北海道人である私がサマータイムに賛成するワケ

 しつこく書いているように、私はサマータイムに大賛成だ。世間じゃ反対論や慎重論が幅を利かせるこの制度を、なぜこうも賞賛するのか。海外でサマータイムを経験し、その良さを体感していることがまずあるが、よく考えてみるともう一つ、私が生まれも育ちも北海道、国内では北海道でしか暮らしたことがないことが、大きく影響しているのだと思う。

 まず、北海道の気候的な特色を簡単に紹介しておきたい。いま私が暮らす札幌の場合だが、年間の平均気温は8.5度しかない。仙台(12.1度)、新潟(13.5度)、松本(11.5度)など、比較的涼しいと思われている地域よりも、ずっと低い。屋外で寒いと感じずに過ごせる気温は、最低気温10度が一つの目安だが、札幌で月の最低気温の平均が10度を上回るのは6~9月の4か月、1年の3分の1しかない。仙台だと5~10月、東京以西の主要都市だと4~10月の7か月は最低気温の平均が10度を上回るのに比べれば、極端に短い。年間の日照時間は、札幌で1750時間。新潟(1651時間)、秋田(1597時間)など日本海側の都市よりは長いが、仙台(1843時間)と比較すると93時間短い。一日の可能日射時間が12時間だとすれば、まったく日が照らない日が仙台に比べて1週間多い計算だ。ちなみに、人口100万人以上の大都市で比較すると、札幌は日照時間・日照率ともに、全国最低である。もちろん、札幌が北海道の気候を代表しているわけではないのだが、全道に14ある支庁の拠点都市の平均気温・日照時間を平均すると、それぞれ7.5度・1730時間と、いずれも札幌より値が低い。つまり北海道は、日本の他の地域に比べて圧倒的に寒く、そして日が照らないのだ。(日照時間の全国主要都市比較を除く数値はいずれも、1971-2000年の平均。気象庁データベースより)

 こういう気象条件だからこそ、5月から9月までの暖かい季節、屋外で快適に過ごすことができる季節の日照は貴重なのである。西日本に住む人にとっては太陽、特に夏の太陽はギラギラ地面を照らして暑さだけをもたらす厄介者かも知れないが、北海道人にとっての太陽は、大切にすべき、文字通り「天の恵み」だ。だから、日照を有効に使うことができるなら、時計を一時間ずらすくらいなんてことないと考えるのである。北海道でサマータイム実験が行われたとき、条件付きも含めれば賛成が圧倒的だった。これこそ、北海道人の太陽への渇望感から出て来た結果ではないかと思う。

 サマータイムに反対する人が西日本に比較的多いのは、これとはまったく逆で、暑くて目障りな太陽をこれ以上のさばらせておくなど冗談じゃない、と言うのがホンネなのだろう。それはそれで、よくわかる。世界を見ても、サマータイムの実施国は中緯度以北がほとんどで、赤道に近い熱帯圏では皆無だ。日本は、緯度としては中緯度の温帯だが、東京以西の夏の気候は熱帯と変わらない。こんな気候でサマータイムなど迷惑千万、と言われれば、確かにそうだろうと思う。

 ここまで考えると、東西南北に長く広がる日本列島を一つの標準時で統治しようとすることに無理がある、という月並みな結論に落ち着いてしまう。たとえば、札幌と福岡は東西の距離は約1070キロ離れていて、夏至の前後になると札幌は福岡よりも1時間以上昼間が長くなるが、日の出が3時55分前後という早朝なので、せっかくの日照を有効に使うことが出来ない。

 だいたい、日本全国を一つの標準時で通すというのは、中央集権には効率的であろうが、庶民の生活実感からすれば弊害の方が大きいのではないかと思う。サマータイムを北海道だけ実施すればいいじゃないか、という意見が出るたびに出てくる反論は、「本州の拠点とのやりとりに時差があると困る」というものだ。しかし、本州と同時刻で働かなくてはならない人は大企業の一部だけで、地域完結型の産業に従事する人にとっては、本州とどれだけ時差があろうと、仕事に影響はほとんどないのではないだろうか。私も、東京とのやりとりは仕事上比較的多いが、「向こうが電話をしてきたときに、こちらが帰宅しているケースが増える」という以外にそれほど不便な点は思いつかない。主婦や学生、高齢者は、そもそも本州に住む人たちと時間を合わせて何かをする必要性が、ほとんどない。困るのはテレビやラジオの全国放送くらいではないだろうか。

 サマータイムのメリット、恩恵が東日本と西日本、あるいは北海道とその他の地域で大きく異なることは、上にも書いた。であるならば、北海道だけのサマータイム、あるいは北海道だけ標準時を1時間ずらす、というようなことをもっと本気で考えてもいいのでは、と私は思う。社会全体の効率性よりも個人のシアワセ、過ごしやすさを大切にする社会を目指すとすれば、そういう方向性もありでは、と思う。

【参考ブログ】
日の出・日の入り・昼の長さ




Ocean Radio@2011

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック