「急行はまなす」最後の旅【3】・・・「はまなす」が廃止される本当の理由

画像 はまなすの廃止は北海道新幹線開業によるものと説明される。具体的には、青函トンネルを含む海峡線(木古内~蟹田)の電圧が新幹線電車用に昇圧され、JR北海道が保有する現在の電気機関車(ED79)では運転できなくなる点だ。トンネル自体は在来線との共用のため客車の通過には支障がないが、機関車だけは新型が必要になる。同じくトンネルを通過する貨物列車を運行するJR貨物は新型式の電気機関車を導入するが、はまなすだけのために新車を導入できる余裕は、JR北海道にはない。JR貨物にはまなすの牽引を依頼したものの断られた、という話もある。

画像 それともう一点、JR側は積極的に説明しようとしないようだが、車両の老朽化ということも見逃せない。はまなすに使用される14系客車はすべて1970年代の製造。多くが車齢40年を超えている。ディーゼルや電車特急ほど走行距離がかさまないためこれほどの長きにわたって使われたということだろうが、常識的に考えて、物理的な限界が近いことは間違いないだろう。内装の陳腐化は改修である程度はアップグレードできるが、外装や構造体の老朽化に対しては、できることは極めて限られる。前々から気づいていたが、車体の塗装の傷み具合などは新幹線や本州の在来線列車ではあり得ないレベルのもので、最小限の補修でだましだまし使い続けてきた、というのがよくわかる、痛々しいものだった。

画像 老朽化という点では、客車を牽引するディーゼル機関車(DD51/札幌~函館)、電気機関車(ED79/函館~青森)も同じで、どちらも1970年代半ばの製造だ。ED79は1970年代製造のED75を青函トンネル開業時に改造し、別型式としたものである(新型式を開発・導入する余裕がなかった)。客車ともども限界が近いことは間違いなく、青函トンネル内の電圧問題もあいまって、廃止の判断を後押ししたのだろう。客車、機関車ともに、はまなすの運転終了後は廃車解体か、海外に売却されるものと見られる。

画像 札幌~青森の夜行にそれほど需要があるのなら、客車・機関車ともども新車を投入して運転を続ければ良いのに、と思われるかも知れない。が、いくら乗車率が安定していると言っても、新車を投入して採算が取れるのと、国鉄からのお下がり車両を騙し騙し走らせて採算が取れるのとではまったく意味が違う。JR北海道にとっては、新車を投入して減価償却費を計上しても採算が取れるほどの乗車率ではないと判断したからこその、廃止の判断だったのだろう。

 さらに言えば、現行のはまなすでさえ、車輛の維持費に加えて深夜運行に伴うレールメンテナンスの制限や深夜発着に合わせた駅の運用、運転士や車掌の人ぐりや寝台のリネン交換等々、さらに「急行」であるため運賃収入が低いことなど、トータルのコストで見ると、どんなに客が乗っても赤字だったのではないだろうか。前にも書いたことがあるが、夜行寝台列車はたとえ全便満席でも鉄道会社にとっては収益性が悪く、「お荷物」なのだ。ところが「はまなす」の場合、中途半端に乗車率が高いために「利用の低下」という方便が使えず、やめたくてもやめられない。ズルズルと28年間も運転が続けられた末、「新幹線開業」という大義ができたため、ようやく廃止できるとJR側は胸をなでおろした、というのが真相ではないかと私は思う。


【Ocean Radio@2016】





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