ブルーインパルスの飛行は1回いくら?

 先週金曜日に東京都心上空で行われたブルーインパルスの展示飛行について、「こんなことにいくら予算をかけたんだ」「医療関係者に手当を配るのが先だろう」という批判があったのだそうだ。スポーツ紙(電子版)が報じているが、河野太郎防衛大臣がブログで直接明かしたことがネタ元らしい。

 ブルーインパルスに限らず、飛行機やパイロットは性能や技量維持のために年に決まった回数や時間を飛ばなくてはならない。したがって、訓練として誰もいない海の上を飛ぶか、東京の上を飛んで見せるかの違いだけで、その費用について論難することにはほとんど意味がないと私は思う。

 けれども、河野大臣が言う「360万円」というのも安く見せるためのある種のミスリードだろう。燃料代とスモーク代、機体の回送費などの純粋な直接費で360万円というのは数字としては正しいだろうが、飛行隊の年間維持費を1回あたりの飛行で割った数字を出さなければ、「あの飛行はいくら?」の問いに正しく答えたことにはならないのではないか。タクシー会社やトラック輸送会社に「料金いくら?」と質問して、燃料代を答えるバカはいないだろう。当然、燃料代だけでなく消耗品費やパイロット、整備員、管制隊員、基地支援要員らの人件費、さらに機体購入費の年割まで、あらとあらゆる経費が合算されるから、途方もない金額になることだろう。1回あたりウン千万か、ウン億円だろうか。
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 ちなみに、ブルーインパルス飛行隊(宮城県松島基地所在の第11飛行隊)は、展示飛行による自衛隊広報とともに、飛行技術の練成開発という、2つの役割を併せ持つ。戦闘機はいざ実戦となれば、敵機を追い詰め、追われた場合はあらゆる手を尽くして逃げ、被撃墜を回避しなくてはならない。映画「トップガン」さながらに急旋回、急降下、宙返りなどを繰り返すことは、戦闘機搭乗員であれば当然想定される局面だ。アクロバット飛行を通じて操縦の限界値を上げておくことは、パイロットとしての生存性の向上、能力の向上につながる。が、そういう訓練を高価な実務戦闘機(F-15など)で日常的に行うには限界もあるので、練習機(T4、ブルーインパルスはT4の特別仕様機)も併用されるし、訓練専門の飛行隊も必要なのだ。ブルーインパルスのパイロットは全国の戦闘機操縦士から選抜され、原則3年任期でアクロバットの訓練を集中的に行う。任期満了後は各地の戦闘機隊に戻り、ブルーで培った飛行技術を実戦に生かすためのリーダー的役割を担う。ブルーインパルスと聞くと、華麗な展示飛行で見物客を楽しませたり感動させたりという、演奏家やプロアスリートのようなイメージを抱く人が多いのかも知れないが、あのアクロバットはある意味で、戦闘機乗りとして必須の訓練の副産物を、広報に二次利用しているのだ。

 そういう役割や費用を含めて、ブルーインパルス隊が国民にとって必要なのか、そうでないのか。ほかに回すべき費用なのか。議論するのなら出発点はそこだろう。
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MAMOR(マモル) 2020 年 5 月号 [雑誌] (デジタル雑誌) - MAMOR編集部, MAMOR編集部
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