クルーズコントロールはなぜ広がらないのか?

画像 先月発表された新型カローラにクルーズコントロールが装備されていないのを知って、正直がっかりした。少し前までは、高級車専用の「ぜいたく装備」だったクルコンも、トヨタ・ラクティスの上級グレードに装備されたり、日産セレナが全グレード標準装備にするなど、200万円前後の価格帯での設定車種が相次ぎ、かつてのABSのように標準化が進むだろうと思っていたからだ。

 自動車の専門家も書いているが、高速道路を長距離走行するような場合、クルーズコントロールほど簡単・確実に燃費を改善できる手段は無い。設定速度で定速走行できるので、無駄な加減速がなくなるからだ。高速道路では95km/hほどで走り続けるのが最も経済的らしいが、ペダルのアクセル操作だけでこの速度を維持するのは非常にストレスだし、素人にはほとんど不可能である。エンジン技術で燃費を1km/L改善するのはものすごく大変だが、クルコンさえ装備すれば、実効燃費で1~2km/Lはたちまち改善できるという。しかも、電子制御アクセル(ドライブバイワイヤ)の普及で、メーカーにとってもほんのわずかの投資でクルコン搭載が可能なのだそうだ。

画像 にもかかわらず、カローラのような量販車にクルコン搭載が見送られるのは、結局日本人にとっては、クルコンはあまり必要とされない、使われたがらない装備なんだろうな、と思うしかない。いくら専門家が「簡単に燃費を改善できる」と言っても、使う側がそれを便利と感じなければ、広がらないのも無理がない。北海道に住んでいた頃、「クルコンがあると便利、付けてほしい、みたいな声をあんまりお客さんから聞かないんですよねぇ」という話を、自動車ディーラーから聞いたことがある。そのディーラー氏自身が、「そんなに便利ですか、クルコン?」とも言っていた。長距離運転の機会が多い北海道ですら、ユーザーのクルコンへの意識はそんなものなのだ。

 私も、北海道内のあちこちを仕事でずいぶん運転して回った。仕事用のレンタカーや社有車にクルコンが付いていれば、私は必ず使っていた。高速道路はもちろん一般道でも、信号の無い道路が延々と続く区間では、やはりクルコンは便利なのだ。70~80km/hにセットしておけば、よほどの急カーブではない限り曲線で減速する必要がないし、前のクルマと車間距離が詰まって来た場合はスイッチ操作で設定速度を下げてやればいい。もちろん、ブレーキを踏めばクルコンは解除されるし、右足は常にスタンバイしているのだが、それは非常手段。40~100km/hの範囲での速度設定の調整だけで、何十分でも走り続けることができた。右足でアクセルを踏まなくていいだけで、体感的な疲労度は半分程度。目的地に着いてからの仕事のやる気まで違ってきたものだ。

 けれども、こういうクルコンの効用を実感したことがない、あるいは信用しない人は多いのだろうな、というのもわかる。同乗している仕事仲間からも、「こんな道(曲がりくねった一般道)を、よくクルコンで走れるね」と言われたことがある。アクセルを踏まないのに自動でクルマが進むことに対する本能的な怖さというのが、まずはあるのだろう。また、クルコン=定速維持装置というイメージからすれば、設定した速度で延々と走れるような機会はめったにないために「クルコン=使えない」という評価を下されるのも、致し方ない。

 しかし、クルコン推奨派の私からすれば、クルコン=定速維持装置という考え方が、そもそも間違っているのだ。クルコンとはクルーズ(巡航)コントロール(制御)装置であり、アクセルペダル操作による巡航制御に代わって、スイッチ操作と機械の補助力で巡航を制御するための装置だ。道路状況が許せば、一定速度で延々と走る局面もあり得るが、道路や交通状況に合わせてスイッチ操作で速度制御することも、クルコンの使用には含まれる。もちろん、ハンドル操作や車間距離を含めた周囲の状況監視は通常の運転とまったく同じ。ペダル操作ではなく指先のスイッチ操作でクルマを動かすイメージである。それでも、ペダルを踏み続けるよりずっと疲労が少ないし、スロットル開度を自動制御する分、燃費も良くなるというのが、クルコン装備のメリットである。ただ、こういうクルコンによる巡航制御運転のメリットを実感するにはある程度の慣れとコツが必要なのも事実。そういう域に達していないドライバーが「クルコン=使えない=必要ない」と判断し、メーカーはメーカーで「ニーズが無い=搭載しない」という流れになるのは、とても残念だと思う。

 カローラのように、それなりの長距離運転が想定される車種は例外なく、クルーズコントロールが全グレードで標準装備されるべきだと、私は思う。そして、メーカーや高速道路管理会社は、クルコンのメリットPRに努める。教習車にも標準装備して、自動車学校でもクルコンの使い方を教えればいいじゃないか、とさえ思う。低コストで、確実な燃費の向上が見込めるのがクルコンだ。その使い方も含めて、普及と啓蒙に努めることも立派なエコ活動ではないかと、思うのだが。




Ocean Radio@2012








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