【クルマ購入記】クルマ買取専門店に査定を依頼すると・・・

 時系列が前後してしまうが、今回の自家用車買い替えのためにクルマ買取専門店とやりとりした顛末も、記録しておこう。

 クルマ買取専門店とは、ディーラーによる下取りとは異なり、クルマ(中古車)をユーザーから引き取る(買い取る)ことを専門にしている企業だ。買い取り業者とも呼ばれる。中古車店を併設していたり、中古車流通ネットと提携していたり、引き取った車を右から左にオークションに出して利ざやをかせいだり、引き取った車両の処理方法はいろいろだ。一般論としてだが、新車購入と引き換えにディーラーに下取りに出すよりも、買い取り価格は高価になると言われている。

 どんな商取引でもそうだが、高く売ろうとすれば、複数業者から見積もりを取るのが鉄則である。インターネット上の買い取り価格比較サイトなんてのもあって、さかんに宣伝もされている。そんなサイトの一つに見積依頼を入れたのは、3月の末くらいだった。その一月前に車検を通したばかりでもあり、まだ買い替えを具体的に考えていたわけではないが、現時点での自分のクルマの価格がどの程度なのかは、把握しておきたいと思った。

 車種、年式、走行距離を入力すればおよその査定金額が無料で表示される・・・という触れ込みで、指示通りに入力したが、出てきた金額はなんと「2万円」。年式から判断できる最低の金額が自動計算されるのだろう。こんなんじゃ、参考にも何もならない。「詳しい価格は、各買取会社から連絡させていただきます」と。なるほど、半分予想はしていたが、こういう無料査定サイトは、加盟する各買取会社に顧客の情報を流すためのポータルでしかないわけだ。

 「このたびは、インターネットからの査定見積もり依頼ありがとうございます」。翌日から、こんな感じで電話の嵐となった。7~8社からかかって来ただろうか。相手の言うことは、ほぼ同じ。「お客様のレガシィツーリングワゴンは非常に人気の車種で、高額査定が予想されます」。「まずはおクルマを見させてください。実車を査定しないと正確な金額は出せません」。「査定金額は、中古車市場動向で日々変動します。売る予定があれば、早めの査定を」。その通りだろうな、とは思う。中古車は1台1台、状態が違う。キズやらへこみやらもあるし、オプションなど装備品も違ってくる。実車を見ないと金額が出せないというのは、至極当然だ。けれども、この時点では買い替えはまだ先と考えていたし、売る気がまったくないのに査定士を呼ぶのも、向こうもこっちも時間の浪費だ。そこで、「今すぐ売るつもりはありませんから、実車の査定は結構です。現時点での査定目安を教えてください」と言う。「電話ではお伝えできません」と言ったところも1~2社あったような気がするが、ほとんどが電話で教えてくれた。その金額が「20万」から「70万」まで、見事にバラバラ。最も高い金額を言うところもあれば、想定し得る最低の金額まで、どのレベルの金額を出すかはそれぞれの社の考え、ということだろう。同じクルマ、同じ年式・走行距離でも状態によって何十万円も査定金額が違う、というのはわかる話なので、これはしょうがないと思った。結局、自分のクルマのある程度正確な換金価値を知りたいと思ったら、実車を見せて詳しい査定を受ける以外には方法がないということだ。それにはそれなりの覚悟がいるし、何よりも時間がかかる。

 実際に私のクルマ、2005年式のレガシィツーリングワゴンを買い取り業者に出すとすれば、どれくらいの金額になるだろう。自分なりにシミュレーションをしてみた。まず、ネット検索で、市場に出ている同車種・同年式の金額を調べる。ほぼ同じ走行距離5万キロで、95万円から120万円くらい。カーナビやパワーシートなどプラスに評価される要素もあるが、慎重に見て中古車価格は100万円だとする。しかし、私の車は外も内もそれなりに傷みが来ている。ボディやバンパーはあちこちにキズがあるし、ショックアブゾーバや集中ドアロックは壊れかけている。バッテリーやタイヤは交換が必要だ。それらを修理交換し、中古車として売物になる状態にするのに30~40万円はかかるだろう。買取業者と中古車販売店の販売経費・利益が合わせて20万円だとすると、40~50万円で引き取ってもらえたらラッキー。破損状況の判定次第では30万円くらいか、という計算は成立した。すると各買取業者が電話で言っていた「70万円(=要修理箇所がほぼゼロ)」から「20万円(=大掛かりな修理が必要なケース)」というのも、それなりに根拠がある金額と思えてきた。

 こうして、査定サイト経由で連絡してきた買取業者のうち何社かは、その後も継続して電話をしてきたと思う。詳しくは記憶していないが、3社くらいは数週間おきに電話をかけてきて、「買い替えの予定は決まりましたか?」みたいなことを聞いてきた。仕事熱心なものだが、彼らにとっては中古車はそこまでして仕入れたいものだということなのだろう。最も熱心だったのは、川崎にあるB社のTさんという営業マン。ほぼ2週間おきくらいに電話をよこし、しまいには暑中見舞いのハガキまで送ってきた。根負けというわけではなく、スバルやVOLVOのディーラーで予備的な商談を進める中で、やはり買い換えようという意志が固まってきた段階でもあったので、一度呼んで査定をしてもらうことにした。

 7月上旬の土曜日午前、約束の時刻ちょうどにTさんがやってきた。20代前半の男性、九州出身でこの春入社した新人なのだそうだ。挨拶の後、まずはアンケート、と言うより病院の問診表のようなシートを書かされた。走行距離や用途、事故の有無、装備、純正(メーカーオプション)か社外品(ディーラーオプション)か、などを細かく記入し、最後に希望買取金額を書くようになっている。これから査定を受ける側が希望金額を伝えるのも変な話だが、前述のように、だいたい30~50万円、という予想は立てていたので、60万円と書いて渡した。するとTさん、「だいたい妥当なところじゃないでしょうか。いい値段が付くよう、頑張ります」。期待を持たせるようなことを言ってくれる。

 査定は1時間ほどかかると言うので、そばで見ている必要も無いので家の中で待った。約1時間後、「ひととおりおクルマは見させていただきました」というので外に出ると、いくつか質問があるという。「買い替えはいつですか?」「弊社にお売りいただくとして、いつ引き渡していただけますか?」と。彼らが算出するのは、あくまで「現時点」での相場に基づいた価格だから、何週間先に引渡しと言うのでは、そこで相場は動いてしまうので価格は出せない、と。わからない話ではないが、こちらはまだ買い替えを決めたわけではないし、決めて新車を商談し、すぐに契約したとしても納車は1ヵ月半くらいは後になる。その期間、クルマが使えないのは困る。とは言っても、それではTさんも困るだろうから、「希望の金額プラスアルファなら、すぐに引き渡してもいい」と言った。「では、そのことも申し添えて、センターと交渉しますのでしばらくお待ちください」。

 そこから、1時間くらいは待っただろうか。暑いので、結果を待つだけなら家の中で冷たいお茶でも飲みながらどうぞ・・・と勧めたものの、謝辞された。社の方針で、客先の居宅には上がらないことになっているらしい。こっちは室内で、自分のことをやっていればいいが、暑い中外で待つだけのTさんは、けっこう辛いだろうに、と思った。

 ようやく査定が出たと言うので呼ばれてみると、Tさんは険しい表情だ。「お客様、ご希望の60万円は非常に厳しいです。半額の30万円でも厳しいです。センターは、現時点の価値は10万円、頑張っても12万円だと言っています。希望金額を下げていただけないでしょうか」。予想よりもはるかに低い金額に、こちらも驚く。「なんでそんなに低いんですか? 中古車なら100万円で売られているクルマですよ」と私。「過修は、査定金額が大幅に下がります。あのクルマは修復暦あり、つまり事故車と見なされてしまうんです」。「事故車」という言葉に私も思わず「えー!?」と言ってしまった。修理を要する事故など、あのクルマでは一度も起こしたことがない。

 「こちらを見てください」。Tさんが示したのは、後部の荷物室の下にあるサブトランクの内張りをめくった、フレーム部分。「トランクフロアと言うのですが、査定士はここを必ず見ます。ここのフレームに隙間が空いているのが見えますか?」とTさん。確かに、後部バンパーのすぐ前の部分に当たるボディの構造材の一部が少し前に出て、本来の位置にわずかな隙間ができているのが見える。「追突されたり、バックする際に何かに強くぶつかると、こういう痕跡が残ります。これは修復しても痕が残るので、修復暦アリと明示しなくてはならず、中古車価格が大幅に下がるんです」とTさんは続けた。私は言う。「けれども、追突されたりバックでぶつけてフレームまでやられるということは、最低でもバンパーが大きくへこむようなダメージを受けるでしょう。そういう事故や修理は一度もやってないんですよ」。Tさん、「確かに、バンパーは新車時から交換していないのはわかります。しかし、フレームは破損しています。バンパーを傷めないやり方で、後ろからじんわりと、強い力が加わったのではないでしょうか」。うーん、まったく覚えがないのだが、フレーム破損は事実。事故車と言われれば、低査定も納得するしかない。

 こういう金額が提示された以上、愛車をすぐに手放す理由も、B社に売る理由もない。Tさんにはすぐにお引取り願おうと思ったが、「もう少しセンターと交渉させてください」と言うので、待つことにした。わざわざ出かけて来ている以上、Tさんとしても「買い取り」という成果をなんとか上げたいのだろう。とっくに昼時なので、こちらはかまわず室内で、家族と食事を始めた。30分以上は経っただろう。Tさんに呼ばれて出て見ると「やはり、さきほどの10万~12万円というセンターの判断は変わりません。もし売却を決めて、すぐに引き渡していただけるのであれば、30万円になるよう交渉しますが、金額は今の時点では約束できません」。冗談じゃない・・・Tさんが熱心なのはよくわかるが、大事なクルマをそういう条件では引き渡すことができない。お礼を言い、帰ってもらった。訪問から2時間半が経過していた。

 たった1社の買い取り査定だが、要した時間は2時間半。Tさんが若く経験不足ということはあるにせよ、この時間消費の多さに、まずは驚いた。当然、この間はクルマが使えないし外出もできない。これじゃ、どんなに頑張っても1日3社が限度。買い取り業者から何社も見積もりを取る、なんてことはよほどヒマじゃない限り無理だな、と思った。それから、クルマの引渡しと買い換える新車の納車時期のズレ、というのも問題だ。これは人からも聞いたことがあるが、買い取り業者は例外なく、即引渡しを求めて来る。あるいは、即引渡しを条件に買い取り金額の上積みを提示してくる。しかしこちらは、前のクルマの現金価値が固まらないと新車購入の資金計画が立てられないから、そっちの商談も進められない。買い取り金額が決まり、車両を引き渡し、その後新車を契約となると、納車まで1ヵ月半はかかるから、その間はクルマが使えないという不便なことになる。ディーラーによる下取りなら、納車されるその日までは前のクルマが使えるわけで、その差は大きい。

 ディーラーが下取りを拒否するほどの古いクルマか、新車をまるごと即金で買えるくらいの資金の余裕がない限り、下取り業者は使いづらいな、と思った。前のクルマの売却代金を次のクルマの原資の一部にしようと考えているなら、下取り業者がよほどの高い金額を付けない限り、ディーラー下取りの方が便利ではないだろうか。実際に今回は、東京スバルに下取りを依頼して、15万円(初回提示は10万円)だった。B社のTさんに下取りしてもらえば17~18万円の値は付いたのかも知れないが、それくらいの差であれば、引渡しから新車の納車までクルマを使えない不便さをトレードオフするほどではないと判断した。

 出張買取業者について思ったことが、もう一つある。ネットやラジオなどで買取価格比較サイトがあれほど宣伝されているところを見ると、買取業者には相当な数の問い合わせが行っていると思う。それらの中からどれくらいが、実際に現車査定まで進むのかどうかはわからないが、今回の私のように、何時間をかけて査定しても買取までは行かない、ムダ打ちがかなりの数あるに違いない。買取成立1件につき、査定は5件とか10件とか、そんな感じじゃないだろうか。すると、1件の買取金額には、そういうムダ打ちにかかった費用がすべて含まれている(経費として本来の査定金額から天引きされている)ことになる。そういうムダをやっておいて、ディーラー下取りよりも大幅に高い金額を提示できる、という風説は、ちょっと虫が良すぎると思う。

 東京スバルで契約した数日後、B社のTさんからまた電話がかかってきた。「おクルマは、その後どうすることにしましたか?」と言うので、「ディーラーと商談中です。まずますの条件なので、そこで決めると思います」と応えた。「ディーラーはおいくらで、ですか?」と聞くので、若干サバを読み「20万円です」と伝えた。B社が東京スバルよりも好条件を出すなら下取りは中止してもいいという下心が、少しはあった。するとTさん、「そうですか~」と、がっかりした声。それきり、電話はかかって来なくなった。20万円を超える金額で買い取る目論みも成算もなかった、ということだ。





Ocean Radio@2012



この記事へのコメント

この記事へのトラックバック