデザインは、ジャンボ機だとサマになるが、B777のようなシングルデッキの機体には似合わない、イケてないように見えるのは、私だけだろうか・・・。


【追記】
 政府専用機後継機についてはその後、「ボーイング777-300ERが確実」との報道が複数回あり、8月12日にボーイング777-300ERに決定したことが正式に発表された。同時に、整備委託先もJALからANAに替わることが明らかになった。また、これに合わせて塗装も現在のものから若干替わる(下写真)。日本政府から発注を受けた機体は登録番号N509BJ(シリアルナンバー 62439/1422)として完成し、2016年7月に初飛行。その後内装などの作業が行われている。

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政府専用機はやはりボーイングになるらしい
 「政府専用機の後継機がボーイング777になる」と、きのうの産経新聞に出ていた。新聞がこう書く以上、そういうことなのだろう。 ...続きを見る
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2014/04/24 11:11

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