ジャンボ機は本当に「燃費が悪い」のか?・・・JALジャンボついに完全引退

画像 JALのジャンボ機B747が、きょうホノルルから成田に到着した便をもって、ついに完全引退した。ラストフライトや記念ツアーの様子が、多くのメディアで取り上げられていた。けれども、引退の理由を「燃費が悪いため」などとしている記事が未だに多いのには、「違うんだよなぁ」「わかってねぇなぁ」という思いを強く持った。JALからジャンボが退役するのは、燃費の悪さが第1の理由ではない。

 考えてみよう。JAL国内線仕様のジャンボ機B747-400Dの定員は、546人を乗せることができる。燃費が良いともてはやされるB777-200は375人、B767-300は261人、B737-800は165人しか乗せることができない(いずれもJAL国内線仕様)。機体が小さく定員が少なければ燃料消費が少ないのは当たり前だ。定員500人のB777-300が、ようやくB747-400D並みの輸送力ということになるが、それでも-400の差は学校の1クラス分に当たる46人。繁忙期や団体客を扱うときは、定員は大きければ大きいほどいいと、エアラインの営業は言う。

画像 これらの航空機が実際にどれくらい燃料を使うかを比較するには、ANAが公開している資料がわかりやすい(アジアNo.1への基盤となるフリート戦略)。これによれば、B747-400DとB777-300で、羽田~千歳を満席で飛ばした場合の燃費を比較すると、B7が12%燃料消費が少ないのだという。しかし、B767-300と比較すると、燃費はいい勝負。そして、B747-100やL1011トライスターなどの旧世代機と比べると大幅に燃費は改善されている。満席にするという前提ではあるが、1人当たりの燃料消費を比較すれば、-400の燃費が特別悪いわけではない。(下表)
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B747-400の燃費はB767と同レベル
 エアラインの運航関係者に聞いた話だが、1割程度の燃料消費の違いは、何時間も飛び続け、燃料を焚き続ける国際線ならともかく、国内線なら誤差の範囲でしかないのだという。上空待機や空港混雑による離陸待ちなどで消費される燃料の量はたちまち変わってくるからだ。逆にB747-400でも、フラップ角度を浅くしたり、着陸時の逆噴射を最小限にする(リバース・アイドル)、着陸後に1エンジンをカットするなどの省エネ策を重ねれば、数%の省エネはすぐにできる。ジャンボ機の燃料消費が問題だと言うなら、B767も同時期に退役しなければおかしいが、JALもANAも毎年B767の新造機を導入している(B787の引渡し遅れが理由だが)。満席ならば、ジャンボ(ハイテクタイプの-400型)の燃費は相当に優秀というのが実態で、実際ANAは、国際線からはB747を退役させたが、国内線ではまだ当分使う。B747-400をリニューアル・延命させて長距離国際線で使うエアラインも、海外にはある。

 JALがB747を退役を急いだ理由。それはまず、国際線の大リストラで大型機が余剰になった、ということがある。それから、羽田~新千歳や羽田~那覇などB747投入路線で競合相手が増え、利便性を上げるため増便の必要性に迫られたこと。全体のパイが大きく増えたわけでもないのに便数を増やせば、一便あたりの乗客は減るのは当然で、B747を満席にすることが営業戦略上難しくなってしまった。チケット安売りで大型機の座席を埋めるよりも、適正運賃を払う客だけを小型機で運び利益率を上げるべき、という金融屋的発想が幅を利かすようになったこともある(旅行業界は、JALが団体格安チケットを卸さなくなったと悲鳴を上げている)。そして何より、税金投入や借金棒引きなどの巨額な金融支援を受けた見返りに、「JALの象徴」であるジャンボ機をリストラして見せる必要があった、という政治的理由が大きい。「燃費が悪い」だの「効率が悪い」だの「古くなった」だのと言うのは、後付けにすぎない。「効率」を言うのなら、需要のある幹線は便数を減らしてでも大型機を使い、多くの乗客をまとめて運んだ方が空港や空域の混雑を軽減できずっと効率的なのだが、現在のJAL経営者にはそういう大局的な見方ができる人がいない。

 世界に目を向ければ、B747-400は、ブリティッシュ・エアウェイズの50機を筆頭に、キャセイパシフィック45機、大韓航空42機、チャイナエアライン32機など、多くのエアラインで今も現役だ。航空需要が伸び続ける中、ジャンボ機の輸送力は今も必要とされているということが、この数字からわかる。ジャンボに見切りを付け、小型機・中型機路線に舵を切ってしまったJALは、自らの決断を後悔する日が来ることはないのだろうか。

那覇から成田空港に到着するJAL B747-400最終便 JL3098


ホノルル発最終便 セレモニーの様子






Ocean Radio@2011

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この記事へのコメント

nomonomonomo
2011年03月06日 09:41
貴重なご意見お聞かせいただき、勉強になりました。同感する部分と、いやちょっと愚見はちがうかな、という部分がいろいろあります。
1.747引退は、政治2割、技術(経費削減)8割ぐらいではないでしょうか。需要がないので、大型機は損なのです。
2.767は失敗作ではないでしょうか。だから、ボーイングは787を造っているのです。
3.BA等が747を使うのは諸般の事情からで、単独な効率性(燃費等のコスト)からいうと、使いたくないのではないでしょうか。古い機体は整備にもますますコストがかかります。
4.「燃費1割の差は誤差範囲」という主張には賛成できません。ボーイングのDirect Operating Cost (DOC)の補償の重要性を認識していない’素人考え!’(敢えていいます)だと思います。ボーイングは自分が補償した性能が出なかったら、エアラインにペナルティを払うのです。
愚かな意見でもうしわけありません。またよろしく。
2011年03月06日 16:49
たまにTBさせてもらってます。飛行機だってタダじゃないんですから、787が出るのを待つ、あるいは777が値段が下がるのを待つ、というのも一つですが、性急に747-400の淘汰を急ぐのは、良い機会から747-400関係の人を斬ってしまおうって魂胆なのかも知れません。
あと747-400いらない子化としては伊丹乗り入れ不可というのもあるかもしれませんね。
海ラジ
2011年03月07日 00:42
、憑かれた大学隠棲さん、コメントありがとうございました。

>nomonomonomoさん

 航空機の燃料と維持経費に対する見方は、同じエアラインの中でも、営業、運航、技術(整備)など立場が違えば違う見方をするものですから(だから航空会社の経営は難しいのですが)、ご指摘の点も事実かも知れません。

>憑かれた大学隠棲 さん
 B7の価格がそう簡単に下がるとは思いませんが、B4を廃止してB7を買うくらいなら、B4を使い倒す方がコスト的には安上がりのはずです。中古品としての価値がないものは、使い倒すのが最も得なのです。かつてJALでは、リセールバリューのあるMD-11は早々に売り飛ばしたものの、DC-10はとことん使いました。B4も、そういう使い方をするだろうと思っていたのですがね・・・。


五月原清隆
2011年03月08日 00:33
通りすがりです。

B747-446は、ベリー容量でB777-346ERに劣りますから、ETOPS180が実用化され出した時点で、国際線の第一線から退いていく事は既定路線だったと思われます。じゃあ、フレイターはって事になると、抑も貨物事業自体から撤退してしまいましたからね。
本来なら、そんな状況でもリゾート路線を中心にB747-446で観光客を大量輸送という使い方はあったのですが、JJ合併の頃からリゾート路線は大粛清の連続ですから、単なるお荷物機材になってしまったんでしょう。
※たったの10年前まで、札幌=ホノルルがデイリーでしたからね。

一方のB747-446Dですが、こちらはJJ合併で完全に余剰機材となりましたね。幹線の便数が一気に増加したんですから、幹線でしか使えないB747-446Dが行き場を失うのは当然の話です。伊丹への乗り入れ規制が始まる前ですら、羽田=伊丹のB747-446D運航便は1日3往復程度しかありませんでしたから。
seafort@tbt.t-com.ne.jp
2011年03月08日 22:16
どなたか、ジャンボ747の燃料消費量、時間でも、距離でもよし、教えて戴けませんか、又は詳細の分かる書籍でも有れば、お教え願いたく、宜しくお願い致します。 ss
海ラジ
2011年03月09日 01:11
>seafort@tbt.t-com.ne...さん

航空機の燃料消費を客観的な数値で表した資料はなかなかないのですが、チャイナエアラインのHPによれば、3230ガロン/毎時とのことです。

http://www.china-airlines.com/en/check/service-3-1-4.htm

また、ボーイングのHPでは5ガロン/マイルと書かれています。

http://www.boeing.com/commercial/747family/pf/pf_facts.html

もっとも、これらも参考値にすぎません。気象条件や飛行ルートで、燃料消費は大きく変化しますので。

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