サマータイムは労働強化につながるのか?

 サマータイムが導入されるとサービス残業が増え労働強化になる、だから反対、という声をよく聞く。ちょっと待てよ、といつも思う。

 そりゃ確かに、レジャー・サービス産業分野の人がそういう心配をするのは、わかる。ゴルフ場や公園が日没前に閉まっては、何のために日没を伸ばしたのかわからない。けれども、こういう分野を除く、通常のオフィスワーカー、工場労働者には、経営者が制度を悪用してサービス残業させようとしない限り、労働強化の心配はないと思う。なぜなら、1日24時間は変わりがないからである。

 たとえば、午前8時半から午後5時半までが就業時間の会社があったとする。拘束9時間、実働8時間という典型的なパターンだ。サマータイム導入で、この会社の就業時間は午前7時半から午後4時半までになる。ただし時計の表示は午前8時半~午後5時半で同じ。拘束時間が9時間である点も、何も変わらない。だから、午後5時半で退勤しても実際の明るさは午後4時半だから、じゅうぶん明るく、「アフター5」もたっぷり外で遊べる・・・。

 たとえばまた、この会社で働くAさんは終業後2時間の残業を日課とし、毎日午後7時半に退社していたとする。サマータイムが導入されても2時間残業は変わらない。すると、退社する時計上の午後7時半は実際には午後6時半で、外はまだ明るい・・・。

 サマータイムという制度は、単純に時計を1時間ずらすだけのことだ。1日24時間というのも、労働基準法が定める1日8時間の法定労働時間も、それを基準に定められた企業の就業時間も、あるいはそれに付随する残業の量・時間も、何も変わらない。だから、時計を1時間ずらしただけで「サービス残業が増える」「労働強化になる」という理屈は、どうもよくわからない。

 ただ、冒頭に「経営者が制度を悪用しなければ」と書いたように、サマータイムを逆手に取った就業時間の改訂が行われるなら、話は別だ。たとえば「サマータイム実施時は、当社の就業時間は午前8時半~午後6時半(実際は午前7時半~午後5時半)とします」というようなケース。始業は時計上の時刻、就業は実際上の時刻に合わせることで、実働9時間、拘束10時間にする。これで1時間分の残業代が不支給ならば、労基法違反であり、不利益変更でもあるから、こういう違法行為が野放しにされないように、社会がしっかり監視するしかない。

 ただし、職務命令ではない「自主的サービス残業」「なんとなく残業」は、起こり得ると思う。「まだ明るいからもう一軒得意先を回ろう」とか、「明るいうちに退社する気がしないんだよなー」というヤツだ。世の中成果主義がハバを効かせ、働いた時間よりも質と実績を問われる時代だから、こういうことは考えられる。日没を伸ばすことによる余暇機会の拡大は、イコール労働機会の拡大であるという側面が、確かにある。

 けれども、こういうモーレツ社員たちは、サマータイムがあろうとなかろうと仕事一筋で、もともと余暇の時間なんて持とうとしないのだから、私に言わせりゃ、心配したってしょうがない。交通事故が起きるからクルマを走らせるべきではない、と言うようなものだ。「日が沈むまで戦うぞ」というモーレツ社員たちの闘争宣言や、「サマータイムになったって、どうせ余暇時間なんか持てない」というひがみと、サマータイム制度による社会全体の効用を、一緒に論じるべきではない。

 このへんの事情は、サマータイム制度が広く国民に支持されているアメリカでも同じで、「週日に家族と夕食を取るような人間は偉くなれない」と言われているのだそうだ。にもかかわらず、多くの労働者が午後5時~6時に帰宅し、家族で夕食を取り、夏は夕食後のひと時を外で楽しんでいる。「仕事」「出世」とは別の価値観を、多くの人が持っているからだろう。

 サマータイムが労働強化につながるという理屈は、制度そのものをよく理解していないか、「オレは働くぞ」的なモーレツ社員の論法だと思う。終戦直後のように、ありとあらゆる資源が不足していた時代ならいざ知らず、「スローライフ」なる言葉がもてはやされる21世紀に、日没を遅らせたら労働強化、なんていう単純な理屈には、反論を通り越して、何とも寂しいなぁ、と私は思ってしまう。

 日没を遅らせ、実質的に増えた日照時間は、仕事に使うことも余暇に使うこともできる。時間をどう使うかは、その人次第である。

この記事へのコメント

通行人
2018年08月12日 16:57
労働強化につながるだろ

帰ろうとすればバカ上司が思いっきりいやな顔するわけで…

働き方改革の逆行は確実ですよ()

労働強化はブラックの繁栄につながる

ソコ理解できない方が問題
ああああ
2018年08月20日 18:58
悪用されるから労働強化だね。
早出の2時間サービス残業が増えるだけ

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