自国の領有権をどんなに強行に主張しても何ひとつ良い方向には行かないだろう

 4年前の研修訪米のことを前項で書いた。アメリカ国務省丸抱えの国際リーダーシップ研修、要は世界各地に様々な職業レベルの知米家(親米家とまでは言わずとも)を増やすことがアメリカの国益につながる、という考えの元に行われているもので、駐日アメリカ大使の推薦をもらってこれに参加できたことは非常にラッキーだった。

 このときはアジア人6人(日本人は私1人)のグループで全米4箇所を3週間かけて回りながら、外交・安全保証をテーマにいろいろな施設機関を訪問してレクチャー・ディスカッションを重ねてきたのだが、このときの同じグループに、台湾の軍事専門誌の記者、Erich Shiさんがいた。互いに関心の領域が近く、英語がうまく通じたこともあってすぐに仲良くなり、休日にはレンタカーでドライブするほど親しくなったのだが、一点だけ彼と意見が鋭く対立したのが、尖閣問題だった。当時の日記にも書いたのだが、ついでに採録しておこう。

魚釣島の領有をめぐり、台湾人のアリックは熱い。「あれは間違いなく、大昔から台湾のものだった。しかし戦後アメリカが周辺を支配し、沖縄の一部として扱ったものだから、沖縄返還と同時に日本のものになってしまった。魚釣島は台湾からより沖縄からの方が4倍も遠い。台湾が本気になってF-16を送りこめばあっという間に支配できるが、アメリカがそれをさせないだけ。そして悩ましいのは、いま日本から魚釣島を奪うと、それは魚釣島が中国本土に帰属することを意味する。台湾人にとって、それだけは避けたい・・・」。うーん、熱いぞ。魚釣島に関してあまり勉強しておかなかったことを、かなり後悔した。


 魚釣島のことを、当時は英語で「Fishing Island」という単語で話していた。魚釣島の直訳だ。韓国が島根県の竹島のことを「独島」と呼ぶような、台湾式の呼び名はないらしい。日本人の命名を英訳でそのまま使っている時点で日本の領有を認めているようなものじゃないか、と今なら突っ込めるが、2008年当時はそこまで考えが及ばなかった。それにしても、記録を読み返すと、尖閣諸島をめぐる台湾人の意識も、それはそれで面白いものだな、と思う。「アメリカが沖縄と一体で尖閣を支配したため、沖縄返還と同時に日本のものとなった」「本気になればF-16でいつでも奪還できるが、アメリカがそれをさせない」「いま尖閣諸島が日本の領有を離れると、中国のものになってしまう、それだけは避けたい」。複雑な感情が入り交じっているのが、よくわかる。

 日本が、自国の領有権をどんなに強行に主張しても、たとえそれが国内的にはどんなに正当性があろうとも、事態は何一つ良い方向に行かないだろうな、と改めて思う。




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