■今もトップガン人気~海軍兵学校

画像 日本の防衛大学校に相当する、海軍の士官養成学校。「海軍兵学校」という名称は、戦前日本にもあった「帝国海軍兵学校」に倣った訳語で、日本語でも定着していることになっているらしい(U.S. Naval Academyを辞書で引くと「米海軍兵学校」と出てくる)が、海軍の士官養成という役割、高卒で入学という学齢、一般大学と同じ4年の就学期間を考えれば、「海軍大学校」あるいは「海軍大学」と称するのが実態に近いのではないかと思う。(戦前日本にも海軍大学校があったが、今でいう大学院教育を担当していた)

 会議室で、International Program Directorから、USNA全体の説明。自衛隊の幹部養成と比較すると、その思想の違いが見えて大変興味深い。


画像 学生数は4500人、1976年から女性の入学も認められ、現在は20%が女性。ファカルティ(教員)スタッフは500人。制服組と民間人が半々。制服組は全員MA(修士号)を持ち、民間人はすべてPh.D(博士号)保持だという。陸・空軍の士官学校のファカルティは大多数を制服組が占めるのに比較し、これを際立つ特徴なのだそうだ。海軍または海兵隊の前線で勤務する士官を養成するのが目的。軍医、法務士官(弁護士)、主計士官などになる者もいるが、割合は非常に少ない。海軍士官として「morally」「matually」「physically」な教育を施すのだという。卒業後は、40%がパイロット養成所(24か月)、22%が海兵隊学校(12か月)、原子力潜水艦学校が11%(15か月)、特別任務が4%で、残りは水上艦勤務(航海士、機関士など)に付く。また、大学院へ進学する者が8%、医学校進学が1.5%いるという。卒業後の進路は4年時に決まるが、95%が第2希望までにおさまるのだそうだ。

 ほとんどの学生がパイロットを目指して入学してくる。なぜなら映画「トップガン」を見ているからだと。「トップガン(1986年)が未だに高校生に影響を与えているとは信じ難いが、現実にそうだ」と話して笑っていた。

 ちなみに、海軍には毎年2500人の新人士官(少尉)が供給されるが、海軍兵学校卒はそのうちの約1000人。他は、一般大学に併設されたNROTC(Naval Reserve Officer Training Corp.)から1000人、一般大学卒業生に士官教育をする士官候補生学校(Officer Candidate School = 17週間)から500人だという。自衛隊も一般大卒の幹部候補生コースがあるが、上級幹部はすべて防大卒が占める。このへんからして、事情がまったく違う。

画像 大学は2期制、8~12月の秋学期と1~5月の春学期、それぞれ15週。夏(6~8月)は艦隊や潜水艦で実習任務に付く。カリキュラムは、航海や戦闘、体育など海軍士官としての基礎科目と語学や数学などの一般教養科目、そして専攻科目。エンジニアリングやコンピューターサイエンスなどの理系専攻が8割、英語学や政治学など文系科目が2割だが、学位は全員「Burchelor of Science」だという。授業は1回50分で1日午前4時間、午後2時間。各学期18単位を履修する。911テロ以後、外国語と国際情勢の理解がより重視されるようになった。

 興味深いと思ったのは、「我々が重視するのはTraining(訓練)ではなくEducation(教育)だ」と述べていた点。同席していた教授の一人がこう説明した。「訓練とは決まった形があり、それをマスターして行くこと。教育は、よりプロセスを重視する。結果がいつも同じとは限らない。テーマについてじっくり考えること。我々の目標は、Thinking Warriorを作り出すことにある」。そして、「陸軍、空軍の士官学校はより訓練を重視する。我々は教育を重視する」と敢えて述べるところに、ライバル意識が感じられた。

 訓練よりも教育を重視と言うが、その中身は、1年次に入学するのはおよそ1200人。そのうち15%が最初の2年で退学すると言うのだから、生半可な厳しさではないということが、レクチャーに続いて行われたキャンパスツアーでよくわかった。

 まず、学校本部のある建物で見せられた学生居室のモックアップ。2人一部屋でペアを組むのはアメリカではどこの大学でも同じだが、驚いたのがそのルール。起床後はベッドのシーツ・毛布を、ホテルのベッドメークのようにびしっと折りたたむ。服かけや物入れでは、何をどこにかけるか、どこに収納するか、靴下の畳み方まですべて決まっている。朝、昼、夕、食事の前には必ず「Formation」と呼ばれる集合・行進がある。びしっと並び、いろいろな掛け声にすべて「Yes, sir」で答える。

 学生食堂があるメインホールに行ったら、昼食のためにちょうどこれをやっていて、50mほど離れた場所で、大声で叫んでいるのが聞こえた。夏休み中(もっとも、学生は洋上実習などに出るので正確には休みではないが、学期の授業はない)なのでキャンパスにいる学生は10分の1以下らしいが、それでも100~200人の学生が、あちこちで集合していた。こういうFormationを組んだ後に、太鼓に合わせてメインホールに向けて行進するのだという。

 ガイドをしてくれた広報担当の士官(中尉?2002年卒業だそうだ)によると、学生は12人で1班を組み、上級生が下級生の指導に当たる。学生はその日の朝、昼、夕食と翌日の3食のメニューを暗記しておかねばならず、また、それぞれの食事のために政治、経済、スポーツの3種類の新聞記事を読んでおき、食事の席でそのサマリーと感想を述べなくてはならないそうだ。さらに、食堂内で学生は普通に歩いてはいけない。常に膝、踵をびしっと上げて行進し、曲がる時は決められたやり方で90度ターンをする。軍隊生活で、食事は数少ない楽しみの一つだと思うが、これではとても気が抜けそうにない。

 来る途中に機内で読んだ「ルポ・貧困大国アメリカ」の中で、米軍のブートキャンプ(新兵訓練所)がいかに過酷かというのが書かれていた。人間性を否定し、機械のように動く人間を作り出すという点では、一兵卒も士官候補生も大差ないと思った。それは軍隊という機関が、人を殺すという本質的な人間性に反することを行動原理としているからであろう。ファカルティに半分民間人を入れ、訓練ではなく教育を主体にしていると聞いた時には、米海軍はたいそう立派な士官養成をやっていると思ったが、その本質において軍隊はやはり軍隊である。

 レクチャーの最後に、ここに入るのにどれくらいの競争率なのか質問したところ、およそ10倍なのだそうだ。





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中村 悌次

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    Excerpt:  前々から気になっていた映画「空へ~救いの翼-Rescue Wings-」を、ようやくDVDで見た。 Weblog: 旅するデジカメ・札幌発<見る・残す・伝える> racked: 2010-04-25 22:25
  • Excerpt: 「私たちが重視しているのは教育です。訓練じゃない。訓練とは決まった形をマスターすること。教育は、じっくり考えるプロセスを重視し、結果がいつも同じとは限らない。両者はまったく質の異なるものです」 Weblog: 旅するデジカメ~札幌発東京定住日記 racked: 2014-11-22 15:07
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