角松敏生のコンサートに行って来た(札幌市民ホール/2019年5月24日)

画像 角松敏生のコンサートに行って来た。札幌での角松ライブは去年9月30日の「カラオケツアー」(ZEPP札幌)以来8か月ぶり。去年のバンドツアーは総勢17名の大所帯だったため採算見通しの都合上(たぶん)札幌開催がなかったので、札幌でフルバンドのライブが聴けるのは2017年6月9日の「Sea Is A Lady 2017」(札幌市民ホール)以来2年ぶりとなる。よく来てくれました!と、まず思う。

 タイトル上は4月3日に発売された新作「東京少年少女」をひっさげての新作披露ライブツアーということなのだが、新曲が6曲しかないミニアルバムのため、演目の中心は旧作になると言われていた。それでも、ブラスセクション5人を含む11人(本人含まず)の豪華バンドでどんなアレンジと演奏を聴かせてくれるか。期待は高まる。

 いつものように定刻よりやや遅れて18時35分の開演。M1~3とダンスチューンが並び、オープニング挨拶、メンバー紹介から続けて「Sea Is A Lady 2017」のアレンジにブラスを加えてロングバージョン化したM4、さらにMCをはさんでM5。M3を除くと周年ライブを含め比較的演奏機会のある選曲なので、意外性はなし。それでも、5人のブラスセクションを加えた演奏の迫力は圧巻で、早くも会場の熱気は上がる。ただ、中央やや下手寄り(左より)の着座位置だったことと、会場の音響特性のせいか、ブラスを含めた音の粒が鮮明に聞き取れなかったのは、なんとも残念。

画像 M6、M7とバラードが続き、M8からは新作「東京少年少女」から5曲連続。このコーナーは、各地の地元ダンスチームや劇団とコラボし、楽曲を自由に解釈してステージ上でパフォーマンスをしてもらうという、今までに無い試みだ。札幌では、劇団フルーツバスケットから高校生8人(男女4人ずつ)と男性1人が出演。曲に合わせて台詞のない演技とダンスを披露した。「高校生たちのラブストーリー」と事前に角松がMCで語っていたが、演劇のストーリーはまったくわからなかった。と言うよりも、角松とバンドの歌と演奏に圧倒され、劇団のパフォーマンスにはほとんど目が行かなかった、というのが正直なところ。楽曲だけで十分にステージ演奏として成立するのにもったいない、と思うのだが、これが角松敏生がいま「やりたいこと」なのだろう。

 新作コーナーで5曲連続で演奏し、劇団メンバーを1人1人振付師まで紹介。そして「ここで休むと死んでしまう」と一言あって、終盤のド派手チューンの連続へ。M14はライブで聞くのはおそらく初めて。曲の象徴と言えるテクニカルなブラスリフは、5人のブラス軍団の真骨頂。今回のバンドの特徴を生かした素晴らしい選曲だ。M15は、おそらく、「Gentle Sex」のツアー以来20年ぶりの演奏と思われる。青木智仁のベースを正確に再現してほしかった、と一言だけ感想を差し挟んでおこう。続いて定番のM16。もう一声、 いや、もう二声! と言いたいところだが、本編はここでおしまい。

 約5分のインターバルでアンコール。劇団メンバーもステージに再登場し、自由な即興ダンスパフォーマンスを加えてのM17。エンドのアップテンポ・コーダを省略した短縮バージョンだった。アンコールの2曲目は、紙飛行機が舞い飛ぶ定番曲のM18。去年のサルサアレンジから原曲アレンジに戻った。サルサアレンジが再演されることがあるのだろうか、と、ふと思う。本編に続くアンコールパートは3~4曲から2曲に「尺短」されるのが最近の彼のホールコンサートの傾向だが、今回も2曲でおしまい。

 一度ステージからハケた後、ブラスセクションを除くメンバー全員が再登場し、M19。終演アナウンスが流れ、客電が灯る。短いと思ったが、時計を見たら21時25分。「3時間の壁」は超えなかったとは言え、2時間50分の公演は堂々たる長丁場だ。そのわりに曲数が少なく感じたのは、MCが長かったからだろう。

 トシとったな・・・

 というのが偽らざる感想。こう感じたことは前にもあったし、ライブに足を運ぶたびにそう感じるのだが、今回はそれがギアを一段上げた感じに見えた。声が、特に高域が、出ていなかった。ロングトーンの伸びが、悪くなった。攻めのギターソロで、アグレッシブさが消えた。歌詞を間違えた歌もあった。M7、デュエット相手の吉沢梨絵を声量の点では圧倒していたが、明らかに辛そうだった。高域もなんのその、余裕しゃくしゃくで涼しげに歌っていた、かつてとは違う。

画像 考えてみたら、それは当然なことなのだ。アーティストとて不老不死なわけがない。体力の衰え、声の衰えは避けようがない。64歳の山下達郎さんは今も3時間半のステージをこなし、高域もなんのそのというシャウトを聞かせてくれるが、それは「持続可能」なスタイルを早い時期に確立し、構成も演目も30数年ほぼ変えずにやり続けているから。毎回手を替え品を替え、やれ組曲だ、やれインストだ、やれビッグバンドだ、と新機軸を提示して来る角松敏生とは、そこが根本的に異なる。毎年変わるツアーの構成、演目に追従して行くのがそろそろ厳しくなってきている、そういうことなのだろう。そして「生(き)のまま」を信条とする角松は、それを隠そうとしないのだ。

 思い出す発言がある。私が角松敏生のコンサートに初めて出かけた、1990年3月14日の札幌厚生年金会館、彼はこんなことを言った。「コンサートは、ボクの今、ありのままを見てもらう場です。きれいな歌を聴きたい人はCDを聞けばいい」。これを受けて、会場は大拍手。「ありのまま、生のまま」、その信条だけは今も頑なに守っている、そういうことだ。なるほど、人はこうしてトシを取って行くんだ、それを目の当たりにすると、同じような加齢が自分自身にも確実に進行していることを認識せざるを得ない気分にさせられる。

 あと5年・・・
 新機軸と言えば、最後の演目の一つ手前で、重大な決意表明があった。「新しいことへのチャレンジは、あと5年でやめる」のだという。「いま構想中のオリジナルアルバムが、最後のオリジナルアルバムになるだろう」とも。「新しいことを提示しても、お客さんが年齢的にそれに追従して行く力を失って行く。そうなったら、ただの自己満足になってしまう。だから、あと5年を全力でやる。区切りを設けることは大事なことだ」。「5年経ったら、後はファンの皆さんと昔を懐かしんで、こじんまりと、やっていきます」。意味深な言葉だ。「まだまだ現役を続ける、60歳までの目標として『角松敏生』と聞いて誰でもわかるような仕事をする、足跡を残す」と語っていた頃(2011年6月、横浜アリーナ)とは明らかに別の、心境の変化だ。今から5年と言えば、角松敏生は63歳。「60歳までの目標」などと語っていた頃から3年の「定年延長」と、とらえることもできる。

 学生なら「卒業」、会社員なら「定年」、自営業者なら「引退」「廃業」。自分の生業に区切りを付けなくてはならない局面は、誰にだってある。卒業や定年のようにあらかじめ決められていることもあれば、転職や引退のように自分で決めなければならない区切りもある。そして、その区切りがあるからこそ人は、そこに向かって計画を立て、力を出し、モチベーションを上げて行くことができる、そういうものだろう。「あと5年」、そう決めたのは、その5年間で全力を出し尽くす、やれることを全てやる、そういう決意表明と受け止めた。その5年が経過したら、どうなるのか。「作品は一切出さない」なのか、「旧作のリメイクは出す」なのか。あるいは、「旧作の延長上と呼べる新作は出す」なのか。それとも「5年頑張ったら意外に良い結果が出たので、もうちょい新機軸をやってみます」なのか。願わくば後者であってほしいが、それは本人にもわからない、神のみぞ知る領域だろう。

 いろいろ書いたが、30数年のファンを自認する私にとって、角松敏生のライブ通いは今や、自分の立ち位置を見つめ直し、道標とするための重要な儀式だ。万難を排して出かけるライブに、不満なぞあろうはずがない。頑張れカドマツ、キミの音楽、そしてキミの生き様を、心から応援している。

 来月末は中野サンプラザへ。彼の音楽を「生」で楽しめる残り時間は、そう長くはないのかも知れない。

<SET LIST>
角松敏生Performance「東京少年少女」2019.5.24 札幌市民ホール
18:35 開演
1. Lost My Heart In The Dark
3. All of You
MC(メンバー紹介)
4. Ryoko
MC
5. Secret lover
MC
6. 夜の蝉
MC
7. Never Gonna Miss You
MC
8. To Be or Not To Be <東京少年少女, 2019>
9. まだ遅くないよね  <東京少年少女, 2019>
10. 大人の定義  <東京少年少女, 2019>
11. 恋ワズライ  <東京少年少女, 2019>
12. 東京少年少女  <東京少年少女, 2019>
13. Tokyo Tower
14. Space Scraper
15. よならは口癖 
16. Girl In The Box <1983>
EC
17. WAになって踊ろう <1997>
18. Take You To The Sky High
EC2
19. See You Again

終演 21:25

*角松敏生名義の発表作品を優先
*アルバム名記載ナシはシングル発表曲


角松敏生/Vocal、Guitar、Percussion
鈴木英俊/Guitar
森俊之/Keyboard
山内薫/Bass
山本真央樹/Drums
吉沢梨絵/Background Vocal
吉川恭子/Background Vocal
金津理仁/Trumpet
三上貴大/Trumpet
三原万里子/Trombone
高尾あゆ/Sax
本田雅人/Sax


【Ocean Radio@2019】




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