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zoom RSS 沖縄の新聞事情について

<<   作成日時 : 2015/04/02 23:00   >>

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画像 沖縄の新聞事情は、かなり特殊だ。日刊紙として機能しているのは事実上「琉球新報」「沖縄タイムス」の二県紙のみ。家庭でもオフィスでも購読する新聞はこの二紙以外にあり得ず、書店やコンビニなどでも、一般紙としてはこの二紙以外ほとんど目につかないほどの、強固な独占体制となっている。

 沖縄の地理的特性が、この状況の唯一の理由だ。本土から遠く離れた沖縄の場合、県内に印刷工場を持たない限り、朝の時間帯に新聞を届けることはできない。本土で印刷される県外紙(全国紙)は航空便で沖縄に運ばれてくるが、店頭に並ぶのは昼過ぎ、配達されるのは夕刊の時間帯になってしまう。「新聞は朝読む」という習慣は強固だから、地元で印刷される県紙は絶大な市場支配力を持つのである。北海道も昔は同じような状況で、1950年代までは、全国紙は列車便で1日遅れで届いていたため、地元紙の北海道新聞が圧倒的なシェアを持つようになった。中央から離れれば離れるほど地元紙の力が強くなるのは全国ほぼ共通だが、このような地理的・物理的な歴史的背景があるからだ。道路の整備によるトラック輸送の発達で、地元紙と全国紙の時差はほぼ解消された(北海道は人口が多いので、全国紙も道内に印刷所を造った)が、沖縄の場合、海で遠く隔てられ、船か飛行機以外での輸送が不可能という地理的特性から、地元二紙による市場支配が今も続いているし、今後も解消されることはないだろう。

 両紙の発行部数、影響力はほぼ拮抗しており、論調や報道姿勢も似通っている。際だった特徴が、米軍基地の撤去・縮小、負担軽減を求める姿勢で首尾一貫していることで、新基地建設というカタチで新たな負担を押しつけようとする日本政府や、選挙公約を反故にして辺野古埋め立てを承認した仲井真前県政に対して厳しい姿勢を取り続けていることである。これに付随するカタチで、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使や自衛隊の海外任務の拡大、憲法改正そのものに対しても、一貫して批判的だ。本土から迷惑施設を押しつけられ、基地負担に苦しみ、軍用地の早期返還を望む県民世論を代表する新聞としては、当然過ぎるくらい当然の姿勢だろう。沖縄の県紙は、沖縄防衛局長の問題発言をオフレコ協定を破るカタチで報道するなど(琉球新報によるオフレコ報道)、ジャーナリズムの実践者として評価すべき点が多々あると、私は思っている。

■中央から嫌われる地方紙
 ただ、本土の保守派や保守的新聞人たちの間でこういう状況が死ぬほど面白くないのは確かだ。「反日左翼の沖縄マスコミ」なんていう口汚い罵りもしばしば耳にする。中でも本土の一部の人たちを刺激するのは、「政府は〜」と書くところをわざわざ「日本政府は〜」と書く傾向にある、地元紙の筆致のようだ。沖縄の独自性、特殊性をことさらに強調する狙いがある、と。民族自決の精神に従えば当然のことのように思うが、日本中が同じ民族で同じ方向を向き、国民一丸となっていないと気が済まない人たちからすれば、沖縄の新聞は目障りでしょうがないのだろう。彼らにしてみれば、沖縄の地元紙は県民の大多数が米軍基地の早期撤去を求めているかのような印象操作をしているということになるし、反基地県民集会に何万人も集まったり、普天間基地を県民が包囲したり、キャンプシュワブのゲート前で連日座り込みが行われたり、県知事選や衆院選で辺野古の新基地建設阻止を訴える候補が勝利したりするのは、みな地元紙のせい、ということになる。いくらなんでも言い過ぎと思うが、沖縄の新聞は本土の一部勢力から忌み嫌われているのは事実だ。中央の人々は概して、地方紙の論調を疎ましく思うものだが、沖縄の新聞はその度数で図抜けている。

 沖縄県紙憎しの感情がそれほどであるなら、自分たちの主張に近い新聞を沖縄で印刷発行し、朝刊帯で県紙と競い合えば良いのに、と思う。が、新報なりタイムスなりが自分たちの競争相手となる県外紙の受託印刷を引き受けることはまずあり得ず、かと言って自前の印刷所を作るには莫大なコストがかかる。沖縄の人口規模と、県内二紙の強固な市場支配を考えれば、採算ベースに乗るはずがない。主義主張のためとは言え、大赤字覚悟で新規発行に乗り出せるような状況にはどこの新聞社もなく、だからこその県内二紙の独占体制なのである。

■地元紙と地元権力の関係には要注目
 だがしかし、中央に対して勇気ある論陣を張る沖縄の新聞が、地元の権力である県政当局や県警察、地元経済界に対して、しっかりした監視の役割を果たせているかどうかは、冷静に見る必要があると私は思う。これは沖縄県紙が、ということではなく新聞全般に言えることだが、どこの地域でも新聞でも、地元の権力には弱く、遠くの権力には強く出る傾向があるのだ。

 道県規模の新聞であれば、国政レベルのイシューには果敢な論陣を張るものの、地元権力には腰が引けてしまう。北海道警の裏金・不正捜査問題の追及を北海道新聞が「手打ち」にし、関係した記者を更迭した一件が、その一つの例だろう。(もっともこの件は、全国紙の追及は最初から及び腰で、道新がむしろ孤軍奮闘だったのだが、道警という絶大な地元権力を前に、持ちこたえることはできなかったというのが実態)  たとえばまた、北海道への新幹線建設をめぐる道新の報道を見ていると、採算性への疑問や並行在来線問題などの負の側面よりも、経済効果だの利便性だのを強調する報道が圧倒的に多い。

  全国紙は逆で、地方権力や外国政府に対しては厳しいものの、東京の中央政府や財界に対しては地方紙よりはるかに及び腰になる。それでも、全国紙と地方氏が並立していれば補完関係が機能するし、全国紙と地方紙の記者どうしの競争もあるから、地方紙とて地元権力にはある程度厳しい目を向けざるを得ない。沖縄以外のすべての地域はそうなっている。だが、全国紙が事実上存在しない沖縄ではどうなのか。競争のない中で、反基地・反日本政府で勇気ある言論を展開しながら、地元権力とズブズブになっていないか。基地や東京に向けられる厳しさと同様の姿勢が、地元の県政や経済界に対しても向けられているのか。ここは冷静な目で見なくてはならないだろう。

 沖縄に住んでいるわけではないので、真相はわからない。だが、一般的傾向として新聞はどこでも、「遠くの権力に厳しく近くの権力に甘い」傾向にあることは確かだ。県外の人間は、基地問題の報道ぶりに目を奪われがちになるし、それはそれで本土メディアがやるべきでやっていないジャーナリズムの実践であることは間違いない。だが、それだけで新聞の本質を評価できるわけではないことを指摘しておくのが、公平というものだろう。

【Ocean Radio@2015】





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