テレビ局削減論

画像 「テレビ局削減論」なる刺激的なタイトルの本を読み終えた直後、総務省の廊下を歩いていたら、官僚たちがこんな話をしているのが聞こえた。

 「民放テレビ局の合併促進? 絶対やらないよ。テレビ局の削減だ? 冗談じゃない。もっと増やしたいくらいだよ。合併させて数が増えたら、競合相手が減ってテレビ局の経営が盤石になるじゃないか。それじゃ困るんだよ。そんなふうになったら、やれ報道の自由だの権力の監視だの格好つけたこと言って役所のやることにケチをつけてくるに決まってる。昔はかなり生意気だったのが、広告不況で報道番組やら制作費やらを減らしたおかげでようやくおとなしくなったんだ。前のようにやられちゃたまらんから、合併で足腰を強くするようなことはさせないんだよ。テレビなんて、バカな食い物番組とタレントショーと通販だけ流してりゃいいんだよ。ジャーナリズムなんて息巻かれたら、うっとおしいだけだよ。今のままじゃ潰れるテレビ局が出てくる? そんなわけないだろ。オレたちが許認可握ってるんだよ。潰さないよ。その代わり、儲けさせないよ。どんなにつまらん番組でも貧乏な暇人はタダで見れる地上波テレビを見るしかないんだから、最低限の広告収入は入る。それで制作費下げて人件費もがっつり下げれば、潰れるところまでは行かないさ。テレビ局は、儲からないけど潰れない、そんなふうにしとけばいいんだよ」。

 上記の「官僚談話」は完全な作り話である。だが、本書で語られているテレビ局「削減論」に対して、国の腹づもりは恐らくこんなところではないかと私は思う。さらに付け加えるなら、合併でテレビ局が減ることは放送免許の交付先が減ることを意味し、それは監督官庁(各地方の総合通信局)の権限低下につながる。役人は、自分たちの権限(権益)が小さくなるようなことは、進んでやりたがらない。

 広告費のネットシフトが続き、総視聴時間(HUT)も下がり続け、テレビの媒体力が落ちる中、合併でテレビ局の足腰を強くしないとメディアとして生き残れないという著者の意見には、私は賛成だ。視聴率低下による広告収入の低下が制作費削減をもたらし、さらなる視聴率低下をもたらすという負のスパイラルに陥りつつある、という指摘には意を同じくする。

 が、当事者の局には「合併論」「削減論」に乗るつもりは、ありそうにない。現実的にはそこまで経営が悪化しているわけではないから。不動産だの映画製作だの放送外収入で稼げるだけ稼いで、本業のテレビはどんなにつまらない番組を垂れ流していようとも、合併される側だけには回りたくない、というのが民放経営者のホンネだろう。こういう場合、銀行合併のように監督官庁が強力な指導力を発揮しない限り業界再編は進まないが、役所の心中は上に書いたようなもので、総務省にも内閣府にも、その気はないだろう。

 かくして、メディアとしてのテレビの弱体化は際限なく進むことになる。







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