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zoom RSS JR北海道・不採算路線「切り捨て」に思うこと

<<   作成日時 : 2016/10/26 23:00   >>

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画像 JR北海道による不採算路線整理の行方が、大きな議論になっている。今年7月に「存廃論議の対象となり得る路線(輸送密度2000人未満路線)」が公表されたのに続き、先日には「札沼線(北海道医療大学〜新十津川)」「留萌線(深川〜留萌)」「根室本線(富良野〜新得)」について、バス転換に向けた地元協議に入ることが報道された。

 感想が二つある。

 一つ目は、これはJR九州の株式上場と軌を一にする、JR各社の完全民営化を目指す政府の意向に沿うためのものだということ。

 二つ目は、道内ローカル線の営業成績が惨憺たるものであることはとうの昔からわかっていたことなのに、存廃論議が出て来たところで、何を今さら慌てふためくのか、ということだ。

■完全民営化を見据えた国の思惑
 まず一つ目の、株式上場について。1987年に行われた国鉄の分割民営化は、株式上場によって完全民営化を成し遂げることで初めて完結するものである。大都市や新幹線を持つ本州3社(東日本・東海・西日本)は早々に上場したが、鉄道事業で黒字が見込めない三島会社(北海道・四国・九州)とJR貨物の上場は先送りされてきた。これら4社の株式は運輸・鉄道機構(国鉄清算事業団の承継団体)が保有しており、事実上の国営会社だったのだ。しかしこれは、上場を断念したものではなく、状況が整えば上場して完全民営化するというのが民営化当初からの政府の方針であり、それは今も変わっていない。そして、JR九州が上場を達成した今、残る3社の上場を急ぎたい、そういう意向は政府内に間違いなくある。数年以内には無理だとしても、10年以内には必ずやりたい。そのためには、未上場3社の中でも経営成績が不良なJR北海道の収支改善は待ったナシでとりくまなくてはならない、そういうことなのだろう。

画像 2015年度のJR北海道の決算は、約830億円の収入(そのうち鉄道収入は680億円)に対し1280億円もの支出(450億円の赤字・2015年度決算)が発生するという、超赤字経営だ。経営安定基金の運用益で補てんすることでどうにか持ちこたえているが、、このような経営状態では、上場などほど遠い。特急列車の高速化やローカル線への低コスト車両(DMV)の導入計画、車両・設備の維持費削減など、収益改善のための努力は重ねてきたが、どれも成功したとは言えない。振り子式車両の開発・導入などで130km/h運転を実現し、「日本最速のディーゼル特急」などと注目された時期もあったが、肝心の利用者は、高速道路の延伸や人口減などのためJR発足当時に比べ7割程度に落ち込んでいる。そして維持費の削減は、一時期(2000年代後期)に赤字額を200億円程度まで削減するなどそこそこの成果を見せたものの、車両故障の頻発や脱線事故、保守作業の放置と虚偽報告など、惨憺たる結果を招いたことは周知のとおり。残る手段は、不採算路線の整理(廃止)しかない。JR北海道はそこまで追い詰められており、それは国から完全民営化というプレッシャーを掛けられているからである。

 さらに言えば、収入の5割もの赤字を毎年出していて倒産しないのは、経営安定基金の運用益で補てんしているからだが、この補てん金は基金をJR北海道が国(運輸・鉄道機構)に対して市中金利の2〜3倍の高金利で貸し付けることで得ているもので、カタチを変えた、国からJRへの補助金にほかならないのだ。市中金利で運用していてはとても足りず、たちまち倒産してしまう。国が上場を迫る背景には、こういう経営支援を早いとこやめたい、という思惑がある。

要は、国が描いた国鉄の分割民営化の絵図は、不採算路線を大幅切り捨てを前提に初めて成り立つものであり、住民の足を守る、「生活権・交通権の保全」という観点で見れば、完全に失敗だったということである。国とJRの置かれた状況を全体としてみないと、地方路線廃止問題の本質は見えてこない。

■超赤字の実態は前々からわかっていた
画像 不採算路線が赤や黄色で塗られた鉄道地図は、去年あたりから新聞紙上などで頻繁に目にするようになった。たとえば、右の図は去年6月28日の毎日新聞(電子版)に掲載されたもの。輸送密度500人未満の路線が赤く塗られている。右下の図は今年5月にJR北海道が発表したもので、輸送密度500人未満が赤点線、同2000人未満が赤実線で記されている。点線と実線の区間を足すと全営業キロの58%になる。国鉄末期の1980年代、輸送密度2000人未満の路線は廃止対象とされ、軒並み廃止された。このときの基準で見れば、北海道の鉄道の6割はJRが自力で維持することが不可能、廃止を含めた抜本的な策を打たないと企業として生き残れない・・・北海道の鉄道にまつわる報道で出現頻度が急増中の理屈である。ちなみに、鉄道を黒字経営するためには、1日4000人以上の輸送密度が必要とされている・・・北海道でこれを満たす路線はわずか26%、JR北海道の経営環境がいかに過酷か・・・、これもよく言われることだ。

 だが、ちょっと待ってほしい・・・と私は思う。各路線の輸送密度を色分けしたこの図面は、去年今年に突然出てきたものではないのだ。少なくとも2004年、JR北海道がDMV(デュアルモード・ビークル)の開発に着手した時点で、この図面は公表されていた。国鉄基準で6割が廃止対象、輸送密度500人未満の超赤字路線が3割近くを占めるという構図は、12年前も今も変わらない。DMVは、このような不採算路線をどうにかして存続させる手段として計画・開発されたものだった。

 この12年間、鉄道をかかえる地元は何をやっていたのか、と私は思う。自分たちのマチを走る列車が超赤字で、JR北海道の足かせとなっている、なんとかしようとレールの上にバスを走らせるという奇策に出ようとしている、それが明らかになった2004年の時点で、これらの地域の町長や役場職員、住民たちの中から「ヤバイ」という声は上がらなかったのか。なんとかしないとマチから鉄道が消えてしまう、そういう危機感は出てこなかったのか。

 開発途中のDMVが公開されたとき、強い関心を示して視察や誘致に動いたのは、道内よりもむしろ、道外の自治体や鉄道会社だった。実際の車両・線路を使った走行実験や試乗会も、道外で多く行われている。静岡県富士市、熊本県高森町、静岡県浜松市、岐阜県恵那市の4か所だ。これらはいずれも地元がJRに熱心にはたらきかけた結果であり、試乗会には多くの住民が訪れた。道内の営業路線で一般客が試乗できた機会は、釧網線の浜小清水〜藻琴で2007年の4〜11月と翌年の4〜6月に行われた試験的営業運行のみ。これも、JR側の実績作りと本格的な営業運転に向けた法制面の検討が目的で、自治体側が誘致したわけではない。不採算路線を存続させる切り札として計画・開発されたDMVだったが、DMV投入の対象となりそうな路線を持つ道内自治体の関心は高くはなかった。「ぜひ我が町に」という声は、道内では聞いたことが内。JR北海道としては、地元の「鉄道愛」「線路を残すことによる安心感」を重く見て、道路を走るバスをわざわざ線路も走れるように改造したわけだが、肝心の地元の鉄路への執着はそれほどでもなかった、ということだと思う。結局DMV計画は、一連の経営危機の中で中止されてしまうが、そのような判断に至った背景には、諸々の技術的困難さもさることながら、DMVのような小型簡便な車両に置き換えてまでの鉄道存続を各地元が強くは望んでいなかった、ということがあったと私は思う。実際、DMV開発断念が正式に発表された去年8月、道内各地で落胆の声が上がったという話は聞いていない。 DMV計画の中止は、地方の不採算路線の廃止がぐっと現実味を増す事態だったのに、である。

 こういう経過を振り返ると、いま廃止が現実味を増している札沼線や根室線や留萌線の沿線町長たちが「廃止反対」「生活の足を奪う」と声を上げていることに、なんとも白々しさを感じてしまうのだ。自分たちの暮らしに鉄道が不可欠だと言うのなら、なぜもっと前から存続のための策を打って来なかったのか。JRや道、国と話し合いを持って来たか。住民の利用動態を詳しく調べ、鉄道廃止の影響や代替交通手段の有無、利用者負担の度合いなどを検討して来たことがあったか。鉄道廃止と引き換えに代替交通機関の整備支援を取り付けた夕張市は例外で、多くの自治体が、鉄道が赤字で維持困難だとは知りつつも、「JRがなんとかしてくれる」「国は廃止を認めないだろう」そんな甘えがあったのではないか。あるいは、「国は何もしないし、自分たちでは維持費は出せないし、廃止されるならされるでしょうがない」という、あきらめの気持ちがあるのではないか。1日数本しか走らない列車がなくなると生活に困るのは、通学や通院に公共交通機関を必要とする、全体から見れば少数派に属する人たちだ。地元にいる町長たちにすら、そのような少数派が既に見づらい存在となっている・・・そういうことではないだろうか。

 鉄道廃止で、地域は間違いなく衰退する。深名線、天北線、池北線(ふるさと銀河線)、かつて鉄道が通っていた町や村を見てみるといい。駅前にあった集落は見る影もなくなっているところがほとんどだ。元々衰退の途上にあるのなら、鉄道廃止はそれにドライブをかける。それは、地方切り捨てをいとわぬ国と、それに無策な地元自治体の共犯関係の結果であると、私は思う。割を食うのは、地方で暮らす交通弱者だ。こんなんでいいのか。

【Ocean Radio@2015】


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