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zoom RSS 札幌へ・・・「北斗星」最後の旅

<<   作成日時 : 2015/02/06 23:00   >>

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 今年最初の札幌出張。上野から寝台特急「北斗星」で、札幌へ向かった。学生時代以来、19年ぶりに北斗星の乗客となる。

 来月で定期運転終了、その後臨時列車となるものの、8月21日で完全終了(廃止)が発表されている列車である。指定券の確保は困難を極めていると言われていたが、出張日程に合うB寝台券を幸運にも入手に成功。前々から楽しみにしていた旅だった。 とは言え、出張旅行をそう余裕を持って楽しめるわけがなく、ギリギリまでオフィスで仕事をして、食糧・飲料の調達もそこそこに、19時3分の発車に滑り込むような雰囲気で、車上の人となった。


 私の寝台は2号車15番の上段。列車は満席のはずだが、向かいの寝台上下段は空いている。途中駅から乗ってくるものと思うが、それまではそこに座らせてもらおう。それにしても、普通の特急なら60〜70人は座らせるところを、北斗星は最も定員の多い開放式B寝台でも32人だ。寝台列車は優雅で贅沢なものだな、と思うと同時に、こんな列車をいくら走らせていてもJRはさっぱり儲からず、何かと理由をつけて廃止を急いだのもわからぬ話ではないよな、と思う。

 19時代の首都圏は、帰宅ラッシュの真っ只中だ。満員の山手線や人で溢れるホームを車窓に見ながら旅立つのは、やはり優雅なものだ。

■1時間45分待っても食堂車には入れず
 夕食は、食堂車で取るつもりでいた。最後の旅の思い出に、流れる景色を見ながらビールを飲みたい。北斗星の食堂車と言えば、予約制のバカ高いフルコースディナーが有名だが、21時半以降のパブタイムなら予約不要で、カレーやピザなどを手頃な値段で食べることができる。満席乗車なら混むだろうと思い、20時45分ごろに行ってみた。が、すでに食堂車前は長蛇の列。待つこと45分、21時30分のパブタイムスタートと同時にどっとなだれ込んだが、私の数組前で満席になってしまった。係員がウェイティングリストに名前を書き込んで隣のロビーカーで待つよう言われる。だが、「22時30分がラストオーダーです。これまでに席が開かなければ入店いただけません」と。さっきから並んだ時間がすべてムダ、ということだ。地上の店なら、並んだ人の分だけは営業時間を伸ばすとか、時間内にさばき切れない客は並ばないように列を切るものだが、そういう臨機応変さはないらしい。そして1時間後、「時間になりました。申し訳ございません」と。結局、1時間45分も待ったのに食堂車でのメシにはありつくことができなかった。

■ワゴンサービス・20分待ち
 いいかげん、腹も減った。しょうがないのでワゴンサービスで売っていた弁当を買った。23時近くになって弁当が残っているのも奇跡のような気がするが、満席乗車を見越して弁当だけは大量に積み込んでいたのだろう。このワゴンサービス、北斗星のオリジナルグッズを売っているせいか人気が高く、買い物客が殺到して車内を巡回できなくなり、8号車のデッキを売店のようにして販売していた。揺れる車内で現金や商品のやり取りは時間がかかる。こちらも列ができていて、弁当と缶ビールを買うのに20分かかった。時刻は23時を過ぎている。仕事上遅メシには慣れているが、さすがに腹が減った。

■北斗星は「サービスを受けるための列車」ではない
 思うに、北斗星という列車は、乗客全員に食事やグッズ販売など、満足なサービスを提供できる列車ではもはや、ないのではあるまいか。と言うより、元々そんなサービス列車ではない、と言ったほうが正しいかもしれない。11両編成の北斗星1列車の定員は約190人。開放型B寝台が中心だった昔は、もっと定員が多かったはず。ところが食堂車の席は26人分しかない。乗客全員がここで食事をとることなどできるはずがなく、そういうことをそもそも想定していないのである。

 昔を思い出してみたら、貧乏旅行だった学生時代は、北斗星に乗っても食堂車で食事を取ろうなどとそもそも考えなかった。安い駅弁か、そうでなければファストフードやスナック菓子を持ち込んで空腹を満たすのが常だった。サービスを必要としない乗客だったのである。

■北斗星は「国鉄型寝台特急」の生き残り
 北斗星は、JR発足後の1988年に、青函トンネルの開通と同時に運転を開始した。個室寝台や予約制フルコースディナーがメインの食堂車などが注目され、「豪華寝台特急」などと謳われたりしたが、列車編成の発想そのものは昭和の国鉄型寝台特急列車の延長上にあったと私は思う。「国鉄型寝台特急」とは私の勝手なネーミングだが、要は、貧乏学生のような「サービスを必要としない乗客」を大量に乗せ、帰省や私的な用事での上京、修学旅行など「庶民の足」として機能する列車である。運転開始当初は編成全体の半分以上が開放型B寝台であったことからも、それはうかがえる。

 豪華な食堂車や個室寝台車は話題にはなったが、全体からすればそれらの利用者はさほど多くはなく、そこまでのサービスキャパも備わっていなかった。食堂車やシャワー室を乗客全員が利用することは出来ないが、それが大きな問題とはならなかったのである。

 当時から、東京〜札幌の移動手段は航空機以外にあり得ず、同区間を16時間もかけて列車で移動する人は、列車の旅そのものに価値を見いだす人だろう、北斗星の主たる利用者はそういう層だろうと言われた。だが、それはあまりに東京・札幌の2地点しか見ていない発想で、北関東や東北と北海道南部を結ぶ移動手段と考えれば、なかなか利便性の高い列車だったのだ。たとえば、宇都宮〜函館、福島〜室蘭などという区間を移動する場合、羽田まで移動する時間や費用、あるいは新千歳空港から目的地まで移動する時間と費用を考えると、ポイント・トゥ・ポイントで移動できる北斗星には利用価値があっただろう。所要時間は航空機より長いが、ほとんどが深夜〜朝帯の「寝ている時間」なので、時間が無駄になるという感覚はそれほどでもなかっただろう。航空会社が早割など大幅な割引運賃を売り出す前までは、乗車券+寝台特急券という北斗星の料金も、全体として割安感はあった。1990年代、往年の北斗星を支えたのは、金なら払うというレジャー旅行者や鉄道ファンではなく、あくまで航空機との相対的な比較優位性において列車での移動を選んでいた人たちであったのではないだろうか。

 ところが、航空運賃の下落とともに、沿線の地方都市から羽田や新千歳に移動してもなお、航空機移動のほうが割安となっていた。すると当然ながら、比較優位で北斗星を選んでいた層は、航空機にシフトすることになった。代わりに主流をなすようになったのは、移動の手段では無く、列車の旅そのものを楽しみたい客、「サービスのいらない乗客」から、「高い金を払ってでも良いサービスを受けたい」という層だ。庶民の足から観光列車への変質。2000年代以降、全国の寝台特急が次々と廃止されて北斗星の希少性が高まるにつれ、その傾向はますます顕著になっただろう。

 すると、どうなるか。少ない席数、短い営業時間の食堂車に乗客が殺到し、私が体験したように、長時間待っても食事が取れない、食堂車を楽しみに北斗星に乗ったのに入れない、というようなことが状態化する。今回の私の旅でも、シャワー室は上野を発車する前に予約で埋まっていた。けれども、食堂の席数を増やすのも営業時間を伸ばすのも、シャワー室を増やすのも、車両サイズやスタッフの勤務時間の制約や列車の構造上の条件で、できることではない。国鉄型寝台特急の生き残りである北斗星は、乗客全員がそういう付加価値サービスを享受できるような仕組みに、そもそもなっていないし、そこまでのニーズもかつてはなかったからだ。

 ここ何年かの北斗星は、乗客が求めるサービスと供給能力のギャップで、苦しい状況にあったのではないだろうか。それが、北海道新幹線の開業を前に潮時と判断された理由の一つとしてあったのではないだろうか、と乗ってみて思った。

■揺れる寝台・・・それでも客車列車の静けさは格別
 上野を出発してしばらくは、ロングレールの上を滑るよう走っていた列車だが、仙台を過ぎたあたりから、ガタンゴトンというジョイント音が目立つようになってきた。こっちの方が列車の旅らしくていいや、と思いはするものの、継ぎ目を渡るたびに、それなりに揺れる。B寝台の上段にいると、さらに揺れる。ロビーカーで食事を済ませて席に戻り、いつの間にか眠り込んでしまった。

 まもなく函館到着、というアナウンスで目が覚めた。そのしばらく前からうっすらと覚醒はしていたのだが、江差線内の線形のせいなのか、ひどく揺れた。

 機関車交換のため、函館では19分停車。ホームに出てみると、寒い。マイナス7〜8度はあろうか。それでも、乗客が大勢降りて、機関車交換の様子などを撮っている。機関車牽引の客車列車という存在自体が、もう絶滅危惧種なのだ。空いていた向かいの上下段寝台には、けっきょく誰も乗り込んで来なかった。満席のはずなのに、指定券の持ち主が直前で旅を中心したのか、元々非売に設定されていたのか。真相はわからぬが、これから札幌までの4時間は、空いている下段を座席として使える。幸運に感謝。

 函館を定時に発車。道民の私にとっては、ここから先は見慣れた景色だ。それでも、エンジン音がガンガン響き渡る特急の座席に座っているのに比べれば、広々とした寝台席は自宅でくつろいでいるような感じで、景色の見え方まで違ってくる。それに何よりも、エンジン音がせずに車内が静かなのがいい。

■車上食料の枯渇は切実問題
 食堂車は6時半から朝の営業が始まっていたが、開業と同時に満席。さらに30数人が待っているというので、10時のラストオーダーまでに座れる可能性は低いと判断して、買い込んでおいたおにぎりとワゴンサービスのコーヒーで、朝食を済ませた。ワゴンサービスは、席で待っていても来ないので、はるか先の9号者まで歩いて行ってつかまえた。ちなみに、函館で積み込んだ朝食用の弁当とサンドイッチは、早々に売り切れたそうだ。廃止間近の列車に言ってもしょうがないことだが、車上食糧の不足、枯渇は乗客にとっては切実な問題である。乗客全員が買えるだけの量を積み込むべき、と言いたいところだが、スペースや売れ残りのリスクから、無理なのだろう。唯一の自衛策は買って持ち込むことなのだが、上野駅の売店は混んでいて時間に余裕がないと難しいし、途中駅のホームは自販機しかないところばかり。国鉄型寝台特急は、こういう点でも限界に来ていたのだろう。

■JR型寝台列車は高付加価値・高料金
 JR東日本や西日本は新たな夜行列車の計画を持っているるが、どれも定員を少なくし、料金をうんと高くした特別列車になるという。列車という限られたスペースで、食事やシャワー、車窓風景などのサービスを乗客全員に満足に提供しようとすれば、そうせざるを得ないのだろう。おととし運転を開始したJR九州の「ななつ星」は、このタイプの先行例だ。これを「JR型寝台列車」と呼ぼう。「カシオペア」や「トワイライトエクスプレス」も、「JR型」と呼んでいいだろう。

 ただ私は、七つ星のように始発点に戻ってくるような観光列車には興味が持てない。そんなものに乗る金があれば、海外に行く。列車はあくまで移動の手段であってほしいし、庶民の生活手段として機能してほしいと思う。残念ながら、北斗星のような国鉄型寝台特急は、時代の変化の中で生活手段としての役割を他に明け渡し、観光列車、あるいは「JR型寝台列車」としては中途半端なものとして、終焉を迎えることのなった。

 北斗星運転開始時の興奮を知る者としては寂しい限りだが、そういう私とて、16時間という所要時間の長さ、航空機の割引運賃と比較した場合の料金の高さ、1か月前にならないと指定券を買えないという不確実性から、北斗星に積極的に乗ろうとしたことは19年間一度もなかった。廃止を知って慌てて切符確保に動いたクチだ。どんなものにでも、始まりがあれば終わりがある。そういうことなのだろう。

■札幌へ・・・旅の終わり
 八雲、長万部、伊達と、なじみの駅に止まりながら、列車は内浦湾の沿って北上する。空は快晴、雪も少ない。太平洋岸で冬晴れが多いのは、北海道も同じだ。東室蘭までくると、気分的には札幌がすぐそこ、という感じがしてくる。苫小牧から先は、あっという間だ。私服からスーツに着替え、仕事の体制に戻る。札幌着が11時15分。朝の便で羽田を出てくれば、札幌に着くのがちょうどこれくらいだ。今朝の便で来ました、と何食わぬ顔で仕事先に向かえる。

 日本国内での移動としては人生最後となるであろう夜行長距離列車の旅を、存分に楽しませてもらった。







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